ハプニング : 映画評論・批評
2008年7月15日更新
2008年7月26日より日劇3ほかにてロードショー
世界の破滅はいきなりこうやってやってくる
これは世界が破滅する物語である——どこかでそんな宣言がなされたのかもしれない。物語が始まったかと思うと、いきなり人がバタバタと死に始める。何故そうなったのか、おざなりな説明はあるもののもはや問題はそこにはない。とにかくハプニングは起こってしまったのだ。その緊急の現場でわれわれが何をするか、それによってどうなるかだけが描かれていく。誰も全体像が見渡せない。映画を見ているわれわれも登場人物たちと同じく、一体何が起こったかと右往左往するばかりである。もはや原因も因果関係もどうでもよい。世界の破滅はいきなりこうやってやってくる。まるで映画のように……。
しかしこの人間たちの死に様をなんと言ったらいいのか。残酷でもなく悲惨でもなく、ただただあっけなく死ぬ。虫けらのようにと形容するのもロマンティックすぎる。人は死んでから「死体」という物体になるのではなく、元々物体として生きていたのだということを思い知らされる。世界の終わりとはこんなものかと思うしかない。その中で私たちは死ぬ。世界の終わりという壮大さが引き起こすこのあっけなさとバカバカしさが、すべての物事に「物語」を求めてしまう私たちの感情をあっさりと置き去りにするはずだ。その清清しさ! 私たちは闇雲に生き、バカバカしく死ぬのである。これでいいのだ。
(樋口泰人)