劇場公開日 2008年8月9日

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「劇場で観る映画としては、今期一番の作品」ダークナイト 澤駿さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5劇場で観る映画としては、今期一番の作品

2008年8月4日

楽しい

興奮

知的

 かなり期待して観たのにもかかわらず、大きな衝動を与えてくれた、(マトリックス以来感じた)映画館で観たい映画の一つ。

 何が良かったのかといえば、①一見複雑そうに見える設定や内容も、その実とてもシンプルで身近に感じられた。②説明されていないシ-ンは、(見る側の)想像力で補えるものになっていた。③「悪」を(その生まれる原因から)いくつかに分類し、様々な悪に対する、様々な善が存在していることを、普通に描いていた。④空撮とロ-アングルショットが人間の許容感覚内で撮られていたので、リアリスティックな映像となっていた・・・など。

 ヒ-ス・レジャ-について。
 もし彼が、この作品の出演が原因で、クスリに依存したのであれば、たいした役者ではない。このジョ-カ-程度の役は、きっと彼にとっては一つの通過点であって、周りが騒ぐほどのことでもなかったはずだから。
 俳優は、自分の芝居によりストイックさを求めることはあっても、(まだまだ不十分であったと思うことはあっても)、それは次につながる発展性のある気持ちであるから、(自ら)死を選択するということは不自然。もっと他に原因があったと思わざるを得ない。まぁ、行き詰ったというのであればわからないでもないが、(28歳という年齢を考えると)悩みの元は複雑なガラス細工のハ-トにあったのではないだろうか。(無論、個人的な見解です)

 その他の出演陣について。
 クリスチャン・ベ-ルは、ヒ-ス以上の演技を見せてくれていた。権威のもとでの「正義」から、市民の「正義」へ移行せざる得ない状況で、自分の存在意義をふらつかせてしまうブル-ス。それは、ある意味「正義」は「悪」であると認めてしまうようなもの。さらに、恋人(「権威」と「大衆」の中間的存在)との行き違い。
 それらの(かなり微妙な)設定の中で、まさにトゥ-フェイスばりの実体のある影を全身にあふれさせていた。・・・彼の、黒目の比率が高い、あの目がそう見せるのか・・・。
 ア-ロン・エッカ-トは、そのまま。及第点。
 マギ-・ギレンホ-ルは、やや集中力を欠いた芝居、・・・役を掘り下げきれてなかった感じがした。
 モ-ガン・フリ-マンは、ものすごく光っていた。が、きっとこれは監督、クリストファ-・ノ-ランのお陰のような気がする。

 良い所ばかりで、不満に感じた点はなかったのかといえば、いくつかある。が、それはあえて、言わないでおきたい。何故なら、完璧なものならここまで感じることはなかっただろうし、(逆に)虚しさも同時に襲ってきたのではないだろうかと思うから。

澤駿