「ファンタジーにはジョニー デップ」アリス・イン・ワンダーランド DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーにはジョニー デップ
映画「アリス イン ワンダーランド」、原題「ALICE IN WONDERLAND」を 3Dで観た。
監督:テイム バートン
原作:ルイス カロル「不思議の国のアリス」1865年
「鏡の国のアリス」1871年
キャスト
アリス:ミア ワシコウスカ
帽子屋:ジョニー デップ (MAD HATTER)
レッド クイーン: ヘレナ ボンハム カーター
ホワイト クイーン:アン ハースウェイ
笑う猫:(声)ステファン フライ、マイケル シーン
芋虫:(声)アラン リックマン
ストーリーは
6歳のアリスは 夢ばかり見ている子供だった。夢の中には 笑う猫や、青い芋虫が出てくる。それを大好きな父親に話して聞かせると アリスの想像上の生き物の話を父親は静かに 優しく聞いてくれる。そして、もし夢を見ていて 怖くなったら いつでも逃げておいで。そのときは 腕をつねったら 目が覚めて怖いものは みんな無くなってしまうよ というのだった。
19歳のアリスは最大の理解者だった父親を亡くし 領主のお城で行われるパーテイーで領主の息子からの婚約の申し出を承諾することになっていた。たくさんの賓客の前で、アリスは領主の息子から 膝まずいて婚約を申し出られる。でも、アリスはそれを承諾して他の女達のように 貴族の退屈な生活に入る気には、どうしても なれなかった。アリスの一挙一動が注目される中で、進退窮まったアリスは 突然そこに現れたウサギを追って、森に逃げ出してしまう。
その時計をもった奇妙なウサギを追って アリスはウサギ穴に落ちてしまう。落ちた先は 小さな部屋で、そこに小さな小さなドアがあった。テーブルの上の飲み物を飲むと アリスの体は小さくなって キーでドアを開けてみると そこは 不思議な森の中だった。
時計を持ったウサギ、水たばこを吸う青い芋虫、消えてしまう笑う猫、双子のテイードルデイーとテイードルダム、みんな アリスが子供の時に夢で見た生き物だった。山高帽の帽子屋にお茶によばれ テーブルにつくと、見るからに恐ろしげな 専制君主の将軍がアリスを捕まえにくる。帽子屋の機転で アリスは小さくなってテーポットの中に隠れる。
この世界では 暴君 赤の女王が専制政治をしている。彼女の予言書には アリスと言う名のものが 赤の女王の守り神である怪鳥を殺して国を滅ぼす と書いてあるので、アリスを捕まえてその動きを封じようとしていた。アリスは自分を テーポットに 隠してかくまったために 双子や帽子屋が赤の女王に捕まって虐待されていると知って、赤の女王のお城に入りこんで彼らを救い出して、白の女王のところで、保護を求める。 そのために、赤の女王と白の女王は、戦争になってしまった。 アリスはやむなく、剣を手に入れ 赤の女王の守り神の怪鳥の首を落として、戦争を終了させる。
やっと不思議の世界に平和が訪れる。帽子屋との淡い恋、、、。ずっとここに居てもいいんだよ、といわれながら、アリスは城に戻る決心をする。魔法の薬を飲んで 領主の家にもどると、アリスは はっきりと婚約者に わたしは結婚しません。領主の仕事の手伝いをしたいのです と言う。貿易を通じて 海外進出を手がけていた領主は アリスの機転の利く助言を喜んで受け止めて、仕事を任せるようになっていった。アリスは新天地を求めて 新しい仕事を開拓していった。仕事のできる有能な女性が誕生したのだった。
というストーリー。
原作のルイス カロルは、数学者 チャールズ ラトウィッジ ドジソンのペンネームだ。童話のなかでも、彼の作品は難解だ。登場する生き物達の異様さ。チョッキを着たウサギ、笑う猫、タバコを吸う青い芋虫、トランプの兵隊達、これらの生き物達に 形而上的な 特別の意味があり、これらはフランツ カフカの「変身」のような比喩がかくれているのだろうか と考えてしまう。アリスが交わす 生き物達との会話も尋常な会話ではない。ややこしくて難解なクイズ、解答のない質問、何の脈絡もなく突然 アリスを冷ややかに笑ったり 物を破壊したりする、マザーグースがでてきたり、一級の皮肉や、しゃれ言葉がちりばめられている。
もともと作品はドジソンが 8歳から13歳までの少女達と船旅をしたときに、子供達に即興で 話して聞かせた冒険物語がもとだ。数学者が少女達をおもしろがらせようと、彼女達が受けている学校教育への批判や 皮肉で少女達を笑わせ、難解な会話やクイズで少女達の知性をくすぐることで、おおいに盛り上がったであろう、当時のインテリ階級の船旅の様子が想像される。
1865年作「不思議の国のアリス」と、1971年「鏡の国のアリス」二つの童話を、映画監督、テイム バートンが彼の新解釈で、映画にした。とてもわかりやすい。すばらしい。
ルイス カロルの空想世界をこんなふうに解釈できるということが 新しい発見だ。
この映画は ビクトリア時代の ひとりの女性の成長の物語になっている。アリスは 自分が6歳のときに 夢のなかで 創造した生き物達を守る為に 恐怖感を克服して戦いに挑み、勇気を出して その責任を果たした。そのことによって 自信を得て、勇気をもって自分の生きる道を歩む女性になる。おとぎの国での経験が 彼女を一人前の女性の成長させたのだ。
アリスを演じたには、オージー女優、ミア ワシコウスカ、21歳の新人だ。なかなか良い役者だ。全然笑わない。
監督テイム バートンの長年のパートナー ヘレナ ボンハム カーターが コンピューターグラフィックを使って 頭だけ倍の大きさにして赤の女王を演じている。おとぎの世界で、赤の女王の見た目の異様さと、「首をちょん切れ」とさけんでばかりの怖さとで、ピカいちに、光っている。そのとりまきたちの貴族が 媚をうるように鼻を倍のおおきさにしたり、耳や顎をおおきくしたりしている姿が笑える。
白の女王は アン ハースウェイ。この人は目も口を大きくて整った顔の美人なのに何故か ジュリア ロバーツのような華がないのは 大根女優だからなのかもしれない。
そして何と言っても、ジョニー デップ。
素晴らしい役者だ。ファンタジーの世界が、彼ほど似合う役者は他に居ない。
アリスが これは私が子供の時に見た夢の世界なの と帽子屋に言うシーンがある。「え、これは君の夢なの?」「じゃ、ボクもただの夢で本当のことじゃないの?」とアリスに問う哀しい目、、、。最後にアリスが 現実世界の屋敷に戻る決意をしたときに「ここにっずっと居てもいいんだよ。」と言ってみる 傷つきやすい男の目、、、。しんみり。
ジョニー デップが スコットランドなまりで とても良い役を演じている。この映画、彼が見たくて見る人も多いはず。
女が自立することなど考えられなかった時代に、自由闊達な想像力旺盛で正義感の強い 心の優しい少女の 成長の物語だ。とても良い。