「悪には悪で対するしかないのか?」ダークナイト しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
悪には悪で対するしかないのか?
DVDで鑑賞(字幕)。
原作コミックは未読。
こんなにも己の倫理観や正義を揺さぶって来るヒーロー映画がかつてあっただろうか。ヒーロー映画の枠組みを超えた、凄まじい作品だと思う。
初めて観た時の衝撃は未だに忘れられない。
本作のジョーカーは史上最悪だ。バットマンを翻弄し、ゴッサムの希望であるハービー・デントを闇堕ちさせ、性悪説を証明しようとするかのように暴れ回る。常に口元に笑みをたたえながら⋯
ジョーカーの仕掛けるゲームがゴッサム・シティをパニックに陥れていく様が恐ろしい。たったひとりの男に民衆は恐怖のどん底へと叩き落される。絶望的な2択を突きつけ、選択を迫る。
この選択が自分の身に降り掛かったらと考えてしまう。リモコンを捨てたフェリーの囚人のように振る舞えるだろうかと、己に問うても自信を持って出来ると答えられないのが悔しくてたまらない。
なんとも絶妙な部分を突いてくるジョーカーの狡猾さに寒気を覚えてしまう。いったい彼はどんな人生を歩み、あのような姿になってしまったのか。世の不条理をシャワーのように浴びたのかしら。
悪の化身の如き男に勝つためには、こちらも悪へと足を踏み入れるしかないのか。タイトルの回収となるバットマンの決断が、心を揺さぶる。彼をここまで追い詰めるとは、ジョーカー恐るべし。
狂気すら凌駕する領域にいて、正義と悪の価値観を根底から揺さぶる本作のジョーカー。演じたヒース・レジャーの素晴らしさは伝説であろう。撮影直後に急逝されたのが残念でならない。合掌。
[鑑賞記録]
2009/11/14:DVD(字幕)
2010/??/??:DVD(吹替)
2011/??/??:DVD(字幕)
2013/??/??:DVD(字幕)
2020/07/21:Netflix(字幕)
2020/12/01:Blu-ray(吹替)
2022/11/23:UHD Blu-ray(字幕)
2025/10/26:ムービープラス(吹替)
*リライト(2025/10/26)

