「サスペンスなんだけど、あたたかい雰囲気に包まれた家族の物語。 悲し...」重力ピエロ ますんさんの映画レビュー(感想・評価)
サスペンスなんだけど、あたたかい雰囲気に包まれた家族の物語。 悲し...
サスペンスなんだけど、あたたかい雰囲気に包まれた家族の物語。
悲しい内容なんだけど、所々ほっこりできる部分があって。事件が進んでくにつれてどんどん2人の兄弟が落ちていくんだけど、絶望的ではないっていうか、なんか救いがあるように思えて。それは多分、この2人が善人だからっていうのと、2人をちゃんと愛してくれてる人がいるから、お父さんと何よりお互いがいるから、だと思う。
この家族は本当に最強の家族だと思う。特にお父さんは強くて優しくて、素晴らしいお父さん。小日向さん演じるお父さんがすっごく良い。そのお父さんの偉大さもあって、家族に凄く良い絆がある。
その対比として渡部篤郎がいるんだけど、コイツが救いようのないクズで。the悪。渡部篤郎と岡田将生の顔がこれまた似てるんだな~。このキャスティングは奇跡。血の繋がりってやっぱり自分の力で変えられるものじゃないから、どうしても一生付き纏うもので。いい意味でも悪い意味でも強力な力を持ってるなあと思った。
劇中で特に良いと思ったシーンは、春が家燃やして渡部篤郎を殺そうとするシーン。1人の時はためらっていた春が、泉水が来てその顔を見た瞬間安心したように思いっきりボコボコにする。春の本当は臆病っていう性格や、2人の関係性が感じられて凄く良かった。1番シリアスなシーンでもあるのにほっこりした。
翌朝、実家で2人が疲れきって寝てるシーンも凄く好き。もしかして春も死んじゃったの……!?と思わせてからの安心する一コマ。この映画は絶対にハッピーエンドで終わってほしいと願っていたから、この事件の結末はこの先どうなるか分からないけど、2人が最後良い顔をしていたのでああ良かったと思った。
結果的にやってしまったことは悪い事じゃないとは決して言えないけど、それは自分で考え抜いて出したやるべき事ことであって。渡部篤郎のように自分の私利私欲のためじゃなくて色々な人の事を考えてやった事で。善人が悪人をやっつけて、それでも殺人は殺人で。悲しい殺人。何か別の方法はあったのか、どうすれば良かったのかなと思うけど、それが春と泉水が考え抜いて出した結論だから、私にはそれを責められない。
それでもあのピエロのように楽しく生きようとすれば、結末はどうであろうと落ちないのかもしれない。あのエピソードはあの家族のあたたかさを象徴する、救われるエピソードだなと思う。
劇中ではガンジーの名言とか、印象的な言葉がいくつも出てくるんだけど、お父さんがそれ無理でしょっていうようなことを明るく飄々と言うのがすっごく好き。サラッと言うんだけど力強くて、信じられる言葉なんだよね。「楽しそうに生きていれば地球の重力なんて消してしまえるんだよ」とか。本当にそうなんだと思えた。
そういえば夏子さんもナイスキャラだった。彼女もちょっとズレてるけど愛のある人物で、ほっこりさせてくれた。
春と泉水の名前どおり、この映画の雰囲気は春のようにあたたかかった。それはストーリーもそうだし、映像の映し方や音楽も。全てがマッチしていて良かった。リピートしたくなる映画な予感。