告発のときのレビュー・感想・評価
全20件を表示
シャーリーズ・セロンきりっとしとるな
2024年7月5日
映画 #告発のとき (2007年)
イラク戦争から帰還後無断離隊した兵士
連絡を受けた父親が行方を探す中、息子の死体が発見される
父は女性刑事と真相を探るが仲間の隊員の口は重い
神経が麻痺しないと戦場では生き残れないのだろうな
真に告発されるべき罪としての「戦争」
兵士の安全を守るためには、移動中にはハンビーを停めないことが絶対条件だったのかも知れません。
しかし、結局は、不意に道路に飛び出してきた子供がいても、ハンビーを停めてはならないという「不条理」が、マイクの心をねじ曲げてしまったことはには、疑いがないと思います。評論子は。
負傷した捕虜(敵兵)の傷に指を入れて抉(えぐ)るという虐待的な行為を平気でするようになり、ドク(ドクター=医者)というニックネームをもらうようになったり。
そういう心の傷は、マイクを殺害した、かつての戦友も同じことだったのでしょう。
よほどの怨恨関係でもない限り、42箇所…骨に残った傷痕から推測しても42箇所以上も刺して殺害というのも、平常な精神状態であったとは、言えないだろうと思います。
帰還兵は、そういう心の傷を、麻薬や、ストリップ・バーに出入りしたりすることでしか慰めることができない…。
「名作」といわれた『デイア・ハンター』でも、同じような背景が描かれていたと思います(同じく銃器を使うといっても、片方は健全なスポーツ・娯楽としての使用であり、もう片方は、まるで狂気としての使用である、その対照と矛盾)。
そういう「戦争」というものは、紛争解決の手段としても、もはや告発されるべき時期に達しているというのが製作意図だったのではないでしょうか。本作の。
主演のトミー・リー・ジョーンズの濃厚な演技とも相俟って、充分な佳作であったと思います。評論子は。
改めて、シャーリーズ・セロンはいい女優だと思った
マイクという名の由来を知ってるか?・・・実は父さんがカラオケ好きだったんだよ・・・
インドネシアの国旗を逆さまにすればポーランドになりますが、日本の国旗を逆さまにしても何も起こりません・・・星条旗を逆さまに掲げて“救難信号”を意味するんだよ、というウンチクから始まり、旧約聖書やコーランについてまで博識ぶりを発揮する宇宙人トミー・リー・ジョーンズ。彼が演ずるハンク・ディアフィールドは軍人一家の長。陸軍出身、軍警察を経験と、刑事シャーリーズ・セロンも舌を巻くほど洞察力も鋭い男なのです。
空軍で墜落死した彼の長男デヴィッドの名もやはり“ダビデとゴリアテ”からつけられたのだろう。原題となっている“エラの谷”にて勝ち目のない怪物ゴリアテに戦う許可を与えた王の話をセロンの息子デヴィッドにベッドで聞かせるところは印象に残ります。軍人である父親に憧れて兵士となった次男マイクに対する父親と母親(スーザン・サランドン)の考え方が違うところも興味深いところ。“親子の愛”というよくあるテーマに思わせておいて、戦地に若者を送る罪についてのメッセージを残すのはさすがポール・ハギスと唸るばかり。しかも子どもに言わせるなんて憎い憎い・・・
基本的には、息子マイクが行方不明となり、やがて焼死体となって発見され、女性刑事の協力も得て独自の捜査をする、というミステリーの形をとるプロット。厳粛な退役軍人という主人公であるため、兵士を英雄としてとらえているのですが、『戦火の勇気』だとか『英雄の条件』などといったアメリカ万歳映画ではなく、むしろ『地獄の黙示録』のように狂気にかられ人間性を失っていくものだという、戦争の現実に打ちのめされる内容になっています。
また、イラク戦争が間違っているなどというメッセージより、もっと恒久的な何か、全ての戦争に対して訴えかけているように感じました。小さな子どもに言わせている点、逆さまの国旗、エンディングに“子供たちに捧ぐ”と書かれていたためかもしれません。
意外と面白いのが、トミー・リーが素早くベッドメイキングをするシーンが何度もあったところ。息子の凄惨な遺体と対面する表情よりも印象に残りました。そして、シャーリーズ・セロンの化粧がスッピンから徐々に濃くなって、美しさも変化するところが・・・それに管轄違いでグダグダしてる中で「正しいことをする」と意志の強さを見せるところで惚れ直してしまいました(相手にされないけど・・・)
あの涙はどこに
モヤモヤ感を残ります
見た後は複雑ですっきりしないモヤモヤ感が残ります。でもそれこそがこの作品の意図のような気もします。
終盤まではサスペンス要素の強い内容で、それはそれで引き込まれるものがあります。ただよくある推理やどんでん返しがこの作品には用意されていません。(それがある意味で予想外とも言えるが)
様相が変るのは供述が出たところから。真犯人はあっさりと明かされます。
そこからこの映画は何を見せているのか?一度は父に助けを求めながらも息子は戦場で父の知る息子ではなくなっていった。誇らしい息子として単純に終わらず、でも責められない。では何が悪いのか、を終盤で問いかけているような、モヤモヤ。
誰もが犠牲者だった。
信念のおハナシ
帰還兵が焼死体で発見された。その殺人の裏に潜む真実は…
5年前アメリカで起こった実話を基にした、これは「信念」のオハナシ。
ただただ自分の信念を貫き、ひとり淡々と息子の死の真相を追う主人公にトミー・リー・ジョーンズ。
あまり俳優の名前を覚えないオイラだけど、あれだけたくさんの作品で存在感を振りまいてる俳優となれば、顔と名前くらい一致するよ。
「渋い演技するよ」とか「さすがアカデミー俳優!」とかよく聞くけど、そんな情報いらないね。
そんなの、見て感じればすぐに解かる…それに尽きると思った映画だった…凄かった。
どうしても犯罪絡みの作品だと、謎解きとか陰謀や攻防のハラハラ感を求めてしまうオイラなので、その視点で見てしまうと正直ちょっとモノ足りない感は否めない。
だけど、うぅん、これは「信念」のオハナシ。
人間はここまで強くなれるのか?
