「ラースがいとおしくて堪らない。」ラースと、その彼女 いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)
ラースがいとおしくて堪らない。
★
過去を乗り越え大人になるための、殻を破るための、ちょっと遅い、
ちょっと遅いだけの通過儀礼としての、手段だっただけ、
ただそれに必要なのが、リアルドールだった、というだけ。
雪に覆われたアメリカ中西部の小さな町に暮らす
ラース(ライアン・ゴズリング)は、
町の人たちから“Mr.サンシャイン”と呼ばれ、
優しくて純粋な青年で町の人気者だが、極端にシャイな性格で、
ずっと彼女がいない為に兄のガス(ポール・シュナイダー)、
義姉カリン(エミリー・モーティマー)らは心配していた。
そんなある日、ラースが「彼女を紹介する」と兄夫婦のもとにやってくる。
しかし、ラースが連れてきたのは、インターネットで購入した
ビアンカと名づけられた等身大のリアルドールだった。
医師(パトリシア・クラークソン)に相談し助言をもらい、兄夫婦を始め、
町の人たちは驚きながらも、
ラースを傷つけないようにビアンカを受け入れようとする。
嘘でも大袈裟でもなく、
冒頭の数カットで既に泣いている僕って、いったい。
数シーンじゃないよ、ラースがどれくらいシャイで、誠実で、
愛されてはいるんだろうな、ということを、
そんな人物だということを示しただけの数カットで、既に泣いている。
それは去年の年末の試写会での“再会の街で”と同じ様なのめり込み方で、
あれだけで泣いちゃうヤツなんて、
日本で4人ぐらいしか居ないんじゃないか。
孤独な、孤独を感じさせる主人公に、どんだけ弱いんだよ、僕は。
ラースがどんな人物かを示すシーンで、
貰った花をぶん投げるシーンがあります。
このシーンはホントに可笑しくて、悲しくて、素晴らしいシーンです。
リアルドールを彼女として紹介するわけで、
兄夫婦は初めは目が点になるわけで、
とうとうキレちゃったかと思うわけで、しかし、そのうろたえ方も、
どうにか理解しようとする様も最高に笑え、
車椅子でビアンカを連れまわすラースを見る町の人々の反応も面白い。
しかし、この作品はコメディであり、ハートフルなドラマである。
受け入れようとする町の人々の中には、
当然そんな茶番に付き合えるかという人もいるし、好奇の目もある。
しかし、受け入れちゃう町の人々の温かさったらない。
極端にシャイでも、愛されちゃってるんだよな。
そして、町の人々を巻き込んで変わって、変えて。
ちょっと間違えば単なる変人になりそうな
ラースをキュートに演じたライアン・ゴスリングも、
兄夫婦や医者や友人役の人々も適材適所で、
この作品を見事に作り上げている。
同僚のぬいぐるみにラースがある事を行うシーンもよかった。
その後の、人としてありふれた光景に、
ただ友人たちと騒いで楽しんでいる姿に、ラースにもあそこは思いっきり、
と思わなくもなかったが、ただただ泣いてしまう。
土曜の昼間だったからということではないでしょう。
題材が題材だったからでしょう。
スカスカの試写会場で、心置きなく笑って、泣く事が出来ました。
この年末年始は孤独な主人公と言えば“ウォーリー”でしょうけど、
ウォーリーも素晴らしかったですけど、
もちろんダメな人はダメでしょうけど、
この作品も機会があったら多くの人に観てもらいたいな。
きっと自分にも、他人にも優しくなれるから。
上映後、ビアンカさんが入り口付近に居て、見送ってくれました。
記念撮影はやめておきました。
あぁ、ラースがいとおしくて堪らない。
★
泣ける気持ちとてもわかります。
ある意味ファンタジーなんですけど…
ストレスフルな現代人の忘れがちな、思いやりとか、その人の成長や変化を見守り待ってあげる心とか、この街の人に教えられた気がして、なんかハッとさせられました。
ライアンはこんな役も難なく演じてくれますね。
いやしかし、元に戻ってよかったとは思います(笑)