「悪には悪でしか抗えないのか?」ダークナイト しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
悪には悪でしか抗えないのか?
ダークナイト・トリロジー第2部。
DVDで鑑賞(字幕)。
原作コミックは未読。
「正義とは何か」「悪とは何か」と云う問いを容赦無く叩きつけて来る作品だな、と…。これまでのヒーロー映画では深く掘り下げて来なかった内容のように思いました。
悪の申し子・ジョーカーの仕掛ける殺人ゲームがエグい。人間の本質は悪だと語り、それを証明しようとするかのように数々の凶悪犯罪を実行に移していきました。
街に蔓延るギャングやゴッサム市警を手玉に取り、暗躍するジョーカー。その怖さたるや尋常じゃありませんでした。
バットマン自身やその仲間たちも標的となり、稀代の犯罪王子の魔手が彼らを追い詰めました。これほどの強烈な悪意を持つキャラクターを、本作のジョーカー以外に知りません。ヒース・レジャーの演技に終始圧倒されっぱなしで、新しいヴィラン像を確立したんじゃないかと思いました。
ジョーカーは常にバットマンたちの裏の裏をかき、正攻法で立ち向かおうとすると、必ずや出し抜かれてしまうと云う悪どさ。正義を振りかざすとバカを見ると云う現実を、イヤと云うほど見せつけられたかのようでした。
ジョーカーが引き起こす事件の代償はあまりにも大きく、多くの人々が犠牲となってしまいました。その結果、さらなる悪の化身が覚醒する始末。ゴッサム・シティは絶望と恐怖のどん底に叩き込まれることになるのでした。
ジョーカーを倒すためには、純粋な正義だけでは通用しないのか。ジョーカーに近い存在になるか、もしくはそれを上回る悪を身につけなければ勝つことは出来ないのか?
バットマンの苦悩が、豊潤な人間ドラマをつくり上げていました。何度も正義の価値観を踏みにじられ、己のポリシーに反する行為で戦わざるを得なくされたバットマン。ラストに待ち受けていた決断に、強く心を揺さぶられました。
どんなに善悪のボーダーを曖昧にされても、正義の可能性を信じたかった彼は、自分自身を生け贄にすることによって、ギリギリのラインでそれを守ったのだな、と…
そして彼は、闇の騎士となった。
[余談]
もはや狂気すらも凌駕する領域にいて、正義と悪に関する価値観を根底から揺さぶって来た本作のジョーカー。演じたヒース・レジャーの素晴らしさは、もはや伝説です。
本作の撮影直後に急逝されたのが残念でなりません。
もっと彼の演技が観たかったです。合掌。
[以降の鑑賞記録]
2010/? ?/? ?:DVD(吹替)
2011/? ?/? ?:DVD(字幕)
2013/? ?/? ?:DVD(字幕)
2020/07/21:Netflix(字幕)
2020/12/01:Blu-ray(吹替)
2022/11/23:Ultra HD Blu-ray(字幕)
※修正(2024/05/22)