百万円と苦虫女のレビュー・感想・評価
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鈴子(蒼井優)のロードムービー
東京から海へ山へ地方都市へ旅する21歳の不機嫌な鈴子(蒼井優)が主人公。弟と手紙のやり取りをしながらの旅、いくつかのショートムービーが集まったような見やすい映画です。
東京篇...鈴子の家族、コメディタッチ。
海篇...安藤玉恵さんを発見。青春映画になりそうな予感。予感だけ。
山篇...怖そうなピエール瀧さんが優しくて驚いた。アイドルになる予感。
地方都市篇...蒼井優さんは何でも出来るから凄い。恋愛が始まる。
3日連続で蒼井優さん出演作品(『宮本から君へ』、今作、『オーバー・フェンス』)を観ようとしている途中で、ピエール瀧さん出演作品を3日連続で観てしまっている(『宝島』、『宮本から君へ』、今作)ことに氣が付きました。
若い頃の蒼井優さん、可愛いかったです。
代替的自傷行為としての旅
蒼井優を主人公に据えた淡い色調のロードムービー。
主人公の蒼井優はさまざまな場所を放浪するが、行く先々で必ず男の影にまとわりつかれる。男たちは彼女に少なからぬ恋心を抱いていて、彼女もその波動を感じる。執拗に遊びに誘ってくる金髪の青年、摺りガラス越しに湯加減を訊いてくる村の若者、帰り道が一緒だという大学生。そこにはある種の危険な空気が漂っている。男たちの強い意志と屈強な身体に比して、蒼井優は意志もなければ体も弱々しい。その非対称の先に不穏な想像が頭をよぎってしまう。
蒼井優本人もそのことはおそらく承知している。それでも彼女が自分の身を危険に晒すのは、「私は自分のことなんか本当にどうでもいいと思ってるんですよ~」というある種の露悪に走ることで「何事にも動じない強い自分」なる理想像を自己催眠的に手に入れようとしているからだと思う。しかし友に裏切られ、猫を殺され、拘置所に監禁され、終いには家族との正常な関係さえ失ってしまった彼女にとって、他者を必要としない自己完結的な生存領域を確保することは喫緊の課題だったといえる。どれだけ悲惨な出来事が起きても「あーめんどくせえ」「だりい~」でやり過ごせるようになれたら、確かにまあ、楽だろう。
とはいえこれはあくまで自己催眠だ。彼女はどこまでいっても(物理的に)か弱い少女に過ぎないし、何もかもに対して等しく無痛を決め込めるほどには人間性を捨てきれない。強いフリしてほうぼうを旅する中で、痛みや悲しみは確実に彼女の内面に蓄積していく。「100万円を貯めたら次の街へ行く」というのも要するに問題の先送りだ。というか本当に「何事にも動じない」のであれば、バイト先でチョロっと優しくしてくれただけの大学生に落ちるなんてことはあり得ない。
しかし遂に彼女の自己催眠は解ける。彼氏との雲行きが怪しくなりかけていたとき、久方ぶりに実家の弟から手紙が送られてくる。そこには、弟が弱い自分を認め、そのうえで逃げも隠れもせずにイジメっ子たちと戦い続けるのだという固い決意が示されていた。そこではじめて蒼井優が涙を見せる。いささか大仰すぎるのではないかと思える泣きっぷりだが、それは悲しみや苦しみを無痛ぶって我慢してきた反動に他ならない。
こうして自傷行為の代替としての彼女の旅は終わりを告げる。彼女もまた、弟同様に自分自身の弱さを認めることを覚悟したのだ。痛いときにちゃんと痛がることができるのは実際かなり偉いことだ。
ラストシーンでは去り行く蒼井優と追いかける大学生彼氏とのすれ違い劇が演じられる。この手のジメジメと回りくどいアプローチをしてくる男にロクな奴はいないから出会えなくてマジでよかったと思う。それに、自分がどうすべきかをようやく理解した彼女なら、どこへ行ってもどうにでもなる。それを引き留めるだけむしろ野暮というものだろう。
セリフが多すぎること以外は概して良質な映画だった。それ言わんでも動きでわかるやん、みたいなところは思い切って省略してくれたほうが気持ちいいんだけどな。もっと受け手を信じてやってほしい。
