「とっても楽しく幸せなひととき」ハッピーフライト septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
とっても楽しく幸せなひととき
購読している新聞、雑誌、早いものだと、
公開の3ヶ月以上も前から撮影状況の記事が掲載。
監督の話やら、出演者の話やら、事前情報仕入れまくりの状況で、
鑑賞してまいりました。が、不思議と作品への不安はありませんでした。
☆彡 ☆彡
サイコー!!
映画館で観ているはずなのに、
それを忘れてしまうほど、のめり込んでしまいました。
「あっ、いま映画館にいるんだ」
我に返ったのは、終盤の着陸シーン。
「よしっ」と小さな声を上げて、両手を胸前でギュッと握りしめガッツポーズ。
お隣の男性の、私へ注ぐ訝しげな視線に気づき、ようやく我に返りました(苦笑)。
いやぁ、とにかくテンポがいいんですよ。
事前に、監督「作品に登場するエピソードは実体験、取材に基づく、
実話ばかり。しかも、本当はもっと入れたかったけど、盛り込みきれなかった。
まぁ、デザートがなくなるなんて、本当にはない作り話もあるけどね」と。
だから、もう笑ってしまうエピソードが次から次へとテンコ盛り。
それを、演じる役者さんも主役から1シーンしか登場しない脇役まで
実力のある有名な人ばかりなので、作品の調和に乱れは生じない。
一度捕まえたら、もう離さないぞ! というか、
いいえ、逃げませんから、とこちらから進んで捕まりたくなる。
先にも記しましたが、スクリーン越しに観ている気がしないんです。
本当に、その飛行機に乗っている、その整備作業所に居合わせている。
「臨場感溢れる」
きっと、こういうこと云うんだろうな、って鳥肌が立ってしまいました。
もちろん、笑いだけではなく、細部にまでこだわりも。
ANA各部の代表者30名からなる
“ハッピーフライトプロジェクト本部”を編成。全面協力。
主役の田辺さん。撮影前、本物のパイロットから4日間、
午前は学科、午後は実技訓練を受けた。撮影中は1日10時間以上、操縦席にいた。
だから視線や動作の所作、演技指導に当ったパイロットも唸ってしまったそうです。
制服は本物。胸に付けているバッチも本物。
そのため、記念に貰いたいと思っていた役者もいたそうですが、全部ANAが回収。
飛行機内もセットではなく、本物の飛行機を使用。
スケジュール、あくまでも飛行機を借りられる時間を中心に組んだ。
CAが飛行場を闊歩するシーン。
実は、バラバラの飛行場で撮影している。
完成試写を観た、航空業界に従事するスタッフも、
あまりの、リアルさに、感嘆の声を上げたそうです。
☆彡 ☆彡
あれこれ、綴るよりも、一言だけ。
是非、一度、映画館の大きなスクリーンにて、ご覧下さい。
フジテレビにて、土曜日21時から放送される作品を、お茶の間で観る前に(苦笑)
■ ■
【 補記 】
①TBSドラマ『グットラック』との比較
実は、前半は、なかなか馴染めませんでした。
理由は、パイロットが人間味溢れすぎていて、カッコよくなかったからです。
ただ、けっこう早い段階で、自分の誤りに気づかされます。
パイロット、たしかに憧れの職でカッコいいです。でも、パイロットも
人間なんです。カッコ悪いところもあれば、おっちょこちょいなところもある。
田辺さんだから、それができた。
田辺さんだから、この作品にここまでのリアルさを与えられたのだと。
ただ、カッコいいだけの、木村さんには、この役はできないでしょうね。
②リアルさと非リアルさ
実は、レビューにもチラッとふれましたが、
リアルに見えて、実はリアルではない。矢口監督らしい、お遊びのシーンもあります。
それは、デザート以外にも、チラホラと。でも、すごいのは「実は○○はありえない」
教えてもらえるまで、違和感をまったく覚えないこと。2年間かけて100人以上の
航空関係者へ取材をしたそうですから、それも納得です。感服しました。
もっとも、それだけ、力を注ぎ、苦労もされたようですから、
「もう、当分、飛行機の映画は撮りたくない(苦笑)」
矢口監督が、漏らされた言葉を、最後の締めとさせていただきます。