「監督の哲学講義。」ツリー・オブ・ライフ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の哲学講義。
多くの方が指摘しているように、なんかもう、映像がねぇ^^;
あまりに壮大過ぎて、捉えどころを失っている作品。
予告で観る限り、父と子の運命(とはいえよくある話)だけど、
天地創造のごとく、恐竜は出てくるわ、モルダウは流れるわ、
いったいどこへ視点を向ければいいのか憚られるほどの内容。
理解できるかよりも、そういう風に作ってないと思いますねぇ。
というのは、製作を兼任したブラピのインタビューを聞いて。
なんで自分のような小さな製作会社に監督が本作の映画化を
持ち込んできたのか?謎^^;に思っていたが、どうにも万人ウケ
する話ではない。だからこのくらいの規模の会社で丁度よかった、
カンヌでパルムドールが獲れたのはご褒美のようなもの。
父親役も自分以外の俳優に決まっていたのに降板、監督に言われ
代わりに自分が演じたそうだ。
ふむふむ…。もともとT・マリックって有名大学を二つも出ていて、
監督してない時は教授として教鞭もとっている。だから映画製作は
その彼が論ずる哲学論の延長、講義だと思って観てみると、あ~
それでこういう感じなのか~。って納得がいくような感じがした。
彼にしてみれば、自分が論じたいテーマを哲学的な映像にのせて、
壮大で限りない人間界のメッセージ(実は一般家庭の家族のお話)に
転化させたような、う~ん…やっぱり映像作家さんなんですかねぇ。
偉大、壮大、物語はとるに足らない(スイマセン^^;)、みたいな。
実業家として成功した息子が思い出すのは自身の暮らした過去、
横暴で支配的な父と慈悲深い母、そして可愛い弟たち。思春期に
入り、それぞれが父への反抗を胸に成長、成功への期待を背負う
父は仕事に身を投じ、子供達への風当たりは更に強くなっていく。
時を現在にした冒頭、真中の弟が亡くなったという知らせが入る。
幸福だった家族に走る哀しみの連鎖。兄と弟の絆が過去に戻って
さらに延々と描かれる…。生命誕生とか…そんな世界も含めつつ。
思うにこの一家の長である父親、確かに横暴で支配的なんだけど、
こんなん昔の父親は誰でもそうだったけどな。うちの父親もそう。
子供からすればまったく理不尽な取り決めや^^;マナーの崇拝^^;
今じゃ、バカな!?(爆)と思えるくらい子供の頃は親が怖かった。
父親を殺したいほど憎む長男の気持ちもなんとなくわかる~(爆)
それは、珍しいことなんかじゃないのだ。誰もが大人になろうと
して、親の擁護から離れていこうとする段階の、ほんの反抗心の
端くれみたいなもの。それを優しい母親が包み込み、大丈夫だよと
胸に戻すわけだ。そんな行きつ戻りつを繰り返して子供は成長する。
親が憎い。自分がその親に似ているのはもっと憎い。でも、自分が
この人の子供である事実は変えられない。良いところも悪いところも
ぜーんぶこの人を映す鏡が自分。そろそろ認めるしかない。となって、
いつの日にか父子は和解を試みる。…ここはけっこう感動できた。
愚かな父親は自身を反省する。ただ、強くなって欲しかったんだと。
賢い息子は自身を照らし合わせる。僕は、あなたに似ているんだと。
あーこれでいい。と愚かな私は思った。親子なんてこんなものだよ。
完璧じゃないから同じ失敗をする。それを分かち合えるのが家族だ。
思春期真っ只中、異性への好奇心からおかしな行動をとったり、
他人の家を壊してみたり、まったく破壊的な行動のひとつひとつが
逆に懐かしく思い出せるんじゃないだろうか。弟を失った哀しみの
その何倍もの幸せや恩恵を、今までもこれからも、享受できる人生。
エレベーターから逃避した世界で彼が見たものは偶像というよりも
過去が啓示してくれる明るい未来、運命はこう導かれるものなのか、
なんて少しは明るく捉えて前向きに生きてってくれよ!っていう弟の
メッセージだと私は受け取りたいなぁ。
悪い話じゃない。だけど万人ウケはしない。そして意味も分からない。
だけどテーマはスッと立ち上がってくるような不思議な快感を覚えた。
(感想も意味不明になってますね^^;まぁ大樹の如くノビノビと生きよ~)