劇場公開日 2008年9月27日

イキガミ : 映画評論・批評

2008年9月24日更新

2008年9月27日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

ひそかにはびこるファシズムの脅威と、生きる価値を問い直す力作

政府発行の死亡予告証、通称《逝紙》(イキガミ)を受け取った若者が、残された24時間をどう生きるかを描くこの映画は、イキガミを配達する国家公務員の藤本(松田翔太)を狂言回しに、3エピソードで構成されている。路上ミュージシャン・田辺(金井勇太)の話は、音楽番組に生出演するシーンがドラマチック。ひきこもりの滝沢(佐野和真)の話は、息子の死を選挙に利用する冷酷な母親に、優しげな風吹ジュンを起用したのがおもしろい。チンピラの飯塚(山田孝之)と盲目の妹(成海璃子)の話はセンチメンタルだが、傍観者だった藤本が積極的にかかわっていくので、今後の波乱を予感させる。

舞台は近未来だが、太平洋戦争下の召集令状《赤紙》や治安維持法を連想した。格差社会にあえぐ若者の閉塞感と、60年前に問答無用で徴兵された若者の苦悩は、どこかでつながっているのだろう。戦争の記憶が風化し、政治に無関心な若者が増えたといわれるなかで、ひそかにはびこるファシズムの脅威と、生きる価値を問い直す力作になっている。

瀧本智行監督の前作「犯人に告ぐ」を見たとき、ゆるゆるのいやし系映画とは違うシャープな切れ味を感じた。本作の切れ味はさらに進化し、人間の生死を見つめるリアルな演出が冴えている。コミックの映画化作品をちょっと冷たく見ていたことを恥じるほどインパクトがあった。慌てて読んだ原作には興味深いエピソードがまだいくつかある。続編を期待したい。

(垣井道弘)

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