劇場公開日 2008年10月4日

「【孤独な天才数学者の法的には許されない”無償の献身・・”但し、彼の母娘を持っての行為は、心に沁みるのである。】」容疑者Xの献身 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【孤独な天才数学者の法的には許されない”無償の献身・・”但し、彼の母娘を持っての行為は、心に沁みるのである。】

2022年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

悲しい

知的

難しい

ー ガリレオシリーズは全て読破していて、映画も三作とも、鑑賞している。だが、今作の鑑賞履歴がこのレビューサイトに無い事と、一昨晩鑑賞した、私がとても面白いと思った最新作のレビューが比較的芳しくなった、というか”今作と比較して・・”という感想が多かったからである。
  非常にツマラナイ理由であるが、本心は、今作の細部が思い出せなかったからである・・。-

■花岡靖子(松雪泰子)は過去を振り払い、娘の美里とふたりで質素なアパートに暮らしていた。
 その隣人である高校の数学教師・石神(堤真一)は孤独な日々を送る中年であったが、この母娘とだけは交流があった。
 そんなある日、靖子の元夫(長塚圭司)が死体で発見され、事件解明に湯川学(福山雅治)が乗り出すが…。

◆感想<概要は巷間に流布しているので簡潔に。>

・久方振りに鑑賞したが、矢張り面白い作品である。

・原作では”地味な男”として描かれた石上を堤真一さんが、抑制した演技で魅せている。

■今作が沁みるのは、天才数学者でありながら、諸事情で高校教師になった石上の屈託した想いを堤真一が絶妙に演じる姿である。
 アパートの臨家に越して来た花岡靖子と娘の笑顔に命を救われたシーンからの展開。首を括る瞬間に引っ越しの挨拶に来た二人の笑顔に石上は救われ、それ以降彼は花岡母娘の幸せを願う事で、生きる意味を見出して行くのである。

・そして、現れた靖子の元夫が現れ、花岡靖子と娘が行った事を、総て引き受ける石上の姿。
ー ここは、チャップリンの”街灯”を想起させる。
  但し、石上は花岡靖子と娘が行った行為を抹消するために、罪もない路上生活者を殺害する事で、処理しようとする。私は、今作の倫理上の瑕疵はココに尽きると思う。-

<今作は、邦画のサスペンスミステリー作品の中でも、可なり上位に入る事は間違いないであろう。但し、如何に恩ある母娘を助けるためとはいえ、路上生活者を生贄にした石上の行為は受け入れ難いと思った作品である。
 第二作、そして最新作ではそのような描写はない。
 私が、刑法及び刑事訴訟法を学んだ故かもしれないが、路上生活者の命を軽んじる描き方に違和感を持った上での感想である。>

■超一級の役者の凄さ
 ・福山雅治さんも、北村一輝さんも、全く老けていない。
 柴咲コウさんに至っては一昨晩に観た最新作のほうが、顎がシャープだし、若返っている。
 人前に立つ仕事をする方々の、プロフェッショナルな姿勢には、敬服するしかない・・。

NOBU