アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 : 映画評論・批評
2008年2月5日更新
2008年2月16日よりシネマGAGA!、シネカノン有楽町2丁目ほかにてロードショー
アニー・リーボビッツの歴史は見えても、本質は見えてこない
アニー・リーボビッツの写真は絵画的である。被写体の本質をひとかけらだけ引き出し、小道具を使って再構築させ、およそ自然とは程遠い絵を作るにも関わらず、人物の本質はより浮き彫りになる。このリーボビッツならではのユニークな写真を一挙に、しかも巨大なスクリーンで見られるのはかなり貴重なチャンスと言える。しかも写真の裏側を、彼女と被写体であるスターの両方が解説してくれるのだ。膨大な写真の数々から、アメリカの時代が見えてくるのも興味深い。
しかしそういった時代の流れ、写真の裏側、リーボビッツの歴史は見えてきても、自身についてはワーカホリックでエネルギッシュだという側面しか見えてこない。監督が実妹なのが裏目に出たのだろう。取材対象者への貪欲な好奇心がなく、身内だからこそ本人が語りたがらない領域にずうずうしく踏み込んでいくこともない。だから恋人であった女性批評家スーザン・ソンタグについても、2人の関係を語るのは周りの人間で、彼女自身はエピソードを多少話すだけだ。子供たちについても、映像がたくさん出てくるわりに詳細がわからず、養子をもらったのだろうと想像するしかない。そういった個人的な点をやんわり避けていてはリーボビッツの本質が見えてくるはずがない。もっと彼女の内側に近づいてほしかった。
(木村満里子)