ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライトのレビュー・感想・評価
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スコセッシVSミック・ジャガー?
スコセッシが自作で再三BGMに使ってきたローリング・ストーンズのコンサート映画を監督する。まさに大好きなバンドとの仕事でさぞや楽しかっただろう、と思いたいのだが、スコセッシの目論見は序盤からつまづいてしまう。さすがに現役最古にして最高のロックバンドは曲者ぞろいであり、特にミック・ジャガーに翻弄される様子がそのまま映し出されていて笑ってしまう。
特に綿密に準備したいのに、本番当日になってもミック・ジャガーからセットリストを教えてもらえず(ギリギリまで決まっていない?)やきもきするスコセッシの姿を観ていて、これはもしかしてストーンズというよりスコセッシのドキュメンタリーなのかも、と思ってしまう。
とはいえコンサート映画としてのクオリティは素晴らしく、スコセッシは一貫して観客席からの目線ではなく、バンドと一緒にステージ上に立っているような感覚を味わせてくれる。カメラは基本的にステージの上で、演者のすぐそばで演奏を観る臨場感は、ライブに行っても体験できないものだろう。
そして最後はまたスコセッシ御大の登場で〆る。考えたらスコセッシはウッドストックに映画スタッフで参加して以来、音楽映画の現場でミュージシャンのわがままに翻弄されることが多かった。それでもやっぱり音楽に足を突っ込まずにはいられない、そんなファン心理が宿った映画でもある。
映像がもの凄い
2021年8月24日、チャーリー・ワッツが亡くなりました。
ストーンズのサウンドを支える、彼のタイトなドラミングが好きでした。
どうか安らかに。
2008年12月劇場鑑賞
わずか3000人弱の小さな箱(ストーンズとしては)のビーコンシアターでのライブを撮ったドキュメンタリー。
そして監督はマーティン・スコセッシ、もうこれだけで個人的に最高です。
ザ・バンドの「ラストワルツ」から30年以来?のライブドキュメンタリーというのもすごいですよね。
ライブ前散々セットリストを出し渋られ、焦らされるスコセッシが面白い。カメラに位置が決められないと気が気じゃ無いんですよね。
ミックの掌で転がされているようで、ちょっと可哀想でした。
そんなショウは「Jumpin' Jack」で幕を開けます。
作品は音も素晴らしいのですが、16台のカメラを使ったという映像がもの凄い。
とてもクリアでライブハウスで直で見てるようなんですね。
目の前をミックが駆け抜けて行ったような錯覚さえ覚える、映像の美しさなんです。
メンバーの表情までも良く見え、縦横無尽に駆け抜けるミック、じゃれ合う陽気なキースとロニー、そしていつものようにそれを見ながら淡々とプレイするチャーリー、皆本当に楽しそうなんですね。
一番印象的なシーンは何といってもキース。オーディエンスにピックを飛ばすんですけど、これが仕草もその映像も最高に格好良いんですよ。
キースの「やるよ」って表情が本当に良い。
ゲストもバディガイ、ジャックホワイト、クリスティーナ・アギレラと実にストーンズらしく豊富。
この、ステージの面々がありのまま切り取られた感じが素晴らしかった。
駆け抜けるように過ぎていって、気がつくとラスト「Satisfaction」。
それにしても盛り上がったショウでした。
ふと気がつくと「Shine a Light」がセットリストに入って無いんですね。タイトルなのに何故?ってなります。一応ラストにオーディオで流れるんですが。
そしてこのラストも実に良い感じ。
ライブという夢から覚めるような感じが面白かったです。
ロック世代、即ち団塊の世代の締めくくり 壮大な同窓生記念写真だ
2006年NYビーコンシアターでの彼らの慈善コンサートの映画
さすがのライブパフォーマンスだ
スコセッシの映像もそんじょそこらのミュージックビデオとはクオリティが違う
だがスコセッシが本作を撮った目的と意義とはなんだったのだろうか?
頻繁に挟まれる彼らの若き日々でのインタビューの意味とは何か?
