劇場公開日 2010年4月17日

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「何気に異形差別 不愉快」アリス・イン・ワンダーランド とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0何気に異形差別 不愉快

2021年5月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

子どもには見せたくない。

赤の女王って親に捨てられたんだ。だからあんな性格になったのかな?だってアリスの思い出の中の彼女って一緒に遊べてたし。

白の女王は無責任だし、思いやりもない。

マッドハッタ―もおかしい自分を否定しているし。って、そしたらマッドハッターじゃないよ。既成概念ぶち壊して真実を観る目を開かせるのが彼の役目なんじゃないの?

原作の面白さが台無し。
無理な、ディズニーらしい教訓話になっていてなんじゃこりゃ。

この映画に出てくる人々の対人関係って怖い。
 世間体ばかりを取り繕うとする人々。
 嘘をついてまで、うわべでとりいって身の安全を図ろうとする人々。
 自分達の身の安全を図るために”予言の書にある英雄”任せの解決を望む人々。
 「自分のことは自分で決めて」と自己責任を押し付けてくる人。一緒に泥はかぶってくれない。
 「アリスは僕たちの仲間だから僕達を助けてくれる」と言えるほどの人間関係は構築される様は描きだされない。過去の訪問でそういう関係を築いたというのが暗黙の前提なのかもしれないが、この映画のベースになっている物語ってそういう話だっけ?仮にそういうことにするにしても過去の回想に出てくるのはアリスと赤の女王が一緒に遊んでいる姿だし…。

何気に社会の縮図。
 人はその人の都合のいい方についてくるって。
 おべっかつかってくる人に取り囲まれても危ないよって。
 赤の女王が言う。「愛される方がいいのかしら」即座に否定するハ―トのジャック。でも彼の本心は…。
 そんな中で自分が何を決定し何をするか。これが、この映画の本当のテーマ?

そういう社会の闇を描いた映画。それを子ども向けなんだか大人向けなんだか中途半端な描き方でファンタジーとしてみせられるから後味が悪い。
 そんな中ですぐに人の言葉を信じて真っ正直すぎるほど真っ正直に生きる赤の女王だけが切なくも可愛く思えてくる。

原作は、はるか遠い昔に読んだだけなので間違って記憶しているかもしれないけど、そういう”世間で良いとされている振る舞いや常識”をウィットにとんだユーモアで軽く(時に難解に)蹴飛ばすところが最大の魅力。
 けれど、この映画は変な英雄譚・教訓を持ってきてしまったからそのあたりのユーモアが全部台無しになってしまった。
 残念。

芋虫の声って、アラン・リックマンさんなんですね。
それとやっぱりヘレナさんの演技。あのキャラがどこか憐れみを持ったおかしみのあるキャラに仕上がってる。ジャイ子だな。
それだけがすごい。

本当はマイナス評価にしたいのだけれど、リックマン氏とヘレナさんに☆を進呈。
お二人の演技だけなら☆10個なのだけれど、上記の脚本やテーマがひどすぎる。
あと、監督の世界観の象徴でもある映像もありきたり(CGはすごいけれど)なので、☆0.5か。
いや、原作の主人公アリスを脇役にして、マッドハッターが主役と見せかけて、世間の怖さを描いて実は赤の女王が真の主役だとしたら…。でもラストの展開見るとそうでもない。
やっぱり世界観が不愉快だから、リックマンさん・ヘレナさんが素晴らしくても☆1つ。

とみいじょん