劇場公開日 2009年9月4日

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「犯行の動機の方が意外。手の込んだシナリオをたっぷり堪能できました。」サブウェイ123 激突 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0犯行の動機の方が意外。手の込んだシナリオをたっぷり堪能できました。

2009年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 スタイリッシュな映像。そして、59分間をカウトダウンさせるタイムリミット・クライシスな展開に加え、犯行の動機や目的が謎となっているミステリアスなストーリーに加えて、面白い点が人質事件のネゴシエーシエーターに、ごく普通の地下鉄職員が指名されることです。
 地下鉄という逃げ場のないところで、乗客を人質に取った犯人が、どうやって逃走するかと興味津々に見ていたのですが、それよりも犯行の動機の方が意外でした。犯人は、NY市から身代金1000万$をせしめることよりも、もっと高額な一攫千金をを狙っていたのです。ヒントは、犯人側のリーダーであるライダーが証券関係者であったことです。
 ライダーが犯行に至った経緯も、単に金目的でなく、NY市に対する復讐の意図も込められており、手の込んだシナリオをたっぷり堪能できました。

 ライダーに指名されたNY地下鉄運行指令員のガーバーは、どこにでもいそうなおっちゃんという風貌だったのが、後半でピストルを手にして、ライダーを追い詰めるときは、がらり変身。一流捜査官のような身構えで使命感に燃えて、ライダーを追いかけます。
 またガーバーは、とても緻密な頭脳戦に巧みでした。ライダーの質問攻めで、賄賂に関わった過去を、捜査員たちの面前で白状させられますが、そんな事にも動転せず、雑談の中から巧みにライダーの経歴など重要な情報を聞き出していきます。ふたりの駆け引きも見応えありです。
 車両も運転できる便利な交渉役としてガーバーを指名したのは、ライダーのとんだ油断だったわけです。

 ガーバーは、これまでのデンゼル・ワシントンらしくないごく普通の地下鉄職員の役であるにも関わらず、凡人らしさと事件が起きてから非凡さを巧みに演じ分けて、さすがだなと思いました。

 ライダーを演じるトラヴォルタも、なかなか魅力ある悪役に挑戦しています。ちょっとしたことで切れるたび、躊躇なく人質を殺してしまうクレージーな面を持ちながら、緻密な犯行計画も立てられるクレバーさやガーバーにうっかり身の上を、愚痴を言いながら語るという人間味を併せ持ったつかみ所のない役柄を演じきっていました。

 そしてクライシスシーンも、豊富です。59分間のタイムリミットのなかでも、人質が殺される中で、乗客の緊張が高まっていきます。ライダーは本当に全員殺しかねないという展開が、否が応でもドキドキ感を募らせました。
 猶予時間が短いため、身代金の輸送も必死です。身代金の輸送過程も、カーチェイスシーンなかなかの迫力。さらに残された地下鉄車両がノンストップで動き出すとき、乗車している人質は助かるのかも見所です。

 こんなクライシスなドラマにもかかわらず、ガーバーを気遣う妻とのやりとりは感動的でした。身代金を運ぶ役割を強制させられたガーバーは、覚悟を決めてライダーの元に向かいますが、その直前に妻に電話したとき、妻から牛乳買ってきてと頼まれ、買ってくるよと万感の思いを込めて答えるところが印象的でした。

 映像面でも、細かいカット割り、それとスローシャターで、わざと画面を流す写し方で、スピード感や切迫感をうまく表していました。

 デンゼル・ワシントンとジョン・トラヴォルタの競演する本作。ふたりとも新たなキャラで応じた本作は、ファン必見でしょう。
 タイムリミット・クライシスとして、『24』がお好きな方にもお勧めします。

流山の小地蔵