櫻の園 さくらのその : インタビュー
昨年、TVドラマ「ライフ」が話題となった福田沙紀がついに映画初主演。邦画史上に名を残す名作を再び映画化した主演作「櫻の園」が公開される。実写版「ヤッターマン」など今後も多数の注目作が控える女優・福田沙紀にインタビューを行った。(取材・文:編集部)
福田沙紀 インタビュー
「悩むことっていいなと思ってほしい」
「櫻の園」は、人気漫画家・吉田秋生のコミックが原作で、90年に中原俊監督が映画化。同年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、高い評価を得た。そして再び中原監督自身がメガホンを取り、18年ぶりに蘇らせたのが本作。チェーホフの名戯曲「桜の園」の上演を目指す女子高生たちの成長を描くというベースは同じだが、ストーリーは全くの別物で、まさに現代版「櫻の園」。
福田沙紀は、前作が公開された90年生まれ。この18年間をリアルタイムで成長してきたのだから、まさに本作の主演にはピッタリ。しかし、初主演作といえど「主演ということを特に意識せず、ただお芝居に集中しました」と落ち着いた様子で話す彼女は、18歳という年齢よりも大人びても見える。
「あまりお仕事で緊張するっていうことはありません。緊張で自分のパワーが最大限出せないというのは嫌ですし、これが私の仕事だと思っています」
なんともしっかりした受け答えが印象的な福田は、演技をする時「いつの間にか役になっていることが多い」と言う。
「切り替えがはっきりしているわけではなくて、芝居をしているうちにいつの間にか……という感じです。無意識のうちに“役がいる”ということが多いです」。本作の撮影と「ヤッターマン」の撮影がほぼ同時進行だったが、「全然苦にはならず平気でした」
演じる主人公・結城桃について、福田は「自分に近いところがある」と話す。桃はバイオリニストとしての夢をあきらめ、名門女子高・桜花学園に編入してきた高校3年生。校則だらけで伝統を重んじる学校に違和感を抱いていたところ、廃部となった演劇部の部室で「桜の園」の台本を発見。自分たちの手で「桜の園」を上演しようという新しい夢を見出す。
「桃は“ひとりでもやっていける”という考えが根本にありそう。小さい頃からシビアなバイオリンの世界にいて、きっと両親もずっとそばにいるわけでもなく、いろんなものを見て、いろんなことを自分でやってきた。そういうところは意識して演じましたし、自分に近いものがあると思いました」
往年の名作の再映画化とういことで、当時を知る映画ファンからは注目必至の本作だが、過去作を知らない「同世代の人たちにも見てほしい」と言う福田。そこには、「悩むことっていいなと思ってほしい」という彼女の思いが込められいる。
「人は子供も大人も、必ず悩みを持ってる。悩みというのは早く解決したいと思うけれど、解決しようといろいろ考えるうちに成長していく。この映画で、そのことがすごくよく見えると思う。桃の最初と最後の顔つきが全然違うことにも、そのことが表れていると思います。だから、悩むことはいいことなんだと感じてもらえたら、一番うれしい。大人の人には、自分たちがこの頃どんな悩みを持っていたか、悩んだことで成長するんだということを、あらためて感じてもらえればと思います」
女優として着実にステップアップしている彼女は、「いい意味でみなさんの期待を裏切っていきたい。偏らず、一癖あるような役をやっていければ」と抱負を抱く。「櫻の園」「ヤッターマン」に続き、初の時代劇となる映画「火天の城」(09年公開)の撮影にも入っていて、「私が演じている岡部凛という18歳の女の子は、とてもはっきりしていて現代的な子。でも、一方ですごく純粋で、あどけなさや子供っぽさも感じられるので、そうした表情を大切に演じてます」と語ってくれた。
これからも話題作が続々だが、まずは初主演作「櫻の園」で女優・福田沙紀に注目だ。