そうまで強くなる必要はあるのか?
貫いて辿りつた、そこに救いはあるのか?
真相を暴く事だけが正義なのか?
…ズシリと響いた。
この監督は
史実を基に映画化するのは困難でしかも作品自体の質を上げるのは難しい。この作品の監督ポールハギスはそれをやってのけている。この作品、告発のときを観ようと思ったのは監督がポールハギスだったから。アカデミー作品のクラッシュの監督だったから。
作品自体は大変テーマが大きく今の現代世界に訴えるものがふんだんにあり、特に戦争。今までも戦争風刺作品が沢山あったが、どれもストレートが多く、勿論ストレート作品も伝わるがこのような変化球的な作品も心にくる重みも強い。
そしてこの作品にはもうひとつ、警察のずさんなあり方も描いている。ポールハギスは実に撮り方や伝え方が上手く次の作品も本当に楽しみである。
残念なのはトミーリージョーンズの機械的な演出面ぐらい。史実を基にしてるだけあって最後のひねりもないがこの作品はオススメです。
戦場ではないのに・・・
ダビデとゴリアテ
退役軍人ハンクはイラク戦争から帰還後失踪した息子マイクの悲惨な死を知り、真相を追ううちに携帯電話が一つの手がかりとなる。戦場という場面にはおよそ最もふさわしくない存在の携帯電話、それは現代の我々にとって最も身近なもの、日常的なものの象徴でもある。
軍隊で訓練を積んできたとは言え、20年余りを現代社会の中で育ってきた若者が、いきなり殺すか殺されるかの戦場に送り込まれる。そこで立派な兵士になるため、というよりは何とか生き延びて帰国するためには、自分の中の日常的なものを取り壊していかなければ耐えられるものではないのだろう。
帰国兵の多くは心の闇に怯えPTSDで苦しみ、社会に適応できずに苦しんでいる。その一面で家族への愛、戦友の家族への思いやりも持ち続け、戦争体験はかくも人の人格を断片化させるのかと思う。
ハンクは徐々に真相へと近づいていくが犯人に対する憎しみを通り越して、この国の未来は大丈夫なのかと問いかけてくる。
自由や平和のための戦争と言う大義名分のウラで一体何が起きているのか、Elahの谷でダビデは恐怖に打ち克って巨人戦士ゴリアテに一人挑み、石投げ器の一撃で倒してしまう。
今我々が勇気をもって挑まなければならない「巨人」とは何なのかを考えさせる作品でした。
深く重い。そして切ない。
かなりの陰謀があるようなイメージを振りまいたいましたが、実際は違っていて、ガッカリ。
確かに父親ハンクを演じるトミー・リー・ジョーンズの演技がすばらしいです。息子を信じ、ひたすら真相を探す寡黙な父親のなかに、親子の絆の強さや信頼をたっぷり感じさせてくれました。
この作品をそこに着地せず、宣伝ではかなりの陰謀があるような先入観を植え付けていることが大きなマイナスと言えます。なので、ジョーンズの演技に感動しつつ、結末には、ガッカリ。
予告編でチラリと映っていたとおり、星条旗を逆さにあげてみたり、何とかお上にもの申したいののでしょう。ハギス監督は、なにかを告発したいだろうけれど、ちょっと待って下さいよ。これって、あんたの息子が悪いからだろ~って、父親ハンク言ってやりたくなりました。陰謀でなく、自己責任でしょ?これってね。
といっても、ポール・ハギス作品は好きで、欠かさず見ています。
今回は、ちょっと残念!
ものすごく細かいパズルのようなシナリオだから、油断すると重要シーンを見落として、置いて行かれます。
くれぐれも体調を整えて、画面に集中できる体制で、鑑賞してください。
もう一回見れば、違ってくるだろうとは思いますね。
「ミリオンダラー・ベイビー」「クラッシュ」が好きな方に・・・
大事なのは真実を暴くことではない
全20件を表示