「いつものトムとは違う史実の魅力」ワルキューレ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
いつものトムとは違う史実の魅力
『トップガン マーヴェリック』を観て以降、以前のトム・クルーズが主演映画を再度鑑賞することが多くなっている。それだけ、彼の作品はストーリーだけでなく、彼自身の演技にも魅了される。今回は、第二次世界大戦のドイツが舞台。史実に基ずく、あのヒットラー暗殺計画を題材にした、戦争サスペンス。
第二次世界大戦でヨーロッパを恐怖に陥れたナチス・ドイツ。しかし、猛威を振るっていたナチスも、次第に戦況が不利になり、ドイツ内の上層部でもヒットラーの独裁政権に、『否』を感じる者が現れる。そして、世界平和の為にもヒットラーの暗殺を企てる者も増える中、1944年7月20日に起こった暗殺事件を、本作では描いている。結果的に、暗殺は失敗に終わるが、9か月後にヒットラーを自決に追い込む引き金となった事件の主導者である、戦地で片目と片腕を失った将校・シュタウンフェルベルクをトム・クルーズが演じている。
ナチスドイツというと、ユダヤ人の大量虐殺、ヒットラーによる独裁政権と、歴史の負の遺産として認識している。しかし、その上層部には、ヒットラーに対して嫌悪を抱く者もおり、世界平和を祈る者も存在した事を知らしめる作品となった。しかし、そこは独裁者政権下。暗殺事件までの経緯として、いかに取り巻きを同志につけていくか?緊迫感のある緻密な作戦とは?など、手に汗握る臨場感が伝わってくる。
主演のトムだが、最近はどうしても、『MIシリーズ』や『トップガン』のように激しいアクションを期待してしまうが、本作では、最初に戦闘シーンもあるものの、そちらは抑え気味。むしろ、世界平和の為に、ヒットラー失脚への強い決意と作戦を束ねていく行動力のある、実在した人物としての演技に魅了され、共感した。
というのも、現在においても、ロシアのウクライナ侵攻の主導者でもあるプーチンとヒットラーが、重なって見えたから。最近のプーチンの映像をみると、ヒットラーに通じる狂気的な様相が見られる。NATOとしては、直接手を下すことは難しい以上、ロシア内部から、本作のような声を上げていくことが、プーチン降ろしと共に、全く不易なこの争いを集結することになるのかもしれない。