蒼井優の原点に近いのか
疑似引っ越し体験
映画は蒼井優が拘置所にいる場面から始まる。 蒼井優には罰金20万円の判決が出た。 理不尽なことで前科者になったのは不幸だった。
動画配信で映画「百万円と苦虫女」を見た。
劇場公開日 2008年7月19日
2008年製作/121分/日本
配給:日活
蒼井優
森山未來
ピエール瀧
佐々木すみ江
モロ師岡
笹野高史
矢島健一
キムラ緑子
江口のりこ
嶋田久作
齋藤隆成
タナダユキ監督作品を見たのは「ロマンス」に続いて2作目。
2022年9月30日には永野芽郁が主演する「マイ・ブロークン・マリコ」の公開が控えている。
映画は蒼井優が拘置所にいる場面から始まる。
蒼井優には罰金20万円の判決が出た。
理不尽なことで前科者になったのは不幸だった。
そのことで実家にいづらくなった蒼井優は働いて100万円貯まるごとに引っ越しを繰り返す。
海辺の街では男にナンパされそこにいづらくなる。
山あいの村では、桃娘に抜擢されたが、前科が理由でそれを固持することになる。
地方都市ではホームセンターで働くのだが、
そこでも男(森山未來)との間にいろいろある。
その間に弟(齋藤隆成)は学校でいじめられ、
児童相談所に送られることになっている。
物語を通じて蒼井優は成長していくのだが、
ラストシーンはその後を描くことなく終劇となる。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
蒼井優の素朴さが良い
真似したくても真似できない生き方
ずいぶん前からお気に入りに入れたまま未視聴でした。
弟役が心くんに似てるな〜
でも年齢が違うよな〜と思ったら、
当時大活躍だった齋藤隆成くんだ!
「光とともに」の自閉症役でおったまげたのだった。(ちょいと調べたら、もう結婚していて、10代にして父親になったそう)
100万円貯まったら引っ越す。
そのバイタリティ、かっこいい。
羨ましくも、ああいうバイトじゃそうそう貯まらないでしょうけどね、現実は…
蒼井優は巧いなぁ。前に密着ドキュメンタリーですごい役の作り込み方だったので、今回もそれに違わずなんだろうな。
1回目の「好きです」のウィスパーボイスとか、すごい。
海の家のソウルメイト発言の茶髪くんが、竹財輝之助だ〜男前で芸歴長いのに埋もれてる気がする。
1980年生まれ(二黒土星の申年)は俳優が豊作。
他にも江口のりこさんとか、安藤玉恵さんとか、キムラ緑子さんとか、みなさん今と変わらない。
ピエール瀧の気持ち悪さとか、堀部さんの嫌味主任とか、みんないい味。
未来くんもプロ意識が高い役者さんのイメージなので、ピッタリの配役だったのかも。
そして、とてもいい恋でした。救いがあったのに、またかい、みたいな流れ。。
未来くんの行動は、うすうす狙いを感じながら、本音が知られず別れることになったのは切ない。
ハッピーエンドを望むわけでは無いし、主人公がふっきれてたからいいんだけど、なんかモヤモヤ、心残り。
ラストシーンは……
ラストシーンのすれちがい
鈴子がものを捨てたくらいで、刑事告訴されてしまう。百万あったのが大きかったかもだけど。なんだよ。じゃあ人の猫は捨てても罪にはなんないのかよ。情状酌量の余地ないのかね。そして町で前科ものと噂がすぐ広がる。田舎町じゃあるまいし、そんなのわかるのかね。そこらへんはなんか理解できないが、ストーリーとしては、揺さぶられるものは、あった。
鈴子が傷を負いながら、旅にでる。海の家、桃農家、そして、ホームセンター。
海の家で出会う人も温かいし、桃農家のおばあちゃんも、ピエール瀧もあったかくて、たまらん。
少しずつ気持ちを開いていく鈴子。
ホームセンターで、きびきびと仕事ができ、優しい、森山未来に恋をする。
そして、はじめて、心開き、結ばれる。
そのあたりの純愛のくだりは、いいなあとおもってしまいました。
ラストシーン。
森山未来は二股をかけていた、
金が目当てだったと思い悲しみに暮れて
街を出る鈴子。失恋だ。
