クライマーズ・ハイのレビュー・感想・評価
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戦場のような熱気
いやぁ、予想以上に緊迫したドラマでした。
途中インサートされる現在のシーン(登山)で、やっと息をつくという(あれも大事なストーリーなんだが…)そんな緊迫感が続く。
145分釘づけでした。
事故現場でなく、新聞編集室という空間で濃密に繰り広げられる意地の張り合い、心の削りあい。
ピラミッド型ヒエラルキーの中で繰り広げられる阿鼻叫喚のドラマの見応えにしびれた。
組織と付かず離れずの遊軍記者である堤真一。彼が日航機墜落事故の全権キャップとなったことがドラマを面白くしている。
次長とも記者とも一定の距離を持つキャップが、ジャーナリストとしての自分の原点にこだわり、こだわるが故に軋轢を産む。
そんな男の過去がまた彼を追いつめていく。
「大久保連赤」(大久保清事件、連合赤軍事件)の栄光にあぐらをかく上層部。地方紙ゆえの悲哀に苦しめられる前線記者。どちらからも恨まれ疎まれる全権。エゴとヘドロのような販売部。
それらが嵐のように襲ってくる1週間のドラマ。
実に熱い熱い145分でした。
思ったよりも
予告編はとてもサスペンスタッチになっていましたが、
重厚なドラマとなっていました。
上映時間が長いですが、ぐっとひきつけられます。
新聞社の内情を分かっていると楽しい。
尾野真千子が紅一点でがんばっていました。
あの夏の記憶が、甦る…。
ベストセラー作家・横山秀夫原作小説の映画化。1985年夏に起きた、“日航機墜落事故”。この映画は、その事故に正面からぶつかっていった、地元地方新聞社の“戦い”を描いています。
これは原作者である横山秀夫氏が、事故当時実際に地元群馬の新聞記者として、取材に携わった記憶を許に書かれた“フィクション(事故は現実ですが、北関東新聞社は、実在しません)”です。そしてその原作を受けて、原田 眞人 監督が徹底的にリアリティを追求して、撮影しています。ですから新聞社の内情、記者たちの動き、取材体制の様子などが、とてもリアルに描かれていて、非常に重厚で緊迫感のある“絵”に仕上がっています。正に入魂の一作と言えるのではないでしょうか。観ていてそれはスクリーンから、ヒシヒシと伝わってきました。
23年前、当時高校生だった吾輩は、リアルタイムにTVのニュース速報を見ました。そして、次々と入ってくる情報、なかなか特定されない墜落地点など、一晩中TVから流れてくるニュースに釘付けになっていました。そして翌朝、TVの画面に映し出された墜落現場の壮絶な映像に凄まじい衝撃を受けたことを、今でも鮮明に憶えています。その裏で、繰り広げられていた壮絶な人間ドラマ。俳優達の見事な演技によって、それがスクリーンに再現されています。“クライマーズ・ハイ”とは、登山用語で『登山時に興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態』を意味するのだそうです。あの夏、悠木や北関東新聞社の面々は、事故の取材を通して“クライマーズ・ハイ”を体験しました。この映画は、観ている我々にも“クライマーズ・ハイ”を体験させてしまう…そんな迫力と緊迫感が漂っています。
毎度の如く、原作未読の吾輩ですが、ラストのニュージーランドのシーンは必要でしたでしょうか?何か、あそこだけ違和感を感じてしまいまいた。違和感といえば、堤さんの老けメーク!う~ん、60代には見えませんよ。元がまだまだお若いから。でも「魍魎の匣」に続く、監督・主演コンビ。うん、イイ仕事してますね。これは力作です。
本作で最も注目すべきは、堺 雅人さんでしょう。これまでの“柔和でいい人”というイメージとは違った、眼光鋭い新聞記者の役を熱演されています。彼の新しい一面を見る事が出来ます。これからますます、出番が増えるでしょうね。
社会の厳しさ
1988年生まれの僕にとってこの映画の事故は生まれる前のことだったので映画ではじめて知った。
出演陣も僕らの世代ではないからあまり期待しないで試写会に足を運んだが
、映画がはじまるとすぐに物語に引き込まれた。
ちなみに原作は未読である。
報道業界の殺伐とした空気と事件の重大さ、
そのふたつの矛盾や憤りなど様々なことを感じた。
それにしても企業の社長は本当にああいう感じなのだろうか?
