「ありえない、わからない、おもしろい・・・」容疑者Xの献身 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ありえない、わからない、おもしろい・・・
TVシリーズは未見のままでしたが、土曜プレミアム『ガリレオΦ(エピソードゼロ)』を何気なく見て、「おもしろい!」と思い立って映画館へと直行しました(2008年の話)。原作者東野圭吾もそうですが、主人公である“ガリレオ”こと湯川学の理系頭脳のユニークさに惹かれてしまったためです。そして、バットマンの名をタイトルから外した『ダークナイト』のように、ガリレオの名を外したタイトルに期待も抱いていました。
反面、不安といえば素人を煙に巻くような難解な兵器なんかが出てくるんじゃないかと予告編のシーンがあるんじゃないかと・・・しかし、それは冒頭だけ。むしろ物理学的なトリック解明なんてのは一切なく、重厚な論理思考で人間ドラマを探るような内容でした。こうなってくるとTVシリーズも見たくなったきましたけど、各タイトルだけから想像すると『怪奇大作戦』みたいだ・・・
湯川学(福山雅治)が主人公であることは間違いないけど、本作では湯川とは学生時代の友人でもある数学の天才・石神(堤真一)と花岡靖子(松雪泰子)が中心になっています。殺人事件をきっかけに石神の所在を知り旧交を温めるシーンが印象的で、学者肌の二人が酒を飲んでも学問を語るところがいい。四色問題も気になるところですが、「仮説、実証、真実」をとる物理学と頭の中で展開する数学という方法論の違いも興味深い。
東野圭吾が悲願の直木賞を受賞した小説ですが、「本格ミステリ・ベスト10」で1位を獲得したことに「本格推理小説ではない」といった論争も起こったりしていて、ミステリのジャンル分けにも興味が出てきました。調べてみると、観客・読者には最初から犯人がわかっていることから“倒叙”と呼ばれる手法であり、アリバイ崩しの謎解きを加味したものと言えるのかもしれません。そして、「幾何と思わせて・・・」といった台詞通りのコペルニクス的発想の転換!そんなのガリレオしかわかんない。
いやはや、泣かされました。終始暗い表情の堤真一に感情移入してしまいました。押入れに見えたコタツのコードから最後の手段は想像できたんですけど、ストーカーに思わせる行為やどこまでが真意なのか掴みづらかった。最初は高校教師なんだから安泰だろ!と羨ましく思ってしまったことを反省してしまいました・・・純粋に数学が好きだったからこそ思いつめてたこともわかり、“献身”という言葉も重くのしかかってくるのです。堤、松雪の演技は最高でした・・・
【2008年10月映画館にて】