劇場公開日 2008年4月26日

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アイム・ノット・ゼア : 映画評論・批評

2008年4月22日更新

2008年4月26日よりシネマライズ、シネカノン有楽町2丁目にてロードショー

ボブ・ディランの“多人格”を6人のキャラが演じ分ける巧妙な作劇

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ひとりの人物を6人の俳優に演じ分けさせ、複数のキャラクターを構成させた手法が絶妙だ。時代ごとにさまざまな側面を見せた天才ボブ・ディランという人物はそもそも“多人格”であるからだ。

ホーボー(貨物列車にタダ乗りする放浪者)のように放浪する幼少時代は「ウディ」という黒人少年(マーカス・カール・フランクリン)、天才詩人ランボーのような才能のきらめきを見せる青年時代は「アルチュール」(ベン・ウィショー)、プロテストソングを歌う伝道師的時代を「ジョン“牧師”」(クリスチャン・ベール)、ジョーン・バエズとおぼしき女を愛した男は「ロビー」(ヒース・レジャー)、マスコミの寵児になりながらもフォークを捨てた“裏切り者”は「ジュード」(ケイト・ブランシェット)、初老のディランは「ビリー」(リチャード・ギア)と、6つの多人格が重なり合う。

ディランは西部劇「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」に主演していたりするので、それぞれの“偽名”にも意味があって興味深い。マーティン・スコセッシ監督のドキュメンタリー「ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム」でディランの実像をたどると、面白味は倍加するだろう。特に、観衆から「ユダ!」呼ばわりされる時代のブランシェットの演技は、6人の中でも群を抜いている。

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