劇場公開日 2008年12月5日

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「映画としてはほとんどなく、MTVといっていいものです。映画ファンには不向きです。18台ものカメラが ところ狭しと動き捉える、61歳のミックの超絶パフォーマンスは音楽ファン必見でしょう。」ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画としてはほとんどなく、MTVといっていいものです。映画ファンには不向きです。18台ものカメラが ところ狭しと動き捉える、61歳のミックの超絶パフォーマンスは音楽ファン必見でしょう。

2008年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 小地蔵は、ストーンズファンではないのですが、TOHOシネマズのPREMIERE SCREENで上映されていたので、どれくらいホールの音がいいか気になって出かけてきました。
 久しぶりに聞いてみて見たら、やっぱり一般のホールに比べて、断然音の迫力が違いますね。

 映画の方は、なんとほとんどライブが1本収録されていました。スコセッシ監督はストーンズ信者かと思うくらい、ストーンズの演奏とミック・ジャガーの激しい動きに集中して肉薄していきます。その映像を捉えるのに、18台ものカメラがレールやクレーンでところ狭しと動き、ズーム、パンを繰り返していました。
 しかも数秒ごとに切り替わる細かいカット割り。本作は、どんなライブの特等席でも叶わない、全方向から密着できるファン必見の作品だろうと思います。

 なぜライブ中心の作品になったのかというと、もともと映画のアイディアはミック・ジャガーがストーンズ最大規模となるリオのビーチでの野外コンサートを映画化したいと思っていたところから企画が立ち上がったからです。
 けれども監督はもっと観客と一体化できるコンパクトなホールでのライブを提案。しかしそれにはミックが激しく噛みつきたのです。ツアースケジュールはすでに一杯。忙しいメンバーにいつそんな撮影をこなせるんだと。
 もう一つ、狭い会場ではカメラと出演者がぶつかってしまうリスクも高かったのです。 それが冒頭のシーンでのミックと監督の応酬となって描かれていました。
 曲順一つ明かさないミックに監督は困り果てていたのです。意外だったのは、ミック自身、狭いホールでどう観客と親密さをアピールできる曲にすべきか直前まで悩んでいたようです。
 ただこのミックと監督の応酬はほんのわずかなシーンでしか明かされません。映画は、そのあてすぐステージに変わり、この日のライブをプロデュースしたクリントン元大統領のスピーチからすぐ演奏に変わります。
 途中のインタビューシーンも、少なめ。それも若い頃のミックが答えたものがほとんどでした。
 キースと麻薬で収監され釈放されたときのインタビューシーンを入れたのは、現在のミックとの対比させようとの意図ではなかったかと思います。
 若い頃のミックは、自由を求めて社会に反抗する気持ちが演奏のエルネギーに繋がっていたのでしょう。本作で語るミックは、ステージ上では無我なんだと語っていました。そしてステージで、演奏できて神に感謝しているとすらメッセージを観客に伝えていました。御年60歳を超えてパワフルに歌い続けているミックの情熱は、きっと頑張って歌い続けていること自体に愛を感じ、無意識に観客に愛を与え続けていることの喜びことからきているのだと感じましたね。
 数少ないインタビューシーンで繰り返されたのは、いつまでストーンズを続けるのかということ。30歳くらいのミックが答えます、おそらく60歳になっても続けているよと。映像はすぐ現在のミックをアップします。きっと監督は、永遠に終わりのないストーンズ伝説を描きたのではないでしょうか。

 それにしても、14曲目のSympathy for the Devil(悪魔を憐れむ歌)のハイテンションは、圧巻。本当に悪魔が退散するくらいの迫力でした。
 そしてアンコール曲SATISFACTIONでは、ミックは、過去のライブよりも激しくステージ上を動き回ります。もう2時間も歌いまくり、踊り狂った60過ぎのおじいさんのどこにこんなエネルギーが残されているのでしょうか。
 ストーンズを知らない人でも、このラストを聞けば、きっとノリノリに乗せられてしまうでしょう。小地蔵だって、この曲のベースの音がはらわたに飛び込んできたくらいですからね。
 ミックの観客に魔法をかけて自分たちの世界へ誘い込む不滅のエネルギーに打ち負かされた一夜となりました。シャイン・ア・ライト。輝いていたのはステージでなく、彼らのスピリットでした。
 ただ映画としてはほとんどなく、MTVといっていいものです。映画ファンには不向きです。 音楽ドキュメントものとしては、キースが出演した『レス・ポールの伝説』や 『ヤング@ハート』の方がおもしろかったですね。

流山の小地蔵