すごく就職が怖くなった(笑)
社会に出ることは本当に厳しいのだな、と感じた。
まぁ映画だからかなりの脚色はあるにせよ・・・だ。
上映時間が長いが、それを感じさせない内容だった。
無駄なシーンや謎が残るのが残念・・・
原作を読まないとわからないってことか・・・
惜しむらくは、台詞が聞き取りにくいこと。耳をダンボにしないとよく聞き取れないシーンが多々ありました。
この作品は、一見JAL123便の墜落した事件を追う記者の物語に見えますが、むしろ事故原因に絡むスクープを記事にするため奮闘する地方の新聞社の人間模様を描いた作品でした。
主人公の遊軍記者悠木和雅に言わせると、スクープをモノにすることは、登山の時に感じる「クライマーズ・ハイ」に似ているというのです。
クライマーズ・ハイとは岩登りの際、興奮状態が極限まで達して、恐怖心がなくなる病気。そのまま登りきってしまえばいいが、登っている途中でクライマーズ・ハイが解けると恐怖で1歩も動けなくなるのです。
この症状と同じく悠木ばかりでなく、編集部全体がスクープ目指して興奮状態が極限までヒートアップしていく姿がリアルに描かれていました。
悠木がどうしてクライマーズ・ハイのことを知っていたか。それは悠木が勤務先の新聞社の山を歩こう会に無二の親友・安西と参加していたのです。
その安西から誘われて谷川岳一の倉沢から衝立岩中央稜のロッククライミングに誘われていました。
悠木が谷川岳に向かうべく安西との待ち合わせ場所に向かうとしたとき、日航機の墜落の一報が入り、そのまま居残りに。安西も病に倒れて、衝立岩のロッククライミングは実現されずじまいとなってしまいました。
しかし悠木の心の中で、スクープへの闘志を燃やすとき、安西とともに衝立岩を這い上っている姿がイメージされていました。
地方新聞には、全国紙と比べて圧倒的な取材力の制約があり、40年の社史のなかてで、ずっとスクープを抜かれっぱなしでした。例えば1985年当時携帯でなくまだポケットベル全盛時に、全国紙や通信社は無線を使って現場からリアルタイムに緊急連絡できますが、悠木の新聞社は足を使って電話機を探す記者根性が尊ばれていたのです。
それ故能力ある記者は、全国紙に引き抜かれていくのが通例になっていたのです。しかし今回は地元で起こった大事件。地元紙のメンツにかけて全国紙の連中に一泡吹かせてやりたい。通信社の配信記事を使うなんて地元紙として恥だと事件のディスクとなった悠木は意気込むのでした。
けれども紙面を巡っては、勝手に広告を削ったことで広告局を激怒させ、校了時間を遅らせて、配達時間を期にする販売局が殴り込んできたり、さらには印刷機のトラブルがあったりで、現場に体当たりで取材してきた記者の記事がなかなか活かされず、悠木も怒りを爆発されるのです。
そんな報道を巡る社内の壁が、悠木には谷沢の衝立岩とオーパラップしていたのでしょうか。
ちょっといい話として、悠木が全国紙にない地方紙の使命に気づくところが良かったです。社内のしがらみに思わずトップの記事を中曽根首相の靖国初参拝(事故後4日目に参拝)への差し替えに承諾したとき、遺族が事件を報じた掲載紙を手に入れようと編集局に訪れます。あの遺族はなんでわざわざ葬儀の合間にうちに立ち寄ったのか?うちだからこそ、事件のあらましが詳しく載っていると思ったのに違いない。遺族のためにも俺たちはやれるところまで、全国紙が報じないことを伝えなければいけないのだと思いを新たにし、遺族をじっと見送る姿に感動しました。
新聞社の内情を窺い知り、そこで日夜スクープを追いかける記者がどんな思いで、取材を続けているのか熱く語っている作品でした。
