「昭和も大変だった史紐解き鑑賞その三」実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和も大変だった史紐解き鑑賞その三
昭和に起こった不可解な集団殺人事件、いわゆる山岳ベース事件からあさま山荘事件までの一連の流れを組織内部から描いた長編作品。
連合赤軍と関係の深い若松監督が描くことで、ディティールまで恐らくほぼ正確に表現されていると思う分、歴史的な資料としての価値は高い。
安保闘争の末期に、機動隊との相次ぐ衝突や過激な行動による逮捕者の続出で行き詰った末に、残った赤軍派と革命左派のメンバーが結託して連合赤軍と名乗るものの、赤軍派は森、革命左派は永田が行き掛かり上それぞれのトップとはなるが指導力と呼べるようなものはなく、警察の包囲網もどんどん狭まってゆき、山岳地区に逃げつつそこで革命のための準備をしていく。
そんな最中に、規律を乱すものに罰を与えていたのがどんどん過激化、訳の分からん共産主事ワードを連発して尤もらしく暴力を正当化、歯止めが利かずしまいに死に至らしめてしまったという、実は学生闘争や60年安保の話に微妙には繋がっているものの、その事件自体は単なる歯止めの利かなくなっ集団の虐待事件だったというお話。
これを、ほぼ正確に描いているので、醒めた目で見ると大変滑稽、だけどやってる人間大真面目。若松監督はこれを美化することも誇張することもなく描いてくれているので、いかに愚かで稚拙な心理だったかが大変よくわかる。
恐らくは隔離されたカルトコミュニティであれば、どこでも起こりえる恐怖だと思う。現にその数十年後に山梨県のサティアンと呼ばれる閉鎖集落で同じようなことが起きている。
そういう集団心理の危うさ、その円の中にひとたび入ってしまうと物事を客観視できなくなる恐怖、自分の思考回路が完全に止まってしまい、声の大きいものが発する小難しい謎の言葉がすべて正しいと考えてしまうようなマインドコントロール的思考が起こりえる危険性が、この映画のメインテーマだとしたら、本作は大変優れたサイコスリラーかと思う。
その共産思想が正しいとか正しくないとか言う話は知ったことではなく、単に自分を正当化させるために他者を貶める、あまつさえ命を奪うような行為はあってはならない。それを、勇気が無かった、などという小学生のいじめ問題で同級生の子たちが思うようなことを、仮にも最高学府まで出んとするような若者たちが言っていることに恐怖を覚える。
彼らに足りなかったのは勇気でもなんでもなく、物事を客観視できるかどうかのインテリジェンスの問題そのものだったのだと思う。大学まで入っといてなに寝ぼけたこと言ってんだと、呆れるばかりだった。