劇場公開日 2008年11月15日

「笑顔で“サムアップ”して帰ろう。」ハッピーフライト いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0笑顔で“サムアップ”して帰ろう。

2008年11月8日

笑える

楽しい

興奮



 誰が主人公ではなく、誰もが主人公で、誰もが大事。
 随所に笑いを散りばめ、飛行機が離陸し、無事に着陸するまでを、
 群像劇的に描き、見事に、キレイすぎるくらいに収束していく。

 舞台は多くの飛行機が飛び交い、
 大勢の人々が出入りする巨大な空港。
 ホノルル行きの1980便に関わる人々の物語。
 機長昇格への最終訓練である、乗客を乗せた状態で実機の操縦に臨む
 副操縦士・鈴木和博(田辺誠一)と、その試験教官として同乗する
 威圧感バリバリの原田教官(時任三郎)。
 初の国際線フライトにビビッて空回りの新人CA斎藤悦子(綾瀬はるか)と
 CAたちが恐れる鬼チーフパーサー山崎麗子(寺島しのぶ)。
 乗客のクレーム対応に追われ、限界を感じている
 グランドスタッフ木村菜採(田畑智子)。
 離陸時刻が迫り、必死にメンテナンスを行う若手整備士(森岡龍)と
 ライン整備士(田中哲司)。
 時代の流れについていけない窓際族の
 ベテランオペレーション・ディレクター高橋昌治(岸部一徳)。
 ディスパッチャー、管制官、バードパトロール(ベンガル)…などなど。
 1回のフライトに携わる多種多様なスタッフたちの使命はただ一つ、
 飛行機を安全に離着陸させることである。
 そして、その日も何とか定刻に離陸し、
 そのままホノルルまで安全運航で行くはずだったが…。

“ウォーターボーイズ”では野郎のシンクロを、
“スウィングガールズ”では女子高生のビッグバンドジャズを、
 想像するだけで面白そうな題材を過去2作で描いた矢口史靖監督が、
 飛行機にどれだけ多くの人々が関わっているか、
 飛び立ち着陸するまでをANAの全面協力を得て、
 それぞれの部署へ取材をし、ネタになりそうなエピソードを繋ぎ合わせて
 作り上げたような作品。
 他の作品は観た事がないんだけど、
 ドタバタの作品も手掛けてるようなので、
 ハッピーフライトは集大成的な作品とも言えるのかな。

 チラシや、サイトでもか、目立ってるのは綾瀬はるかと田辺誠一なので、
 主演と思っちゃうかもしれないが、
 僕もそう思っていて軸なのは間違いないんだけど、有名な役者も、
 それなりの役者も、多くの役者たちが満遍なく役割を与えられ、
 笑いを取る事を求められていて、僕が笑えなかったのは、ほんの少しで、
 ほとんど外さなかった。

 それはいいけど、ANA的にはどうなんだろうか、と思いながら観てたよ。
 ANAの協力があってこその映像というものもあり、
 飛び交う言葉が意味不明で、またそれがリアルでもあり、居そうな客や、
 起こりそうなトラブルも山盛りで、全く飽きないで、
 目的がしっかりしてるので、各々の人物描写は薄味と言えなくもないが、
 多くの登場人物が居ても散漫になることはなく、楽しめますが、
 CAが大変な仕事であることは分かっていても、あんな描き方したら、
 作品の中の学生さんみたいになるかなぁと、思わないでもないし、
 後半の展開については、飛行機が嫌いな人は余計に怖くなるか、
 あれだけ多くのスタッフが支えてくれているのなら、頼もしいと思うのか、
 笑いには満足しても、その辺はどっちが多いのか気になります。
“ハッピー”フライトだったなと、思える人が多ければいいですな。

 訓練生だけど“ドジでのろまなカメ”や“ロッカー”なCAが居なくても、
 食いしん坊は居る。綾瀬はるかは素晴らしいボケをかましてくれる。
“ぶっちゃけるパイロット”が居なくても、冷や汗かきまくりの副操縦士と、
 笑顔が素敵な教官は居る。田辺誠一と時任三郎の漫才も面白い。
 そう言えば、グウィネス・パルトロウの
“ハッピー・フライト”もあったな。まぁいいか。
“子供の誘拐”がなくても、“ハイジャック”されなくても、
“大統領専用機”じゃなくても、“蛇”が出てこなくても、
“囚人専用機”じゃなくても、十分笑わせてくれて、
 ANAの全面協力なので、酷いことにならないのは分かっていても、
 ハラハラさせてくれて、満足。でも、少し正露丸が引っ掛かる。

 しっかり伏線を張って元々あの回収だったのか。
 思い返せば“におい”のキーワードが出てきて、
 すぐに登場しても良さそうなのに、結構時間が少し経ってからの登場。
 そして、転がるビンを見て、そのビンを使えてそうなシーンもあったのに、
 元々はもっと早く登場してたんじゃないのか?と思ってしまう。
 それが一笑いだけで終わっちゃったのが、
 それこそイメージダウンになるような使い方で、
 ストーリー的に削れない使い方で、
 テレビ局が絡んでてテレビ放送はありきなのに、カット出来ないよ~と、
 お偉いさんのダメ出しがでたのか、
 監督の大人な対応だったのかなぁと、正露丸で妄想しておりました。
 そういう意味では、スタッフたちの描き方に「大変なんだよ」という
 皮肉は込められている部分もあるけど、
 チラリとJALの機体も映ってたりして、
 もっと毒がある話でもあったのかもしれない。

 あと更にどうでもいいけど、「くさっ」という観客の表情よりも、
 その後に散乱してる正露丸を映したときの方が、
 会場の笑いが大きいのが不思議だったな。
 そんなの分かってるよ、じゃないのか。

 何故かカタルシスはそれなりなんだけど、
 そんなにハッピーな話ではないと思うんだけど、何だかんだ言っても、
 面白いものは面白く、オープニング、
 正確に言うとオープニングはCAさんの例の搭乗時説明なので、
 その後のシーンがしっかりと、
 終盤の笑いに繋がっているのは気持ちよく、
 やっぱり大いに満足しちゃったな。

いきいき