「人生の意味を考える作品」ツリー・オブ・ライフ shimashimayan1212さんの映画レビュー(感想・評価)
人生の意味を考える作品
この作品に関して,あまり頭を使って観るものではないと思いました。
強いて言うなら感性で観るというか,そういう抽象的かつ哲学的な作品だと思います。
個人的な感想としては,『無知の知』に対する議論が感じられました。
この言葉も解釈について,様々な議論があるかと思うのですが,おそらく,生きているうちに,全てのものを知り,理解することはできない,という所にあるのかと思います。
冒頭で,「世俗に生きるか,神の恩寵にゆだねるか」という話がありますが,これはまさに関連する話なのかな。
世俗に生きるならば,世の中を知り,人間を理解し,その中で特別な存在になることを目指すしかない。未来は予測するものであり,自分の手で開拓するものである。
対して,神の恩寵にゆだねるというのは,世の中で起こること全ては自分の意思でどうすることもできず,未来は予測できないが,必然でもある。だからこそ,その全てを受け止めて生きていく。
あまりうまくはまとめられませんが,そんな感じかと思います。
主人公の両親は,父親が世俗に生きようとし,母親は神の恩寵に生きようとした。
だからといって,どちらが正しい生き方か,それについてこの映画は解答を避けています。
父親は世俗に生きようして一度失敗したが,最終的に成功している。
母親は全てを受け止めながら純真に生き,神の存在を信じたが,神に息子を奪う不幸を与えられる。
どちらが幸せな人生なんでしょうか。分かりませんよね。
自己啓発に熱心な方々は,無知の知というものが自分を向上させるために不可欠なものと考えていると思いますが,おそらく”知らないままでいる”ことの貴重さに気付くことは難しいでしょう。
しかし,自分の身に大きな不幸が訪れたとき,知識のない人はそれを理解できず,また回避することも,気持ちに整理をつけることも難しい。
と,僕自身もよく理解できてはいませんが,自分の考えを書いてみました。
あまりエンターテイメント性もなく,賛否両論の作品であることは間違いありませんが,哲学的なものに興味があるなら,一度観てみてもいいかもしれません。