「シリーズ完結編」ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 tabletapさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズ完結編
幼少期に『賢者の石』を読んでから四半世紀たったと思えば感慨深い
ハリーポッターシリーズも本作前後編で完結
前後編なので前編だけで評価はできない。
本作前後編は作品世界を一巡する内容だ。
いかにこのファンタジー世界を楽しんだか、それが評価の分かれ目になるだろう。
このシリーズは映画単体のストーリーにまとまりがなく、そして「半端じゃなく長い」ので見方を間違えると全く面白くないと思う。
個人的には映画をシーンに分割して考え、全体での整合性は考えず、「こういう演出をしたい」という意図を読み取りながら、「ストーリー上どういう魔法の扱い方をしているか」という点に注目して視聴していたが、これが作品にうまく噛み合った
この世界に没頭した後の視聴は最高だった。
前編は初っぱなからとにかく陰鬱な展開、暗すぎる映像の印象
闇の帝王が復活して世界に混乱が広がっているにしてもやや演出過剰で
画面が真っ暗すぎて何やっているかわかりにくい、笑うレベルだが、
だからこそ明るい場面では希望が演出されているという側面もある
前編は後編のための準備期間として描写されている。
セーフハウスへの避難から、反撃のための潜入というプロットは『逃亡者』などで安定の展開、従来のシリーズとは異なる展開だが、完結編として適切だろう。
これだけの超大作だが各シーンは必要不可欠で無駄なところはない。
むしろ省きすぎの印象。
各シーン感想
・ハーマイオニーの両親との哀しい別れ
ここは説明不足だが、記憶が残っていると両親に危害が及ぶからやむを得ない処置ということ
思い出が頭からだけ消えるのではなく、写真からどんどん消えていく様子は良い演出
・空になったダーズリー家
ここの和解シーンまるまるカットはもったいないとかそういうレベルの話ではなく
ハリー、視聴者にとっての「あの」ダーズリー家の印象が変わる超重要シーンで
その後の「階段下の物置」、そして「仲間の集結」に響いてくる。
これはいただけない。
・魔法+カーアクション、相棒との別れ
ここのカーアクションは短いが、魔法との融合で面白い
ハリーを守るため、命を落とすヘドウィグはあまりに短いカットだが衝撃が大きい
・ダンブルドアの遺産
こういう「一見役に立たなさそうなアイテム」が渡される展開は大好きだ。
・飲食店の戦闘シーン
非魔法使いがいる空間での激しい戦闘が、作品世界の変化を感じる。
ハリーたちの戦闘能力の進歩もわかり、今後は逃げるだけが選択肢ではなく
戦闘をすることもある。とここで表現されている。
・魔法省への潜入
作中の数少ない笑いがある部分。不死鳥の騎士団でも素晴らしかった魔法省が再度描かれるだけでも加点
・分霊箱の魔力で別れるロン、そして親友を救うヒーローへ
ここは『ロードオブザリング』の力の指環っぽさを感じた。だがこの描写があったからこそ後の展開が活きてくる。
三人の友情が強くなるイベントは最終決戦を控えて絶対に必要だった。
・死の秘宝
てっきり死の秘宝は分霊箱のことを言っているのかと思ったら、このタイミングで出てくる新たな伝説。
透明マントそんなにレアリティの高いアイテムだったのか、と驚く
物語的に落ち着いたタイミングでの襲撃
ここでの襲撃は予想可能だが、その後の人さらいとの遭遇が一難去ってまた一難、途切れない緊張になっているのが良い
・ピーター・ペティグリューのラスト登場シーン
ここのシーンで原作ではピーター・ペティグリューは死亡しているらしいが(それも面白い展開で)
演出不足で残念、この後登場しなくなったのが視聴時最後まで引っかかった。親の仇なのに残念だ。
・ドビーの活躍
秘密の部屋ではヘイトを集めた屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)が大活躍
だが「便利すぎる登場人物は即退場」という創作物の基本的原則で即退場したのは予想通りだった
次回作がわくわくするようなものではないが、前後編セットを分割しているものなので当然
後編もそうだが、これまでのシリーズを精算する内容
『フリンジ』最終話もそうだったがこういった描写は大好きだ。
これだけ高密度、超ボリュームにもかかわらず、まだ描写不足の物足りなさがあるが
後編と併せて個人的に大満足の傑作