終盤にミックが60歳になってもやってる?と訊かれもちろんと笑顔で答える
そして冒頭、噛み合わない彼らとの打合せの為進まない撮影準備にカリカリと苛立つスコセッシが誰かに「ロックンロールなんだから……」となだめられて苦笑するシーン
これが対になっている
同じスコセッシ監督のラストワルツがザ・バンドの解散コンサートがヒッピー文化の終焉を活写していたように、本作はつまりローリングストーンズ、スコセッシ、冒頭リハーサル中に次々に記念写真を要求する功なり名を遂げた老人たち、このロック世代、即ち団塊の世代の締めくくりだったのだ
だから、スコセッシは自分の仕事光景まで撮らせ編集にも加えたのだ
壮大な同窓生記念写真なのだ
フィナーレシーンのように彼らは今退場しようとしているのだ
本作から10年以上経過して今それがハッキリと分かる
ラストワルツと本作は対になるロック映画であったのだ
You Got Me Rockingが発売された頃にどハマりして初...
You Got Me Rockingが発売された頃にどハマりして初期作品まで遡って聴きまくっていた時期がありました。その時以来はストーンズまったく聴いてなかったのだけれど、この映画で再びハマりそう。
映画だけど映画じゃない。パフォーマンスを体感し、ロックを感じろ。映像はとても良かった。
スコセッシ監督が一流スタッフ揃えて撮った傑作。
好きな人のためのエンタメ映像
ここまで続けられている絆みたいなものがさりげなく表現されていて、多少じんわり来るけれど、うまいとは言い難い演奏を映像でじっと聴いていることへの苦痛を強く感じてしまった。
ほぼコンサートの模様を捉えた映像作品なので、ストーンズを本当に好きじゃなければ楽しめないような気がする。
繰り返しになるけれど、演奏そのものは決して称賛できるものではないけれど、技巧とか関係のない、言ってしまえば音楽というものを超越した何かが、彼らのパフォーマンスには確かにあった。それを丁寧に誠実に表現しきっているスコセッシには敬意を表するとしても、ファンじゃなければこの映像は楽しめない。後半は有名どころの曲(彼らの音楽は全部有名だといえばそれまでだが…)が連続して演奏されていたけれど、結構飛ばし見してしまった。
実際にコンサート会場に居たならば、間違いなく無類の感動を覚えただろうけれど、この映画にはそんな感情は起こらず…非常に優れた映像作品だとは思ったけれど…
基本的に映画ではなく演奏会
総合30点 ( ストーリー:5点|キャスト:50点|演出:50点|ビジュアル:70点|音楽:75点 )
スコセッシ監督ということでもう少し流れがあるのかと思ったが、基本的にはニューヨークで行われた演奏会の映像中心で特に映画らしい展開はない。ただし演奏の熱い臨場感は伝わってきた。映画らしさでは冒頭でのいくつかのやりとりがあるくらいだが、最後で出口を出てから空からの映像に切り替わるのは上手かった。
ストーンズは「ストーンズ」というジャンル音楽である
2008年アメリカ映画。122分。今年32本目の作品。ザ・バンドやボブ・ディランの実録ドキュメンタリーを撮ってきたマーティン・スコセッシ監督が、次に英国の伝説ロックバンド、ローリングストーンズのライブを映画化した作品。
内容は;
1、スコセッシ監督は2006年にNYのビーコンシアターで行われるストーンズのライブを映画化することに。
2、それでミック・ジャガーと事前打ち合わせでセットリストを要求するが、一向にリストが送られてこない。
3、そのようにして当日のライブ撮影はぶっつけ本番で行われた。
ストーンズは今まで何故か止まることのなかった音楽で、本作を観るにあたっての予備知識はほぼゼロでした。そして観終わっての感想は、
とにかくカッコイイ。
このカッコイイにはもちろんストーンズの音楽やバンドとしての魅力がすべてです。そして、その魅力を最大限に撮ったスコセッシ監督の映像技術が影の主役なのでしょう。
作品全体としては、スコセッシ監督によるディランの「ノーディレクションホーム」にあったロック史を俯瞰できるような教養性はあまりなかったというのが印象。ただ、ひたすらライブにおけるストーンズのパワーを最大限にとらえようとしている印象が強いです。
だから、本作は肩のこらない、でも圧倒されるエンターティメント作品だと思います。とりあえず、わたくしとしては本作をきっかけにストーンズの音楽にしばらく浸ってみようかなと思いました。
ストーンズファンの方が本作をどう観たのか知りたいところです。
かっこいい!、還暦オヤジよ、永遠なれ
映画がはじまりだした途端、監督のスコセッシとストーンズのメンバーとの静かな対立がつづく。ステージ・セットとカメラ位置に神経をすり減らすスコセッシ。しかし、ステージの作り方に疑問があったメンバーは、スコセッシにライブの曲順も何も知らせないという反抗を企てる。スコセッシは、はじまりの曲を予想しながらカメラ位置を決めて、さあステージの幕があがって一曲目はジャンピングジャックフラッシュ!...
