「映画「天使と悪魔」」天使と悪魔 DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
映画「天使と悪魔」
超一流 第一級のスリラーというのは こういう作品のことを言うのだと思う
ダン ブラウン原作、ロン ハワード監督によるアメリカ映画 「天使と悪魔」130分を観た。
2006年「ダ ビンチ コード」に続いて ダン ブラウンによる作品の映画化。作品としては 「天使と悪魔」の方が 2000年に 「ダ ビンチ コード」が2003年に刊行されて 全世界でベストセラーとなった。
主人公は ロバート ラングトン教授。二つの作品を読み比べてみると「天使と悪魔」のときは まだ若かったからか ヘリコプターから飛び降り 空から落ちてきたり、水底に潜って溺れる人を救ったり、何度も全力疾走したり 007並みの大活躍だが、「ダ ビンチ コード」になると 少しだけ肉体派から脱却して 知性の塊となって中年教授の渋みが出てきている。それにしても、ラングトン教授の博識には いつもながら感心、感動、私は大ファン。
監督:ロン ハワード
製作総指揮:ダン ブラウン
音楽:ハンス ジマー
キャスト
ラングトン教授:トム ハンクス
カルメンゴ:ユアン マクレガー
ヴィットリア:アヤレト ズーラー
ストーリーは
ハーバート大学象徴学者のロバート ラングトン教授のところに 突然 スイスにあるヨーロッパ原子核研究所機構から 使いが派遣されて、スイスに招聘される。世界で初めて生成に成功した「反物質」が盗まれ、その「反物質」を作り出した学者が殺された。
無残にも学者の胸にはイルミナテイの紋章が焼印されていた。反物質とは 新しいエネルギーで 放射線の100倍のエネルギー効率を持つ。原子核研究所機構のセットから外されて 盗まれた反物質は 24時間以内に 研究所のセットに返さない限り 爆発する。24時間以内に回収できなかったら 爆発をくい止める方法はない。
時を同じくして バチカンに イルミナテイから脅迫状が届く。「反物質」をバチカンに仕掛けたという。何世紀も前に絶滅したはずの イルミナテイという秘密結社が ヴァチカンのローマ法王の突然死した直後に バチカンを一瞬の内に 跡形もなく吹き飛ばすほどの威力のある新型爆弾を仕掛けた。おまけに 次期ローマ法王候補のうち、もっとも有力候補だった4人の枢機卿が誘拐されており、イルミナテイはその一人一人を一時間ごとに公開処刑する という。
イルミナテイは カトリック教会に身代金を要求しているわけではない。脅迫でもなく、これは宣言であり、何世紀ものあいだ イルミナテイを迫害してきた教会にたいする復讐なのだった。
イルミナテイとは17世紀にできた哲学、科学者の間で作られた組織で、彼らは カトリック教会から迫害されて 地下で秘密組織化されたが、すでに消滅したと考えられてきた。ラングトン教授は イルミナテイの主要メンバーだった 科学者ガリレオが残した著書にヒントを得て 4人の枢機卿が公開処刑される場所を同定して、救助しようとする。反物質の生成を成功させ殺された学者の娘 ヴィットリアも一緒だ。
ガリレオは科学者だったが 敬虔なカトリック教徒でもあった。科学は神の存在を脅かすものではなく むしろそれに説得力を与えるものだと考えていたが 時の権力者 カトリック教会は ガリレオを異端者として裁き 迫害した。イルミナテイの会員のうち4人の科学者は 生きながら胸に十字の紋章を焼印されて公開処刑された。何世紀もたった今、イルミナテイは この恨みを晴らそうと、復讐にでた。
ガリレオは 沢山の著書を残しているが 科学的事実で公表を許されなかった論文や出版社に焚書されたものが多い。ラングトン教授は ガリレオの出版を禁止された著書に、ガリレオの友人で同じくイルミナテイの会員だった 作家ジョン ミルトンの4行詩が書き込みされているのを見つける。
悪魔の穴開く サンテイの土の墓より
ローマに縦横に現る神秘の元素
光の道が敷かれ 聖なる試練あり
気高き探求 天使の導きあらん
この詩に 誘拐された4人の枢機卿が公開処刑される場所が 隠されている。イルミナテイは 科学の4大元素を 一つずつ4人の枢機卿の胸に 生きたまま焼印を押されて殺す予定だ。4大元素とは 土、空気、火、水。イルミナテイは 午後8時から1時間ごとに 4人の法王候補者を公開処刑して、深夜12時には 反物質が爆発をしてバチカンが跡形もなく爆破される。ラングトン教授とヴィットリア、バチカン警察、スイス警備隊は 猛烈なプレッシャーのなかで 爆弾の発見と 枢機卿の救出に走り回る。
とびきり頭の良いイルミナテイと、時間の限界のなかで これまた天才的な頭脳と行動力を持ったラングトン教授の対決と知恵比べが ものすごくスリリングでおもしろい。時限爆弾が仕掛けられているので 刻一刻、爆発の時が迫っている。もう、気は気ではない。
法王の死去にともない 新しい法王を選出するコンクラーベ(選挙)までの間 死去した法王の秘書だった若い牧師、カメルレンゴの肩にのしかかった 重大責任と苦悩。カメルレンゴの複雑に 絡み合って解けない 法王への絶対的な愛情と憎しみ。この作品のラングトンに次ぐ 主人公カメルレンゴも、魅力的に描かれている。
読者または観客は 時限爆弾を抱えたまま 暗号を読み解きながら ローマ市内をラングトン教授とともに 走り回る。土、空気、火、水のヒントを探して 意外にもイルミナテイの会員だったベルニーニが彫刻や教会に残した意味を説き解いていく。ローマの地図を頭に描きながら 一通り市内観光をしてしまう。スリル満点。映画の完成度は、「ダ ビンチ コード」より この作品のほうが 高い。
映画を観た人は 本を読むことをお勧めする。本を読んだ人には映画を観ることをお勧めする。とにかくおもしろい。
ダン ブラウンという人、1964年ニューハンプシャー生まれで、45歳。父は数学者、母は宗教音楽家、妻は美術史研究家だそうだ。
「天使と悪魔」、「ダ ビンチ コード」に続く第3弾「THE LOST SYMBOL」が脱稿され、ことしの9月に出版される。
ワシントンを舞台に、フリーメイソンをテーマにした作品らしい。
フリーメイソンは 中世のヨーロッパでギルト社会を守る為に作られた組織だった。それが今でも続いている。チャーチルも ケネデイーも会員だった。入りたくて入れる組織ではない。世界で一番 入会審査の厳しい 今も現存する組織だ。この組織をラングトン教授が どう暴いて解き解いてくれるのか。またまた教授が どう活躍してくれるのか 楽しみだ。出版される日が 待ち望まれる。