「井浦新さん目当てで観ました」実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) ayadayoさんの映画レビュー(感想・評価)
井浦新さん目当てで観ました
序盤はニュース映像に時代を俯瞰した(原田芳雄の渋い声の)ナレーションをかぶせ、背景をおさらい。キーワードを赤ゴシック体でバーン。場面にはまったカッコいいBGM。
「革命的認識」をはじめ、「客体化」「主体的」「過程」等々、学生(革命戦士)たちの使う言葉、言ってることが分からなさすぎて、笑えます。
喜劇的なくだりがいくつもあるが(水筒問題、銭湯問題、つまみ食い問題…)当事者は、その馬鹿馬鹿しさに気づかない。
制約の多い閉鎖的な集団の中で、クラスのいじめ、部活のしごきに通じる病理が募っていくさまが描かれる一方で、若者の集団生活らしい健康な連帯感(合唱してたり)も描かれたりして、切ない。
坂井真紀の入浴シーン(全裸の背中)はうまく消化できなかった(後に折られることになる若い健やかな命をより痛ましく見せるため?)が、2回目によく見たら、左肩に青痣があるようにも見えたので、訓練の過酷さとか、その後の運命を暗示したかったのか…サービスショットか。
坂井真紀の遠山さんに関しては、ああいうキャラクターならなんで赤軍派の創設メンバーになって革命戦士として軍事訓練受けようなどと思ったのかが、「母の苦労を見てる」だけでは今一理解できず。当時はあんなふわふわした感じでも、ムーブメントに乗ってしまったのでしょうか。
永田洋子役の女優さんの、これまでの人生のルサンチマンがこもった、酷薄で陰険な表情がよかった。この人は過激な活動に走る理由が見える。ところでヒロコだったんですね。ヨーコだと思ってました。
「日和る」(判断が揺れ動く)というのは、とても人間的で大事なことなんじゃないかと、不動の意思とか不退転の決意とかを求めて自滅していった彼らを見て、思いました。
あさま山荘事件の映画だと思って臨みましたが、そこはほんの終盤にすぎません。長くて重いのは、そこに至るまでの、いわゆる山岳ベース事件の方です。
ちなみに警察側から描いた先行作品、「突入せよ!あさま山荘事件」も観てみましたが、こちらはより娯楽性が強く(ヘンな後味を残さない)、勝てば官軍で佐々敦行がめっちゃカッコよく描かれており、対立する長野県警側が超鈍臭く描かれていてやや気の毒。ラストの主人公(役所広司)のセリフ、私が天海祐希(妻)ならどつきます。
本作に戻ると、山荘の奥さん(奥貫薫)の存在の佇まいがよかった。好きな女優さんです。
最近、今上天皇に係る皇室史を振り返るドキュメンタリーを見ることが多かったのですが、並行して、庶民の世界はこういう風に揺れ動いていたんだなあと、思ったことでした。
最後に、坂井真紀何を着てもオシャレに見えてしまう問題を提起して、終わります。