さすがスコセッシ、最初から観客をドキドキさせて熱狂のストーンズ・ライブに導かせるなんていう、味な演出を見せてくれた。そして、ライブ中のカメラワークのうまさは、メンバーとごたごたなんかあったことなど忘れてしまうくらい(いや、最初からごたごたなどなかったと思うが)に見事!。ライブ演出のうまさも、さすがスコセッシと唸らせるものだった。
ただ、ミュージシャンのドキュメンタリーに名作も数多いスコセッシの作品としては、物足らない部類、と観た人の中に感じた方は多いかもしれない。確かに、過去のストーンズへのインタビュー映像はたくさん挿入されているのに、今のストーンズへのインタビューがほとんどないのには、ちょっと不自然には感じた。
しかし、昔のインタビュー映像を観るうちに、おそらく、同じことを聞いても昔と変わらない返答をストーンズのメンバーはするだろうし、ステージ上にストーンズそのものがあるのだから、今のインタビューは必要ないようにも感じるようになる。ストーンズのもつ迫力、ストーンズの真実とは、彼らの音楽そのものなのだ。
そのストーンズのライブについて、あれこれ言う必要はないだろう。還暦になるというのに、パワフルに動きまわるミック・ジャガーの迫力は凄まじいものだし、名曲の数々には観ている者もスクリーンの観客といっしょに立ち上がりたくなるくらいにノリノリになってくる。他にも、バディ・ガイが奏でるこてこてのブルースギターの音色、ドスのきいたクリスティーナ・アギレラの声量など、見どころは枚挙にいとまもないほどだ。
個人的には、キース・リチャーズのかっこよさに魅了された。特に、曲と曲のあいだにピックを観客席に投げる仕草なんて、キースじゃないとかっこよく見えないだろう、と思わずにはいられないものだった。そして、観終わったあとには、メタボな奴はストーンズのかっこよさなど真似できない、ことにシミジミと嘆くばかり、なのである。
Like a Rock'n'Roll
先日「少年メリケンサック」を観まして、”ホンモノの”ライブが観たくなり、この映画を観ました。
ローリングストーンズは王道過ぎて、全く通っておらず1曲も知らない”エセロック”キッズな僕でしたが、とにかくこのバンドは凄い。
ただただ圧倒されっぱなし。感無量でした。
泣きすぎて、目が腫れぼったかったです。
とにかくそのライブパフォーマンスのパワーが凄すぎる。
生きるロックンロール。これぞ王者の貫禄、王者の姿。
素晴らしい映画でした。
途中で挟まる過去の映像、インタビューもまた泣かせる仕様になっていて、素晴らしいです。
ライブとしても、映画としても、音楽作品としても、素晴らしかった。
これは是非、映画館の爆音で観るべきです。
ローリングストーンズ、ちゃんと聴いてみます。
今まで聴いてなくてすいませんでした。
とりあえずこのサントラ盤から入ってみます。
まさにロック!
40年以上に渡ってミュージックシーンのトップを走り続けたストーンズを、自らも好んで彼らの楽曲をよく使う、巨匠マーティン・スコセッシが撮り上げた音楽ドキュメンタリーは、とにかくライブが圧巻の一言で、映画館でストーンズのライブを追体験しているような感覚になった。
そして何より、ストーンズという存在が格好良過ぎる。とても60過ぎとは思えないエネルギッシュさでステージを駆けまくるミック・ジャガーを筆頭に、演奏を心から楽しんでいるように見えるキース・リチャーズ(演奏中にロンの肩に腕を置き、目と目で会話し合うシーンがとてもチャーミング!)、いい感じに枯れてきたもののロックしまくってるロン・ウッド、そして、一人だけ飄々としているチャーリー・ワッツ(笑)、さらにサポートのメンバーたちに至るまで、スコセッシは彼らの魅力を余すところなくカメラに収めている。いや、変にいじることなく、そのまま切り取った、と言う方が適当か。
それにしても、果たして彼らと同じ世代で、彼らと同じようにロックしてる人っているだろうか? こと日本に限って言えば、一人もいないんじゃないだろうか? ドラッグ使用による逮捕や、バンドの休眠時期など、紆余曲折を経て、今なお失踪し続ける彼らの存在自体がまさにロックだと思う。
転がる原石が放つパワー。
最近、地元のシネコンでもいろいろな試みが為されていて、
なかでも以前は土日だけだった気がする「オペラ」の上映が、
最近では平日でも上映されていたりする。。
ってことは、売れている?3,500円を出して観る人がいるのだ。
映画館でオペラ鑑賞??…とゲージュツ心に偏る私が観た
今回のストーンズ公演も、実はまったく変わらない気がした。
しかし、観てみて分かったのだ。いや~素晴らしい!!!
