「人を決めるのは内面じゃなく、どう行動したか」ダークナイト アイダホさんの映画レビュー(感想・評価)
人を決めるのは内面じゃなく、どう行動したか
この映画本当に面白い
語り切れないから好きなシーンだけ紹介したい
互いの船にしかけられた爆弾の起爆装置を持った市民と囚人
起爆装置を押して、相手の船を爆破すれば自分たちは生き残れる
市民は囚人に恐怖するし、囚人は市民に怒りを抱いている。どちらも「相手が引き金を引くはずだ」と思っていたわけだ
そしてジョーカーは、人間は究極の状況では「自分を守るために他人を殺す」と信じていた
でも、誰もスイッチを押さなかった
内心がどうであろうと、行動のみが善悪を決める
バットマンビギンズで登場したセリフだけどこのシーンはそれを表しているんじゃないかな
「殺したくない」と言いながら殺す者と「殺したい」と思っても殺さない者どちらが善か?
答えは一つ、「行動しなかった方」
市民は「正しい側」として描かれがちだが、自らの命を守るために他人を殺すかどうかを選ばされているし、囚人は「罪人」とされる存在だが、あの場面では明確に道徳的な選択をとっている
善悪の判断は属性ではなく、行動によってなされる。「行動主義」の視点が、ここで描かれているんじゃないだろうか?
市民は実際に、誰かが代わりに押してくれれば…と願っていたかもしれない。
でも、その手を動かさなかったという事実がすべてを物語っている。市民と囚人の行動は、どちらも善だったと言えるわけよね
ここでヒーローの啖呵がシビれるんだよな。「何を証明したかった?誰もが心の奥底は醜いと?」と
ただまだジョーカーの揺さぶりは続いて、結局バットマンは悪を引き受けなきゃならなくなる
「彼はヒーローじゃない。沈黙の守護者。闇の騎士(ダークナイト)だ」
ハービー・デントが正義の象徴として死ぬことで、ゴッサムは希望を保つことができる。
でもそのためには、バットマンが「ハービーを殺した犯人」「堕ちた英雄の真実」を隠さなければならない
あえて自分が悪人になることで、ゴッサムの秩序と善を守った
内面では「正義」のために動いた
だが、社会から見れば「ハービーを殺し、罪を隠した男」
そしてバットマンという存在自体が、都市の中での「悪の象徴」として扱われていく
「正義のための悪」「善意から出た偽り」
行動によって人間は定義される
だけどその行動の意味は、常に視点によって変わるというジレンマを最後の最後で正面から突きつけてくる
何が正解で何が間違いなのか答えが出ないというか、視聴者に委ねられているんじゃないかなこれは
ダークナイト・トリロジーが何かこう、伝説じみた作品としてヒーローオタクから評価を受けているのも頷ける
……と、色々長々書いたけれども、重苦しくて暗い雰囲気のヒーロー映画が苦手な人でも、本当に面白いというか、噛めば噛むほど味が出るから、1度は見てほしい
バットポッドで闇に消えていくバットマンとエンドロール入る瞬間の「THE DARK KNIGHT」っていうタイトル回収シーンだけでもホント痺れるから