撮影は、前橋の中心街のビルを丸々借り切って、新聞社に仕立て上げそうです。堤真一は泊まるホテルもロケ現場の真ん前だったため、一ヶ月そこへ缶詰になって、すごく集中したし、とても疲れたと試写会で語っていました。
画面でも、クライマーズ・ハイになっていく悠木の姿に成りきって、アグレッシブな演技を見せています。
御巣鷹山現場に向かった社会部のキャップを演じる堺雅人は、実際に山に登り、壁のように立ちはだかる急斜面で取材活動を行うところもこなし、シャツはボロボロ、ヨレヨレになって下山するところを演じていました。普段穏和な役どころが多い彼の顔つきの険しさに注目ください。
あと悠木と個人的な関係が取り沙汰されている新聞社社長白河を演じる山崎努も、業く嫌みったらしいワンマン社長ぶりを、いかにもという感じて好演しています。
ただ惜しむらくは、台詞が聞き取りにくいこと。耳をダンボにしないとよく聞き取れないシーンが多々ありました。音声の収録方法もありますが、出演者の台詞回しが一様に早く、シーンが急展開するとき他の人の台詞とかぶってしまうので、聞き取れなくなってしまうのです。
また、新聞業界の専門用語がまんま飛び交うので、話していることの意味がわからなくてぽかんとしてしまうこともありました。現場のリアル感も大切ですが、映画である以上観客に分かりやすく伝える工夫も必要でしょう。
これは前作『魍魎の匣』でも同様でした。おそらく監督は自分の演出イメージが優先で、観客を置いてけぼりにしても、自分の表現をせっかちに映像化してしまう癖を持っているだろうと思います。
惜しい・・・あともう少し・・・。
日航機墜落からはや23年・・・ようやくこの題材が映画で出来る日がきたようです。遺族の方には辛いシーンもあるかもしれませんが、墜落現場のシーンは非常にリアルに映像化されており、当時の壮絶さや救助の困難さが映画からよく伝わります。しかし、残念なのは脚本と編集です。幹だけでも十分に骨太の映画になれたのに、枝葉のエピソードを盛り込みすぎて、145分は途中、いくらか間延びしたように感じられます。あと20分は無駄な逸話を削れるでしょう。「なんで、ここで現代に飛ぶんだ?」というような、せっかくの余韻を吹き飛ばすような挿入が目立ち残念です。堤真一も40歳と63歳を演じているわけですが、63歳のシーンは老けたのではなく、ただの病人のような暗いメークにすぎず、この役にかけるならば前頭部を剃るくらいの役作りに徹して欲しかった。また、別の方も指摘していますが、音響も下手糞で、前半の高嶋の役のセリフがまったく何を話しているのか聞き取れません。さらに、最後のエンドロールも字が小さすぎて読めない・・・と、なんだか、悪口ばかりになった気がしますが、修整をかければまだまだいい作品になります。東映よ、今からでも遅くはない、頑張れ!!
もう1回みたい!
5/25(月)ヤクルトホール試写会にて。
横山秀夫の作品のファンで、映画作品を見るのは2作品目です(「半落ち」をみました)。横山作品は細かい登場人物の心の動きが大事なのですが、それがよく映画で表現できているなぁと思う。現在と、JAL日航機墜落で全権として担当した場面については、違和感なく入り込めた。
ただちょっと残念だったのがホールのせいなのか、最初の大事な安西と悠木のやりとりのセリフが聞き取りづらかった(一緒にいった友人も言っていた)。また、安西とのやりとりが少なかったのと、悠木の家族の描写が少なかったこと。
最後に泣かせる部分もスケールが大きすぎて、本では泣いたが映画では泣けなかった。
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