取りあげたアーティストや演出が世界的な事もあるだろうが、
―映画館では「映画物語」だけを観るものだ。
という固定観念が見事に覆されて、い~じゃないか!?
オペラだろうが、ロックだろうが、サッカー観戦だろうが、
つまりは巨大スクリーンで観ることに興奮材料が詰まっている。
それがもう、すご~く分かって嬉しかった。
興奮しつつ静かに(?)足を踏みならして彼らと歌った(^◇^)
とりたてて、ストーンズのファンだったわけではない。
だから彼らの演目もすべてを知っているわけでもなかったが、
そう言いながら「あの曲はまだか?まだか…?」なんて、
ゾクゾクしながらラストのアンコールまで待ってしまった…^^;
もちろん生ライブ(すごい値段だろうな)が一番なのは分かる。
でも、この環境(ヘルニア…じゃなかったプレミアスクリーン)で
さらには(レディースデイだったもんで)1,000円で、観られた私は
なんてラッキーなおばさんなの~♪と浮かれ女になってしまった。
スコセッシの映像センス(確かにあったと思うけど)に酔ったか、
彼らのシワの数に酔ったか^^;パワーに圧倒され観終えた頃には
コンサートを観終えたのと同様にグタ~っと心地よく疲れた。。
いいな。この試み!今回は確かに素晴らしかったが、
これからもこういうのをたまに作っちゃくれないだろうか…。
コンサートにはなかなか行かれない(時間的に金銭的に)ヒトでも、
映画館なら何とか足を運べるんじゃなかろうか。
自宅のDVD鑑賞より、はるかに臨場感は味わえると思うなぁ~。
(プロジェクターをお持ちの皆さまには羨ましい限りです)
…というわけで、これは映画館で観るコンサート映像に他ならず、
彼らのインタビュー映像も所々入っているけれど、それを含めて
知らない人、ファンでない人が観た場合、感想はまちまちでしょう。
あと、ロックですからね!!かなり音もうるさい(爆)
なにかの誤解で(ファンだったら申し訳ないが)おばあちゃん達が
ぞろぞろと出ていったのを目撃。。^^;
しかしあの世代でバリバリのロッカーであり続ける彼らの活撃に、
日本のロッカーズたちも頑張れ!!とついエールを贈りたくなった。
(ミックはあれだけ走りまわってても声がぶれないのだ。スゴイなぁ)
近いぞ!
実際にコンサートに行ったこともあるけど、この臨場感はまた格別!会場が小さめということもあって、「As Tears Go By」とか「Connection」とか、スタジアムでは聴けないような曲が選ばれて感激しました。それにしてもミックのあの動き、すごいスタミナです。ぜひ、大画面で見るべし。
ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
中学生の頃ビートルズとともに大好きで毎日聞いていたストーンズの映画と言うことで、主人と出かけました。未だに衰えないパワーに驚くとともに、この年齢だからこそ出せる味わいに感激shました。
最高の高揚感
還暦を迎えたばかりの父親と六本木ヒルズに観に行きました。
僕はロック狂でもないし、ローリングストーンズについて知識があるほうではなかったのですが、最高に楽しめました。
父は同世代で、もうドンピシャの世代なので、ライブが始まった時点で泣きそうになったと言っていました(いい年なので涙もろいのですw)
マーティン・スコセッシ監督によるカメラワークはメンバーの本当に細かい表情をよく捉えていて、それぞれの個性が際立っていました。
特にキース・リチャーズのいたずらっ子な感じは好きです。
個人的にはクリスティーナ・アギレラの登場でテンションは最高潮になり、かなりクールな照明、オーディエンスの歓声が混じって興奮がさめません。
それにヒルズの音響はいいみたいです。
あの年になって、これほどのライブをしてしまう彼らはやはり伝説的なバンドなのでしょう。
映画としてはほとんどなく、MTVといっていいものです。映画ファンには不向きです。18台ものカメラが ところ狭しと動き捉える、61歳のミックの超絶パフォーマンスは音楽ファン必見でしょう。
小地蔵は、ストーンズファンではないのですが、TOHOシネマズのPREMIERE SCREENで上映されていたので、どれくらいホールの音がいいか気になって出かけてきました。
