G.I.ジョー : 映画評論・批評
2009年8月4日更新
2009年8月7日より丸の内ルーブルほかにてロードショー
気持ちが良いほど荒唐無稽な、懐かしく新しい戦い
世界の平和を守る超ハイテク装備の国際的な秘密部隊に入り、悪の組織と戦う。秘密基地に集った仲間は、寡黙な忍者や狙撃の名手で天才的頭脳を持つ美女など、個性派ばかり。対する敵も、過去を秘めた非情な忍者と美女、マスクで顔を覆った異端の科学者を揃え、まさに少年の頃に夢見た正義の戦士たちの活躍が、CGを駆使したリアルな映像で味わえる。
「そう遠くない未来」と前置きされた物語は、背景に現実味を出そうとはせず、気持ちが良いほど荒唐無稽。凝ったデザインの武器やメカが次々と登場し、破壊度は高いが血は流れない多彩でスリリングなバトルが連続する。
中でも、金属を食い尽くす超兵器ナノマイトを巡ってパリで繰り広げられるチェイスは斬新だ。特殊な装置を隠した車で激走する敵を、ハイパー・スーツを着て超人的身体能力を得た主人公たちが必死に追う。「トランスフォーマー」の人間版のような市街戦だ。エッフェル塔が、ナノマイトに侵食されて倒壊する映像も息を呑む。また、敵の秘密基地での攻防は、「スター・ウォーズ」の海中版の趣。懐かしくて新しい戦いに適度なユーモアも絡み、興奮しながらも時折笑みがこぼれる。
しかし、映像で魅せる反面、大半の装備やメカの解説はなし。日本のシーンが中国風など、物語にも突っ込み所は多い。展開にメリハリがなく、一気に突っ走るので少々疲れるが、深くは考えず、かつて胸躍らせたヒーローたちの世界を思い出しながら楽しみたい。
(山口直樹)