「三国のシンフォニーが聞こえない。」レッドクリフ Part I マロピさんの映画レビュー(感想・評価)
三国のシンフォニーが聞こえない。
公開されて賛否両論の『レッドクリフ』。
三国志ファンとしては残念ながら私は「否」に評価せざるを得ない結果になってしまった。
好意的なところを見つけるとこらからして難しい。
ジョン・ウー的に全体的にエンターテインメントに徹したと言えば聞こえはいいし、唯一の好意的な点なのだろうが、これが、ずっとやりたかった『三国志映画化』と言うのであれば、ジョン・ウーも終わりだ。
否定的な見解を挙げればキリがない。
冒頭のシークエンスからして、兵士に気迫が感じられず(これが観てて本当にツライ)、槍をパシパシ叩く戦闘で、観てて萎える・・・。
武将はカリスマ性を出す演出なのだろうが、キモは武将に丸投げでは、兵団や陣形を説く意味が無い・・・。
そして、本作で最も致命的なのは、三国志の魅力ある武将たちがまったく輝いていないことだ。
特に、呉・蜀を『善』とみなすこの作品の構図からして『悪』である魏の棟梁である曹操の魅力がまったく無い。これは本当に致命傷だ。
ただのイメクラ好きのエロオヤジと化しており、こんなやつに身を賭して戦う必要があるのか、周りの武将もアホか!と言いたくもなる。曹操を魅力ある悪役にしてこその三国志演義だろう。近年では「蒼天航路」などで曹操の魅力は再認識されているが、ここまで美しく書かなくとも、曹操は、三国志においては「スターウォーズ」における『ダース・ヴェイダー』なのだ!!ヴェイダー卿のいない『スターウォーズ』なんて・・・。
魏軍も総じて魅力ある武将に恵まれているはずなのに字幕で軽くあしらわれる始末・・・(特に張遼。)
少なくとも、世界で多くのファンを持つ三国志の映画化として考えるには相当お粗末な結果になってしまったことだけは断言できる。
パート2でどこまで巻き返せるかだが、予告編を見る限りでは曹操に変化はみられそうも無く、展望は暗い。