「歴史なんて、色恋沙汰次第…。」ブーリン家の姉妹 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史なんて、色恋沙汰次第…。
“ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン夢の共演!”イイですね~、今が旬の美女2人が共演。吾輩的にはとっても嬉しい!でも姉妹役ですか~、全然似てないよね(^^;!?
まあ、見事にドロドロとした世界が描かれていますな。知性も誇りもない、『ガキを作ったモンの勝ち!』と言わんばかりの策略、謀略、裏切り、愛憎…。一見華やかに、そして高貴に見える中世イングランドの王宮も、ひとたび裏へ回ってみると、そこはまるで“魑魅魍魎の巣窟”の様相を呈した、“トンでも世界”なワケです。『勝つためには手段を選ばず』『驕れる者は久しからず』そして、その結果次々と断頭台の露と消えて行く敗者たち…。そう、この頃は正に『死を以って』罪をつぐなわされたのです。いやあ、本当に恐ろしい。もし、今の時代にこの時代の治世を当てはめたら、どうでしょう。殆どの人間が“斬首刑”に処せられちゃうんじゃないでしょうか?それ考えると、物凄く恐ろしいですよ、この話。そう『そんなことくらいで、処刑って…』てな感じですから。でも、当時は大真面目の超真剣だったわけですよね、国王の“たかが”色恋沙汰の一つが、国を、いや世界を、歴史を変えちゃうんですから…。いや、ホントに恐い話ですよ。
本作で、アンが出産する娘こそ、後の“エリザベス1世”その人です。ですからこの映画のラストが、あのケイト・ブランシェットが主演した「エリザベス」の冒頭シーンへとつながるのです。その辺も踏まえてご覧になると、この映画が描く、歴史の背景が見えてきて、面白みが倍増すると思われます。時間がある方は、是非「エリザベス」もご覧になって!
冒頭で“夢の共演”と書きましたが、本作でのナタリーとスカーレットの美しさは、中世のコスチュームとも相まって際立ち、正に輝かんばかりです。特に映画の前半部分の2人は、どちらも甲乙付けがたく、“圧倒的な美”でスクリーンから我々を魅了してくれます。吾輩、正直骨抜きにされてしまいました。ところが後半は一転、国王の寵愛を我が身にとどめん為に、狂わんばかりに振舞うアンを、ナタリーは鬼気迫る表情で演じています、そしてそれを受けるスカーレットも、姉を救わんと奔走する、健気ではあるが芯の通った妹・メアリーを熱演しています。2人とも美しさだけではなく、非常に質の高い演技の競演を見せてくれます。いやあ、スンバらしいです!
で、もおどこまで行ってもこの映画では、“男”はダメです!誰がどう見たって悪いのはヘンリー8世ですし、姉妹の父・ブーリン卿と叔父のノーフォーク公爵には、吾輩観ていて殺意さえ抱いてしまいました。でも当時としては、これが当たり前のことだったんですね。そう考えると歴史って、儚いもんだなあって思えてしまいます。映画の冒頭で、姉妹の幼い頃が描かれているのですが、仲良く遊ぶそのシーンが、後のシーンとの対比であまりにも残酷に思えてなりませんでした。
ところで、映画ではメアリーが妹となっていますが、歴史上、彼女の資料は殆んど残っておらず、実際にはアンの方が妹(アンですら、正確な生年は不詳なんだそうです)だったという説もあるそうです。ですから、この映画も“100%史実”ということではございません。しかし、『なぜイングランドが、ローマ・カトリック教会と訣別し、独自の道を歩み出した(イギリス国教会の設立)のか?』といった歴史の裏側的な物語を垣間見ることが出来ますので、歴史好きな方には堪らない1本だと思います。
このほか、アンとメアリーの男の兄弟、ジョージ役として「ラスベガスをぶっつぶせ」でプチ・ブレーク(?)を果たした、ジム・スタージェス 君が出演しています(可哀想な役なんだ、コレが…)。でも3人並ぶと、益々兄弟姉妹には見えね~!!“ユダヤ人とニューヨーカーとロンドンっ子の兄弟姉妹に、オーストラリアンな国王!”エエんかな~?こんなキャスティング…(^^;。