劇場公開日 2008年8月9日

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「2010年以降のアメコミヒーロー映画の概念を変えた傑作」ダークナイト オレさんの映画レビュー(感想・評価)

5.02010年以降のアメコミヒーロー映画の概念を変えた傑作

2018年4月10日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

ゴッサムシティに現れたピエロのような風貌をした謎の人物、ジョーカー。
ジョーカーがバットマンの正体を世間に晒させようと劇場型の犯罪を繰り返し、人々を恐怖のどん底に陥れる様を描いたリブートシリーズの2作目にして、10年代以降のアメコミヒーロー映画の概念を変えたとも言える傑作。

ヒースレジャーのことは全く知らない。正直死ぬ間際にジョーカーを演じたことで過大評価されてる感もある気がする。
ただ確かにこのジョーカーはすごい。
ジャックニコルソンが演じたコミカルながらも狂ったジョーカーとはまた別な狂ったジョーカーを見事に演じ、アメコミ原作映画ながら第81回アカデミー賞助演男優賞を死後受賞したことはとても有名な話の様子。

もはやジョーカーが出てるシーンがだいたい名シーンになってしまう。
好きなシーンは最初の銀行強盗前にワゴンに乗り込むシーンから最後に宙吊りになるシーンまで全て。ホントにそんな勢い笑。
真面目に言うとどデカイ車をワイヤーを用いてひっくり返され、バットモービルで突っ込んでくるバットマンに対し仁王立ちで挑発するシーン。振り向き様も完璧。

彼の素性など様々な部分が謎なのもいい。
ジャックニコルソンのジョーカーは元ギャングで実はブルースの両親を殺した張本人であるのだが、こちらのジョーカーは一切謎。
さらにいうと喋ってることも謎。彼の姿を目に焼き付けたくて必死に見ていても言ってることが抽象的かつわけがわからないため全然集中できない。
そういった意味でも狂っている。口が裂けている理由も何通りもあるのだろう。てかあれホントに裂けてるんだねメイクじゃなくて。

ジョーカーの唯一の目的としてあるのがバットマンの正義の考えを捻じ曲げてやりたいという純粋な悪意。人間誰しもが心の奥底では必ず悪意があり、それはバットマンにも存在することを証明することが彼にとっての愉しみなのである。
だから彼は何度もバットマンに自分を殺させようとする。しかし逆に自分からバットマンを殺そうとすることはしないせっかくのオモチャであるわけだから。彼にとっては全てゲームで、自分がバットマンに殺されたとしても、それは自分の勝利であるわけだから構わないのだ。
多分この部分が根本的にイかれてる楽しければなんでもいいの極致を体現した存在が彼なのだ。

ここまで散々ジョーカーを褒め殺した上に冒頭でこの映画はジョーカーの映画といってしまったがもちろんこれはバットマンの映画である。

バットマンとして悪を裁いてきた自身よりも正義の名にふさわしい存在、地方検事のハービーデントにゴッサムシティの未来を預け、バットマンの引退を考え始めるブルース。
しかしジョーカーの巧妙な罠により、怒りに身を任せてしまったハービーはあらゆる人間の罪をコイントスで決めてしまう怪人トゥーフェイスと化してしまう。
犯罪件数の減らないゴッサムシティにとって
正義の象徴であり、光の騎士と称されていたハービーデントでさえも悪の心を持ってしまったことが証明されたことによってゴッサムの人々の希望に影が指すことを回避しようと、ハービーの罪を被り逃走したバットマンの崇高なる自己犠牲の精神は従来のヒーローの在り方を遥かに超えた高みにあったと思う。
自分の存在を消すことでハービーデントの罪を被り、ゴッサムシティを守ったバットマンこそがDark Knight=闇の騎士なのであるというゴードンのセリフをバックに光に向かって逃走するバットマンをラストシーンに堂々の幕切れ。
今作のラストシーンは多くの映画シリーズの中でも史上最高クラスに素晴らしいと思う。

全体の構成として7:3くらいでジョーカーな映画ではあるかもしれないが、間違いなくバットマンの映画であるし、最もバットマンの存在定義に関して突っ込んだ解釈を提示している作品とも言っていいと思う。

ジョーカー観たさに単作で鑑賞するのも決して間違いではないが、シリーズ各作のバットマンの存在定義を知ってから観るとより楽しめると思う。
新三部作におけるバットマンの「挫折」を描いた作品。紛れもない名作ですね。

2015年07月25日(土)1回目
2016年01月30日(土)2回目@新文芸座ダークナイトトリロジー
2018年02月03日(土)3回目@ユナイテッドシネマ浦和IMAX

オレ