劇場公開日 2008年7月19日

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「あ、うんこ!くっそ~~♪」百万円と苦虫女 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あ、うんこ!くっそ~~♪

2018年12月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 “かき氷を作る才能”とか“桃をもぐ才能”なんかよりも、貯金の才能が最も際立ってるんじゃないかと思える主人公佐藤鈴子(蒼井優)。アパート共同生活の失敗から人間不信に陥ったことや、自活することの証明みたいな要素もあったのだろうか。とにかく、100万円貯まったら次の見知らぬ土地へと移り住むという生活を繰り返すようになる。

 海の家では若い男に誘われるがさらりとかわし、山の村では“桃娘”に選ばれたけど辞退してしまう。他人と関わりたくないから転々としているのに、彼女の周りはどうも関わりたくてしょうがない状況になってしまうようだ。

 “自分探し”ではなくて、「むしろ自分を探したくない」と彼女は言う。しかし、生来の真面目さや必死で生きているように見えるところから、自分探しや運命の人と出会いたい本音の婉曲表現なのだろうと思われてしまう。鈴子が、普通の女の子に見えるが内なるパワーを秘めている雰囲気があることは、そのまま女優としての蒼井優の投影に他ならない。

 監督のタナダユキは『赤い文化住宅の初子』のときにどん底人生の中学生を描いてましたが、今回は拘置所に入れられ、前科者のレッテルを貼られてしまう主人公。近所の人の目や親の態度とかも、最悪にまでは至ってないのだ。だけど、彼女の弟・拓也は成績は良いが極端なイジメられっ子。ヘタすると、姉以上にヤバい状況に陥りかねないほどなのだ。一切の人間関係を断ち切ろうとする鈴子でも、拓也との姉弟愛はあったようです。

 絶妙な心理描写のある表情も多かったのですが、弟と手を繋ぐシーンと中島(森山未来)と手を繋ぐシーンがとてもよかった。自然に互いを求めるように手を触れる一瞬は、完全な人間不信ではないことを物語っている。

 人づきあいも恋愛も不器用な学生時代を思い出させてくれる映画でもあったし、世の中悪い奴ばかりじゃないと教えてくれる温かい内容。さすがにオチの部分は、自分でもそうしたであろうと考えていたから驚きはなかったけど・・・タナダユキは男心も理解してるんだな~と改めて彼女の才能を認めてしまいました。

kossy