ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破のレビュー・感想・評価
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評価できるか新シリーズ
新機軸とまではいかない。果たして作る意味があったのかというと疑問が残るが、当時感じていた疑問にはより分かりやすいアプローチが施されている。
登場人物の二面性がくっきりと強調してあり、背景の「匂わせ」が絶妙なスパイスになって、旧TVシリーズの解消されない謎がすっきりとまとまった感がある。
つまり、登場人物が複数の顔を持ち、国家、企業、自治体、宗教、学校、地域のコミュニティそれぞれのお付き合いが、同じ顔触れによって微妙に変わってくる味付けが、当時は受け入れられなかった。というより、理解されなかったということか。
母親の事故についても、より分かりやすく語られており、非常に親切な造りになっていると思う。難点は、これを単体の映画として評価できるのか?というところだろう。
シリーズのファンに特化して、ここまでのクオリティを実現できたのは評価したい。
「いじけは楽しくない」
アップデート
大人の都合に子供を巻き込むのは気が引ける・・
活発なアスカの登場でシンジも、いい加減うじうじさから卒業のきざし、やっぱり女性の方が現実的だしおませというのが庵野監督の女性観なのでしょう、それにしても前作よりお色気シーンが増えていますね。
戦うことに躊躇していたがシンジだが友や愛する人を守るためには奮い立つんだと言うシンプルな動機づけ。女所帯だったが加持の登場で男気にも目覚めてゆく、ただ、加持の「辛いことを知っている人間の方がそれだけ他人に優しくなれる」と言うセリフはまるで金八先生でしたね、独走しようとするアスカに3人での協力を促すのは毛利元就の三矢の訓と作風が説教臭くなりまた。また「織り込み済みとはいえ大人の都合に子供を巻き込むのは気が引ける・・」とか、庵野監督の自虐的なエキスキューズにも思えます、やはり気にしてたんですね。
碇親父はいったい何を企んでいるのか、初号機の不可解な変貌は計画されたものだったのか謎は深まるばかり。
2作目はTVシリーズを部分的になぞりつつ、新キャラも登場して新たな...
エヴァンゲリオン 序~Q
未公開アップロードしたままで忘れていたので、変な時にレビュー公開となってしまった。
俺は、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観ようと考えた。しかし、俺はエヴァを一つも観ていない。TVシリーズも劇場版も。時はちょうど黄金週間。録りためた中に、たしか「序」「破」「Q」いずれもあったはず。よし、一気に観て、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観る市民権を獲得しよう、・・というのが今回観た背景。
【序】
すごいなこのオープニング。あっというまに引き込まれる戦闘シーン。
登場人物が少ないからわかりやすい。
いわゆるメカ(設備、器具備品の類)のカッコよさが、心をくすぐる。
"使途" の異様な造形は、CG時代をフルに感じさせる。
ネブカドレザルの鍵とか、セカンドインパクトとか、初めて聞く単語のオンパレードなのに、ストーリーを追い続けられるのは、「それが当然」かのように、なんの迷いもなく進める点かな。まあ、アニメから延々と続く歴史があるからこそ、できることなのだろうな。
俺たち(50~60代)に、大友克洋がいるように、彼らには庵野秀明がいるんだなあ、と変な感心の仕方をした。
主人公とそれをとりまく女性たち。手ごろなお色気。
【破】
辛いのは君だけじゃない。
「ヒトマル」という読み方に象徴されている自衛隊(ミリタリー)感覚は受けそう。それも、それを美少女たちが言う。
思わせぶりな音楽。
科学の最先端な世界で、「純粋な精神エネルギーの具象化」という魅力的な現象。
「なぜ若者たちだけがエヴァンゲリオンに乗るのか?」という俺の疑問は解かれるのだろうか。
「シリーズものは、2作めが鍵」と言われる条件を見事に達成した出来のよさ。感心。
【Q】
前作の痛快さを忘れてしまったかのようなオープニング。
謎の少年カオルの登場。カシウスとロンギヌスの2本の槍。異なる槍が必要。第1使徒と第3使徒。アダムスの器。
前作にも勝る、謎のワードのオンパレード。その中で徐々に見えてくる、人類と使徒、それぞれの誕生の歴史。第1使徒であるアダムから生まれた、第3使徒以降の使途。そして第2使徒リリスから生まれた人類(リリン)。両者は、どちらかが生存し続けるために、相争う運命だったことがわかってくる。
ゲシュタルト(統一的全体像)。西洋的な思考は、ひとつひとつ分解してよくしていくことで最高のパフォーマンスを得る、という要素分解的な考え方。
一方、東洋的な思考は、全体をシステムとみてそのバランスを調整することで最高のパフォーマンスを得る、という全体像的な考え方。
自分でも、なにを書いているかよくわからなくなってくるが、「Q」をみて感じた気持ちはこんな感じ。哲学書か。
