「5年ぶりの新作はまさかのリブート! 背後に大人の事情があることは、スパイダー・センスがなくてもわかるぞ。」アメイジング・スパイダーマン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
5年ぶりの新作はまさかのリブート! 背後に大人の事情があることは、スパイダー・センスがなくてもわかるぞ。
2002年から2007年にかけて公開された『スパイダーマン』シリーズを新たにリブート。
冴えない高校生ピーター・パーカーは不思議なクモに噛まれたことによりスーパー・パワーに目覚め、「スパイダーマン」としてN.Y.の悪党と闘い始めるが、そんな彼の前に恐竜の様な姿をしたヴィラン「リザード」が現れる…。
監督は『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ。
主人公であるピーター・パーカー/スパイダーマンを演じるのは『わたしを離さないで』『ソーシャル・ネットワーク』の、名優アンドリュー・ガーフィールド。
ピーターが想いを寄せる女性、グウェン・ステイシーを演じるのは『ゾンビランド』『ラブ・アゲイン』の、後のオスカー女優エマ・ストーン。
製作総指揮/原作はスタン・リー。
前シリーズから引き続き、ケビン・ファイギも製作総指揮として名を連ねている。
映画の第一印象は、「おう。その話知っとる知っとる。」という感じ。
一応ピーターの両親という前シリーズにはなかった要素を描いてはいるが、その両親についての詳細は次回に持ち越されたようで、今作のみでははっきりとしない。
その為、始まってから1時間10分くらいは既視感バリバリの展開を見させられることになる。
2度目のリブート作品『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)では、流石にスパイダーマン誕生秘話をまた一からやるのはくどいと製作陣も思ったのでしょう。バッサリとオリジン関係はカットしていました。
正直、今回もオリジンはバッサリとカット、もしくはコンパクトに纏めても良かったのでは?
この映画の観客のほとんどは前シリーズも観ているでしょうに。
リザードが登場してからはようやくスーパーヒーロー映画らしい楽しさが出てくるんだけど、いまいち盛り上がりに欠ける。
というのも、本作は『スパイダーマン』らしい明るさとかコメディ要素が薄く終始シリアス。映画に抜きどころがない。
2012年といえば、モロに「ダークナイト・トリロジー」の影響が強い時代。
アメコミ映画は重厚でシリアスにすべし、みたいな風潮があったのだと思う。
「MCU」、特に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)の成功あたりから、ポップで楽しいアメコミ映画が主流になってくるわけで、『ホームカミング』もその流れを汲む楽しい作品だったのですが、本作はそうではないのです。
このシリアス路線、今観るとちょっと古いんだよね😅
『バットマン』はシリアスでも良いんです。元々がそういう作風のコミックだから。
でも『スパイダーマン』まで辛気臭くしなくても良いでしょうに。
一応スパイディらしい軽口もちょっとは叩くんだけど、滑っているというか、ただの性格悪い奴みたいになってしまっているのが辛いところ…😖
本作のスパイディってやたらとマスクをとっちゃうし、ヒロインとイチャイチャする場面が多いし…。約束は守らないし笑。
スパイディの良さが凄く殺されている気がするんだよなぁ。
多分だけどマーク・ウェブは『スパイダーマン』にそれほど思い入れがないんだと思う。
サム・ライミ版にはあった『スパイダーマン』に対する愛情というかパッションみたいなものが、本作には全然感じられなかった。
3D全盛期の作品だから仕方ないのだけれど、やたらと3D向けの過剰な演出が多いのも気になる。
「あっ、ここ劇場だと飛び出したんだろうな」というシーンを観させられると、なんとなく冷めた気分になるのは自分だけでしょうか?
3D演出に感けたせいなのか、全体的にCGのクオリティがいまいちな気もする。
出来が悪いわけではないんだけど、10年前の『スパイダーマン』よりもショボいと感じてしまった。
と、文句ばっかり言っているけどやっぱり楽しかった。
丁寧な作りなのは間違いないので、『スパイダーマン』のファンなら観て損はしないと思う。
後半のスパイディの頑張りには、やっぱり涙腺が緩んでしまいました😭
何より主役のアンドリュー・ガーフィールドとヒロインのエマ・ストーン。フレッシュで華のある名優2人のアンサンブルは一見の価値があります。
今や映画界を代表する名優となった2人をキャスティングしているのはすごい!
ソニーの青田買い能力の高さはまさにスパイダーセンスや!👏
定期的に映画を作り続けないと、ソニーは『スパイダーマン』の映画化権を失ってしまう。
しかしサム・ライミが『3』以上のシリーズ化を拒否したため、やむなくリブートしたのだとかなんとか。
だから前シリーズから5年しか経っていないのにもうリブートしちゃうという、よくわからんことになってしまったようですねぇ。
いまいち存在感に欠ける作品ではあるし、ライミ版の『1』と比べると明らかに劣っているとは思うが、まぁ悪い映画ではない。
続編への引きもあることだし、とりあえず『2』も観てみようっと。
…リザードの設定とかルックの気持ち悪さは、クローネンバーグの『ザ・フライ』を彷彿とさせる…というより完全なオマージュだと思うんだけど、その辺の真相はどうなの?マーク・ウェブ!