トイ・ストーリー3 : インタビュー
ディズニー/ピクサーによる大ヒットシリーズの第3弾「トイ・ストーリー3」が、今週末日本公開を迎える。前作から11年、17歳になり大学進学のため家を出ることになったアンディと、彼の大好きなウッディやバズ・ライトイヤーら個性的なおもちゃたちとの感動的な別れを描き、全米ではシリーズ最高傑作の声とともにピクサー史上最大のヒットとなっている同作について、メガホンをとったリー・アンクリッチ監督(「モンスターズ・インク」)とアート・ディレクターの堤大介氏に話を聞いた。(取材・文:小西未来)
リー・アンクリッチ監督 インタビュー
「人生のリアルさを、おもちゃたちにも体験させたかった」
――人気シリーズも第3弾となるとたいていは凡作となるものですが、見事にジンクスを破りましたね。
「この映画を引き受けたときに、よく出来たシリーズ第3弾を探してみたんだ。映画をかなり観ているつもりだけど、まるっきり思い浮かばなかった。唯一、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』はよく出来ているけど、あれは続編というよりも、大きなひとつの物語を前編・中編・後編と3分割したものにすぎない。でも、映画史のなかで成功しているのは『王の帰還』しかないわけで、そのとき、はたとひらめいたんだ。『トイ・ストーリー3』を第2作の続編として製作するのではなく、大きなストーリーの最終章として構成すればうまくいくんじゃないか、とね。
『トイ・ストーリー』の主役はウッディだから、彼の感情的な変化に主眼をおいて、3部作の最終章を作ればいいんだ、と。このアイデアを思いついたとき、『トイ・ストーリー3』を製作する正当な理由が生まれて、体からエネルギーが漲ってきたんだ」
――これまでに登場したおもちゃのなかで、今回、登場しないキャラクターもいますね。
「過去のキャラクターはできるだけ登場させたかった。でも、アンディが成長したという設定になったときに、たくさんの脇役を取り除かなくてはならないということが明白になったんだ。脇役のほとんどは子供向けのおもちゃで、普通の子供は17歳になるまでに、子供向けのおもちゃのほとんどを処分してしまうものだから。でも、すべてを完全に処分してしまうのではなく、強い思い入れのあるものは残しておくことになる。その思い入れのあるおもちゃですら、スポーツ用具とかと一緒に乱雑に箱に詰め込まれてしまっているんだけれど。つまり、『トイ・ストーリー3』に登場するキャラクターは、長い月日のなかで、アンディが捨てなかったおもちゃたちということになるんだ」
――どうして託児所を舞台にすることになったんですか?
「最初に打ち合わせをしたときに、託児所を刑務所のように描くというアイデアが生まれたんだ。考えてみると、託児所と刑務所は共通点がものすごく多い。子供たちは勝手に出ることを許されないし、そこらじゅうに監視カメラがあって。おまけに裏には運動場があって、遊具の塔が監視塔を思わせたりして。いったん託児所を刑務所として描くことになったら、物語の中盤で刑務所を脱出する展開になることが自然に決まった。それで、ありとあらゆる刑務所映画を見たよ。古典の『暴力脱獄』はもちろん、外国映画まで見て、脱獄映画のエッセンスを掴もうとしてね」
――これまでのシリーズで、もっともヘビーな展開になっていますね。
「それは事実だ。ぼくらはおもちゃを人間とみなしているし、彼らの人生もぼくらの人生と同様に充実したものであるべきだと信じている。人生は、ときに厳しいし、難しい選択を迫られることがある。辛い経験もときにはしなくてはいけない。そういう人生のリアルさを、彼らにも体験させたかった。無菌状態で、まったく葛藤のない人生ではなくてね」