久しぶりに聞いてみて見たら、やっぱり一般のホールに比べて、断然音の迫力が違いますね。
映画の方は、なんとほとんどライブが1本収録されていました。スコセッシ監督はストーンズ信者かと思うくらい、ストーンズの演奏とミック・ジャガーの激しい動きに集中して肉薄していきます。その映像を捉えるのに、18台ものカメラがレールやクレーンでところ狭しと動き、ズーム、パンを繰り返していました。
しかも数秒ごとに切り替わる細かいカット割り。本作は、どんなライブの特等席でも叶わない、全方向から密着できるファン必見の作品だろうと思います。
なぜライブ中心の作品になったのかというと、もともと映画のアイディアはミック・ジャガーがストーンズ最大規模となるリオのビーチでの野外コンサートを映画化したいと思っていたところから企画が立ち上がったからです。
けれども監督はもっと観客と一体化できるコンパクトなホールでのライブを提案。しかしそれにはミックが激しく噛みつきたのです。ツアースケジュールはすでに一杯。忙しいメンバーにいつそんな撮影をこなせるんだと。
もう一つ、狭い会場ではカメラと出演者がぶつかってしまうリスクも高かったのです。 それが冒頭のシーンでのミックと監督の応酬となって描かれていました。
曲順一つ明かさないミックに監督は困り果てていたのです。意外だったのは、ミック自身、狭いホールでどう観客と親密さをアピールできる曲にすべきか直前まで悩んでいたようです。
ただこのミックと監督の応酬はほんのわずかなシーンでしか明かされません。映画は、そのあてすぐステージに変わり、この日のライブをプロデュースしたクリントン元大統領のスピーチからすぐ演奏に変わります。
途中のインタビューシーンも、少なめ。それも若い頃のミックが答えたものがほとんどでした。
キースと麻薬で収監され釈放されたときのインタビューシーンを入れたのは、現在のミックとの対比させようとの意図ではなかったかと思います。
若い頃のミックは、自由を求めて社会に反抗する気持ちが演奏のエルネギーに繋がっていたのでしょう。本作で語るミックは、ステージ上では無我なんだと語っていました。そしてステージで、演奏できて神に感謝しているとすらメッセージを観客に伝えていました。御年60歳を超えてパワフルに歌い続けているミックの情熱は、きっと頑張って歌い続けていること自体に愛を感じ、無意識に観客に愛を与え続けていることの喜びことからきているのだと感じましたね。
数少ないインタビューシーンで繰り返されたのは、いつまでストーンズを続けるのかということ。30歳くらいのミックが答えます、おそらく60歳になっても続けているよと。映像はすぐ現在のミックをアップします。きっと監督は、永遠に終わりのないストーンズ伝説を描きたのではないでしょうか。
それにしても、14曲目のSympathy for the Devil(悪魔を憐れむ歌)のハイテンションは、圧巻。本当に悪魔が退散するくらいの迫力でした。
そしてアンコール曲SATISFACTIONでは、ミックは、過去のライブよりも激しくステージ上を動き回ります。もう2時間も歌いまくり、踊り狂った60過ぎのおじいさんのどこにこんなエネルギーが残されているのでしょうか。
ストーンズを知らない人でも、このラストを聞けば、きっとノリノリに乗せられてしまうでしょう。小地蔵だって、この曲のベースの音がはらわたに飛び込んできたくらいですからね。
ミックの観客に魔法をかけて自分たちの世界へ誘い込む不滅のエネルギーに打ち負かされた一夜となりました。シャイン・ア・ライト。輝いていたのはステージでなく、彼らのスピリットでした。
ただ映画としてはほとんどなく、MTVといっていいものです。映画ファンには不向きです。 音楽ドキュメントものとしては、キースが出演した『レス・ポールの伝説』や 『ヤング@ハート』の方がおもしろかったですね。
やり続けるってことは、こういうことなんだ!
こだわりが重要だ。
何かを極める為に、時として人はクールに徹しなければならない。
世界を相手に駆け巡り、大盤振る舞いをする人達がいる。
オスカー受賞監督マーティン・スコセッシMartin Scorseseと、現在最も偉大なロック・バンドであるローリング・ストーンズ;The Rolling Stones、この2組による夢の競演。
どちらがクールさを保持できたのか?
ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト;Shine a Lightは、言わば意地のぶつかり合いのような映画である。
事の発端はミック・ジャガーからのオファをスコセッシが受諾した辺りだという。
スタジアム級コンサートの映像化にこだわりを持ったミックに反し、オーディエンスとの接近と臨場感をミックスした構想を練るスコセッシ側。
セットリストが本番直前30分まで手元に上がってこない故のスコセッシの苛立ち、陰で支えるカメラスタッフとの敏速なやり取り、何となく煙に巻いて楽しんでいるかのようなミックの素振り・・・各々が訳ありな敏腕ビジネスマンにも思えてくる。
食い違う意見とその駄目だし振りを、躊躇なく最初の約10分間の映像に収めている。
そんな前振りと、合間には過去の映像を掘り起こして充てていくカット割り、スコセッシ流なこだわりが冴えわたるライヴ映像である。
ニューヨークのビーコン・シアターにて、およそ2000人規模のキャパで執り行われたライヴは、スクリーンに迫るミックやキースの息吹や音像で、れっきとしたナマモノであることを証明している。
様々なスキャンダルや都市伝説並みな噂も絶えなかった彼らが、アリーナやスタジアムでは米粒大ほどにしかお目にかかれない彼らが、スクリーン前面に映し出される。
生身と全霊を傾け演奏する彼らの瞬間を、スコセッシのカメラクルー達はしたたかに追い続ける。
特別派手なテクニックや編集をしたようには見受けられず、ストレートなカットで迫るのだ。
しかもオーディエンスの邪魔をしないようにと、細心な心使いと控えめな配置で撮ったというから驚きである。
スコセッシの音楽に対する造詣の深さは本物である。
モンスター級な醍醐味だ。
音像的につかみどころが無かった近年のストーンズ個々のキャラクターである。
ロン・ウッドやキース・リチャーズのギター・ワークが一体どのようなものか?チャーリー・ワッツはどこまで体力的についてきてるのか?などの、細かい表情や描写が一目出来て、微笑ましい瞬間などもある。
意外にも今回の流れを肯定的に捉えているのはキースのようであり、ステージで音楽を心底楽しむ姿勢はむしろ優等生的だ。
永遠の不良という憧れの称号を持つ彼が、実に献身的で紳士に見えてしまった。
その分、ミックのアグレッシヴさが冴えわたっている。
既に還暦を越えている彼らにおいて、切れのあるアクションや見事に均整のとれたシルエットなど、ミックのシンボリックな立ち位置は信じられないほどに明確だ。
反逆児のように魅力的な人物として、この映画の中心にいる。
どうやらこのバンドの全権はミックにあるようで、他のメンバーはそんな彼の仕切りを尊重しながら存続してきたようだ。
一人の人間のリーダーシップが全てを左右することを、この映画の中で学べるとは思いもしなかった。
途中でゲスト出演するジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)、バディ・ガイ、クリスティーナ・アギレラの3組が更にステージを演出し相乗効果をもたらす。
ゲスト各々は全く違ったタイプのアーティストにも関わらず、そのどれとも納得いく絡み方が出来るというのが、ストーンズの利点だろう。
ルーツ・ミュージックへの憧憬とともに時代性も無視せず取り入れてきた、そんな彼らの包括力は世界最高峰バンドならではである。
音の処理に至っては、映像にリンクするかのように独特なブースやカットを施している。
ロニーやキースが楽曲ごとにどのようなパート分けをして演奏するのか?改めて分かりやすく聞こえた。
オーバードライヴするキースのギター、その絶妙なルーズさもダイレクトに分かる。
ミキシングは名プロデューサー、ボブ・クリアマウンテンによるもの。
ストーンズを始め大物ミュージシャンとの仕事が目立つ人だ。
手抜き一切なし、ライヴは生身なぶつかり合い、映像の無駄の無さ・・・音楽映画のすべてが凝縮された一作だ。
相手が誰であろうが、何が待ち構えようが、決して支配されない。
自分の信じたものをやり続ける大人達は、実に潔く見える。
やり続けるというのは、相手を認め、直すところは直し、そして主張すべき時は戦う・・・
やり続ける為に必要なのは、ただ、ひたすらやり続けようと決めて、とにかくやるだけなのだ。
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