と思いきやの、森山未来の本当の気持ちは違った。100万貯めさせないために金を借りていただけ。鈴子も相当不器用だが、森山未来も不器用すぎだろ。なぜ正直に話さなかったんだろう。
自転車で駅まで追いかけるが、鈴子とはすれちがい、会えず映画は終わる。
森山未来のモテキとは真逆のラストシーンだった。
それもまたよしか。
弟もよくいじめに耐えた。
そして姉の背中を見て逃げずに戦う道を
選んだ。兄弟愛にも泣かされる。
なかなかよい映画でした。
鈴子には、まだまだいい恋愛があるだろうから悲観することなないと感じられた最後だった。
しかしアルバイトで百万って、そんな簡単にはたまらないような気がするけど。
【一人の若き女性が、ある出来事を切っ掛けに”自分を知らない人達が住む”処を転々とする中で、”何があっても逃げない”姿勢に変容して行く心の様を描いた作品。】
■作品の印象
・佐藤鈴子(蒼井優)が、新しく住む処に着いた際に、全身を伸ばしてリラックスする姿が印象的だ。
彼女の事を、誰一人として知らない処に来た安堵感と開放感が身体中から、発散されているからだ。
ーCaution 以下、内容に触れています。-
・鈴子は、最初に住んだアパートメントでひょんなことで、”良く知らない同居人”の行った事を許せずに、”ある事”をする。その結果、彼女は”前科者”となる。
・彼女の両親の関係性は表面上は普通だが、実は冷え切っており、進学校を目指す弟卓也も、彼女に冷たい。だが、卓也は常に学校で苛められていた。
鈴子も地元で元同級生たちに嫌がらせをされるが、卑屈にならずに敢然と立ち向かう。鈴子の姿を見ていた卓也は、彼女への味方、接し方を変える。
◆この作品の初期設定が効果的に、後半に効いてくるのである。
◆鈴子は、彼女の事を知らない町に100万円貯まる度に、移り住んでいく。
・最初は、海が見える部屋に住み、海の家で働く。かき氷を作るのが上手く、茶髪の男性にも言い寄られるが、決して自らが築いた他人との”壁”を崩すことはない。
・次に移り住んだのは、高年齢化が進むある村である。
桃農家に住み込んで、短期のアルバイトをすることになった彼女に、同じ家に住むハルオ(ピエール瀧)は、イロイロと煩いほど世話を焼くが、基本的には優しい。
彼女が村おこしのために”桃娘”に無理に就任させられそうになった際の、ハルオが村の公民館で村人たちに言い放った言葉。
”自分たちで、やるべきことを遣らずに、都会から来た娘に押し付けるな!”
そして、彼女が村を去る際に、ハルオの母親が掛けた優しき言葉と、ハルオが手渡したビニール袋に入れた”桃の餞別”
彼らが、鈴子が”前科者”と分かっても変えない、優しい鈴子へのスタンス。
・彼女は、都会の近郊都市のホームセンターで働くことになる。彼女がアパートメントを借りた際に不動産屋で記入した保証人の名前は”佐藤卓也”である。
- 彼女が、住む土地を変える度に、卓也に送る手紙を蒼井優のモノローグが、”彼女の僅かではあるが、心の成長を表しており、良い。だが、卓也は、苛め続けられている・・。-
・ホームセンターで知り合った同じアルバイトの青年、中島(森山未來)はテキパキと彼女に仕事を教え、嫌みな上司(堀部圭亮)のあしらい方も、さりげなく教える。
徐々に親密になる二人。だが、中島も少しづつ鈴子からお金を借りるようになり・・。
- ここは、ミスリードされた・・。-
・そして、卓也も苛めっ子たちに、敢然と向かって行く。卓也からの手紙を読む鈴子の滂沱の涙。
- 彼女の手紙が、卓也にも”何があっても逃げない”姿勢を取る決意をさせたのだ。-
<タナダユキ監督の、人間を描写する優しい視点が好きである。この作品でも、様々な人間が描かれるが、真の悪人はいない。
現在の邦画界で、オリジナル脚本で全国規模の上映が出来る監督は希少である。タナダユキ監督はその一人である。
今後のタナダユキ監督の、新しきオリジナル脚本による映画の上映を、楽しみにしている。>
桃娘
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