劇場公開日 2009年9月19日

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「たぐいまれなる失敗作」カムイ外伝 かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0たぐいまれなる失敗作

2009年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

自ブログより抜粋で。
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 なにはともあれ脚本がひどい。
 もともとハチャメチャなコメディタッチを得意とする宮藤官九郎の起用が裏目に出ている。というか、内容を考えるとなんで彼が起用されたのか、はなはだ理解に苦しむのだが。
 枝葉のところで笑いをとるコメディと違って、この映画はきっちり芯を通し、非情な闘いの中で生きることに執念を燃やすカムイの姿を骨太に描くべきじゃないのか。
 やりたいことなのか、原作からかいつまんだエピソードなのかは原作未読の自分にはわからないが、いろんなエピソードが空中分解してて、まとまりがないのよ。
 横暴極まりない藩主とか、幼なじみの追っ手とか、逃げ延びた漁村での色恋沙汰とか、どれもこれもが中途半端。因縁めいた繋がりを見せて、なんとか筋を通そうとしている痕跡がかえって痛々しい。

 オープニングの、劇画とちょっとしたアニメーションを使った物語の背景紹介からして少々くどい。
 迫害を受けた幼少期の紹介には実写の回想シーンも使われるが、それはカムイが忍の世界を選んだ過去であって、それよりもカムイがその忍の世界を抜け出すきっかけとなった、嫌気が差したという意に反した理不尽な殺戮というのをちゃんと見せるべきじゃなかったのか。
 回想シーンに出てきた幼なじみとの対決がそういう意味合いだったのかもしれないが、まるで効果をあげていない。抜忍になった後ではその提示としては順序が逆だし、なんだかチョイ役との寄り道ぐらいの印象しか残さないんだもの。

(中略)

 最後にこれだけは誉めておくが、俳優陣の演技は、主役の松山ケンイチを筆頭に、皆お世辞抜きに素晴らしかった。
 これはその演技を引き出した崔演出の賜物でもあるんでしょうが、特に佐藤浩市や伊藤英明、小林薫あたりは、こんな演技もできるんだって驚くくらいにイメージが変わる熱演。
 これも演出がいいんだろう、チョイ役でしかない土屋アンナも強烈な印象を残す。
 『女の子ものがたり』(2009年、監督:森岡利行)での好演が記憶に新しい大後寿々花も負けてない。

 ただ、結局この脚本ではそういった好演、局所的には目を惹く好演出がすべて空回り。
 場当たり的な見せ場ばかりで、お話的にはダラダラと展開される散漫なもの。
 カタルシスや感動の涙といったおよそ娯楽映画として楽しめる要素はまるでないというたぐいまれなる失敗作。

かみぃ