「“歩”をめくって“と金”になり、縦横無尽に相手の家族をかき乱す・・・」譜めくりの女 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
“歩”をめくって“と金”になり、縦横無尽に相手の家族をかき乱す・・・
ほんの些細な事件であっても復讐心を燃やし続けることはあるんだろうなぁ。あまり説明はなされてなかったのですが、国立音楽学校の入学試験(?)のピアノ実技のとき審査員の一人であるピアニストのアリアーヌ(カトリーヌ・フロ)が無神経な態度を取ってしまい、受験生のメラニーが散々な結果に終わる。10数年後、短大生となったメラニーがアリアーヌの家族に近づき、復讐するというお話。
メラニーの両親が肉屋であるところなんて、どことなくホラーっぽい。にわとりを大きな包丁でさばくところも意味深だったけど、あの鳥がマリアーヌの息子が可愛がってた鳥だったのかどうかは不明。このシーンも観客をミスリードする手法だったのだろうか・・・なかなか巧い。
動機も弱いし、復讐の念も伝わってこないことが逆に恐ろしさを感じてしまう。しかも、どんな復讐を企んでいるのかもわからないし、具体的な被害も受けないので、アリアーヌはどんどんメラニーを信頼していって譜めくりとしての彼女がいなければ演奏すらできなくなってしまう。そして、その信頼が愛情に変わっていく・・・そうくるか!異性間の愛情を勝ち取って復讐する映画は他にもあるけど、同性愛という武器だとはなぁ・・・
短い映画だけど、謎を残しているところにも唸らされる。アリアーヌは2年前にひき逃げ事故に遭っている事実や、メラニーが父親に「順調よ」などと言ってるところで想像力をかきたてられるのです。しかし、写真の裏に書かれたメッセージがなければ、次はどんな手段を取ったんだろうなぁ。
爽快感なんてのは無いんですけど、「なるほど!」と膝を打つほどのエンディング。それにしても、女の執念は恐ろしい。あんな家庭崩壊へと導くような復讐はやめましょうよ。クラシックピアノを断念するのはいいけど、そこで一念発起してパンクロッカーになってアリアーヌを罵倒するような歌をぶつけるとか、健康的な復讐を望みます・・・あ、これもやばいか・・・