「こんな見所満載の映画を避けていた自分が恥ずかしい。」ダークナイト kakao_2rises4さんの映画レビュー(感想・評価)
こんな見所満載の映画を避けていた自分が恥ずかしい。
度肝を抜かれたとはまさにこの事だと思った。こんな質の高い娯楽作・アメコミ映画があるのだと初めて知った。4~5つものエピソードは無理なく一つとなり、息つく間もなく観客を楽しませる。アクションやカーチェイスは最高だし、人物描写や音楽も的確。
まず冒頭から魅せられる。銀行強盗シーンは全てIMAXカメラで撮影されている。映像と音が共に素晴らしく、テンポも良いからここだけで観る者のテンションは上がる。特にIMAXシアターで観ると素晴らしさがより味わえるだろう。また、この作品では善と悪について深い問いかけが示されている。これを描写する上でジョーカーが素晴らしい。リアル志向に作られた作品な為、ジョーカーは実世界に蔓延るリアルな悪を具現化した存在となり、観客を絶えず恐怖の渦に誘いこむ。加えて単純な犯罪者のイメージとは真逆なキャラクターであり、人を狂わすような常軌に逸した犯罪を躊躇無くやる狂気を持ちながら知性と計画性も持ち合わせる。それは犯罪の節々から見てとれるだろう。善悪の真理や倫理的概念を口にする取調室の場面は、実世界に対する提言の応酬だ。知性を持ちながらも狂っている悪を究極の悪と感じるのは少なくないはず。そしてこの際立つ狂気が、人間の本質や欠陥のある秩序をリアルに描く事を可能にしている。そんな強烈なキャラクターに実在感を与えたヒース・レジャーも実に素晴らしい。
ラスト、特にエンドロールまでの4分半は、この作品において重要な部分だと思う。なぜなら場所が次々変わるにも関わらず殆どIMAXカメラで撮影されているから。莫大なコストを費やしてでもラスト4分は最高のクオリティに仕上げたかったのだろう。ここではそれまでの流れ、陰陽と空間を利用した映像表現、音楽の融合によって最高のカタルシスを得ることができる。即ち絶望に支配された世界でも平和の実現を目指す“闇の騎士”の諦めない姿勢と決断は、文字通り希望の光明となって、我々を深い高揚と感動で包み込む。全体的に重苦しい雰囲気に包まれている感の作品だが、ラストによって娯楽映画としての調和が整っている。多少の粗や雑さはあるが、本当に素晴らしい作品である。