「メリハリのきいたいい映画」おくりびと アマポーラさんの映画レビュー(感想・評価)
メリハリのきいたいい映画
メリハリのきいたいい映画だ。「納棺師」に対する世間の誹謗、偏見、軽蔑をまずは画面いっぱいにあふれさせた上で、それを感謝や尊敬や感動へと変質させてゆく過程を自然な形で描いている。そうした全てのうねりをかいくぐって来た人物を一方に置き、全てが初体験の人物をもう一方に据えることで、超越と相克の様相を対照的に浮かび上がらせている。
小道具や飛び道具もいい。硬い干し柿が笑いを誘う。石ぶみもいい味をだす。ドタバタも少々だと疲れない。「とめお」という「女性」も気になる(しかし、その名前の持つ朴訥な響きは、アカデミー賞の審査員たちには全く伝わらなかっただろうな)。
人の死を前にして初めて顕在化する親子関係の機微や人間模様を巧みに織り込んでもいるが、ただ、特別な深みを持った映画に仕立てようとの意図はないのだから、火葬の看守にわざわざ「ここは門です」とか「私は門番だ」とかとクサい台詞を言わせる必要はなかった。
コメントする