そして...【シン・エヴァンゲリオン劇場版】
くっそおもんない
前作を圧倒
【「揺らぎ」から「より大きな揺れ」へ】
「新劇場版:序」に対して、「新劇場版:破」で対比されるのは、本来は対立していてはいけないはずのものだったり、矛盾しているものだ。
国と、その中の組織。
ゼーレとネルフ。
魚が豊かな狭い水槽は、本来は豊かであるべきなのに汚染されてしまった大海原に対するアンチ・テーゼなのか。
古い街並みに人気はないのに、電車や学校の狭い空間に人が多くいる状況と実は同じではないのか。
いや、そもそも、人間は所詮狭い世界の中でだけでしか生きられないはずだと、外界を侵食してはいけないのだと示唆しているのではないのか。
葛城ミサトの正義が、父への反発をベースにしていること。
碇ゲンドウが、カオスとの対立概念として、調和と秩序を上げるが、過度な秩序への欲求は、調和を破壊するのではないのか。
過度な開発が自然を蝕むのと同じではないのか。
近づこうとすると、離れてしまう。
碇シンジとゲンドウ、シンジと綾波レイの関係はそうだ。
序破急の「破」は、文章作法の起承転結で言えば、「承」「転」にあたるはずだが、ここでは、調和や希望を破壊する「破」であるかのようだ。
「新劇場版:序」で感じた、少年や少女が大人になる過程で感じるような戸惑いや不安が、いわゆる音楽の「1/fの揺らぎ」で、調和に近いものだったのに対して、破では、揺らぎは大きく様々なものを破壊するかのようだ。
綾波レイが、エヴァンゲリオンは心の鏡だと言う。
エヴァンゲリオンを通してしか繋がっていられないのだと。
僕達が大人になる時に抱いていたささやかな希望に立ちはだかる壁のような感じだ。
綾波レイのささやかな望みや、シンジの希望を打ち砕くものは一体何なのか。
ゲンドウが願望は自己で実現するものだ、大人になれとシンジに言うが、願望とは、どうあるべきなのか。
綾波レイを救おうとするシンジの気持ちが、なぜ秩序を乱すのか。
綾波レイを見殺しにして、秩序を維持する選択をするのか。
葛藤などなく、単一の意思の制御によるダミーシステムが全てを支配するのか。
こんなものは調和ではないはずだ。
「新劇場版:序」で、綾波レイがシンジに言う「あなたを守る」という言葉。
「新劇場版:破」で、シンジが綾波レイを助けたいと思う気持ち。
何が違うのか。同じではないのか。
シンジの気持ちは間違っているのか。
少年や少女が、これまで重要だと考えていた価値観が否定され、社会で感じる矛盾。
こうした希望を打ち砕くのが「新劇場版:破」のテーマなのかもしれない。
ミサトが、綾波レイを助け出そうとする碇シンジに向かって叫ぶ。
「自分自身の願いのために行きなさい」
渚カヲルは、シンジを救うと言う。
何をもって…。
様々な疑問は、どのようにして明らかになるのだろうか。
バージョン違いの君
シンの予習として見直した。
12年前、劇場で激怒した思い出の一本。
旧劇場版は春も夏も初日に並ぶくらいには大切な作品だったし、その後も黄瀬和哉のベストワーク、と思い込むくらいにはフェチの対象だった。
それがリメイクと聞いた時はまず耳を疑った。
序がヤシマ作戦まで、その後のアスカ登場から「男の戦い」までをかいつまんで作り直している本作。
慣らしの序はともかく、破は綾波が味噌汁作ってるあたりからもう頭に血が上って記憶がない。
冷静になって見直すと、そうかちゃんと話が振ってあったんだな、全然読めてなかったな…と反省した。
しかし冷静になって観ていても、TVシリーズと比べると(大きな流れに関わるエピソードを中心に見直した)当時のような切迫感、ギスギス感がないぶん、画面は高密度だけど味のしないガムみたい感じる。
たぶん、まったくの別物ではなく、同じシーンが違う意味に書き換えられていたりするせいで居心地の悪さを感じるんだと思う。
まるで同じタイトルの改稿されたシナリオを読んでるみたいだ。
普通は両方が映像化されることなんてないわけで、それはそれで稀有な経験かも知れない。
でも過去作の記憶がなければこっちが「正典」で、逆に旧はなんかヤなムード、シンジ君なんでこんなにいじけてるの、と呆れたかも知れない。
とはいえ、終盤はもはや空想科学というよりほとんどオカルトのような無双っぷりで、さすがに劣化しているように思えてならなかった。
起きることはほとんど同じなのに、色んな段取りを飛ばしたり意味を書き変えたせいでそう感じてしまうのだろうか。
何回も日本を沈没させかねない、人の生活が破壊されるような事態が起きているはずなのに、妙に軽い。そこは責められないが、まだ311前の世界という感じがする。
それでも、震災の2年前にあの津波を彷彿とさせるような山をじわじわ越えてくる液体描写、避難の場面を先取りしているあたり、天才の所業というのはおそろしい。
予定ではあのまま人類補完計画に突入して終わるつもりだったのかな。それがなんであんなことに…?
そこはやはり震災の直撃を受けたということだろうか。
シリーズとしても、単体映画としても素晴らしい完成度
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