「ペット感覚!アップを見たら、きっとスクリーンを抱きしめたくなりますよ。しかし心ならずともホロリともさせられます。」ミラクル7号 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ペット感覚!アップを見たら、きっとスクリーンを抱きしめたくなりますよ。しかし心ならずともホロリともさせられます。
チャウ・シンチー監督といえば、はやり「ありえねー」と叫んでしまうど派手なCG合成によるアクションとドタバタに近いベタな笑いをイメージしてしまいます。
ところがシンチー監督は、突如映画に目覚めたのか、この作品ではなんと貧乏な父子家庭の家族愛でホロリとさせられるので驚きです(@_@)
母は病死。その入院代と息子の学費のために、父親のティーは休日返上で働きづめ。彼の夢は、ディッキーを立派な社会人に育てることでした。無理して私立のお坊ちゃま学校に入れたものだから、生活はカツカツ。ディッキーの靴すら、ゴミ置き場から拾ってくる有様だったのです。
どうしようもない貧乏ななかで、ディッキーは、正直に強く生きろという父親の教えを素直に受けて、いじめられているクラスメートがいたら助ける少年に成長していたのです。このふたりの関係が、時にいがみ合うこともあるけれど、とってもハートウォームに描かれていて、良かったです。
と、ここまでカキコすると、何の映画なの?と面喰らってしまうでしょう。ホント、主役のミラクル7号って、映画のコピーのように『で?ナニしてくれるの?』と叫びたくなるほど、この作品ではおまけ的存在なのですよ。
ディッキーは、宇宙から来た(・・・らしい)ミラクル7号に勝手にドラえもんのような(ちよっと、パクっていますよ!)何でも叶えてくれる特殊な能力があるものと思い込んでいたのです。
しかし現実は、全然役立たずで「使えね~」。野良犬にあっても、怯えるばかり。頭にきたディッキーミラクル7号をゴミ箱に捨ててしまうほどでした。
そんなミラクル7号の唯一と行ってもいい能力は、腐ったリンゴを元に戻すとか壊れた扇風機を直してしまうという賦活能力があったのです。
その力を発揮するとすごく消耗するようなのです。それでも終盤、ミラクル7号はピンチの陥ったティー親子のために、身を顧みず能力を使い切ってしまうのです。『飼い主』のために、身を挺するミラクル7号のけなげさに、心ならずともホロリと泣けてしまいました。まことに心外です(^^ゞ
映画として意外なほどの感動作であったわけです。だからといって、調子こいてねぇ、この作品を、いくらスピルバーグ監督にシンチー監督がリスペクトしているからといって、『E.T』に肩を並べる作品だなんて言わないでほしいです。
円盤が出てくるところの映像なんて、ベタ過ぎて笑うに笑えません。
それでも、ミラクル7号ってとってもお茶目でキュートなんです。ディッキーがのどをなでなでしてあげると、まるで子猫のようにゴロゴロとじゃれたり、子犬のようにお手をしたりします。
また、悪ガキどもの命ずるままに、怒っている顔、笑っている顔などいろんな表情をオーバーに表現して見せて、笑わせてくれました。
それに負けず劣らず、ミラクル7号と遭遇するときのディッキーの驚きの表情の多彩さが可愛く、すごいのです。この子少年と思いきや、実は女の子だったとは!さすがに1万人のボーイたちを押しのけ見事この役を射止めただけのことはあります。監督が惚れ込み、自分の養女にしてしまっただけのも頷ける天才的な演技でした
ペット好きな女の子だったら、ミラクル7号とディッキーのかわいらしさだけでもう満点、大満足することでしょう。ミラクル7号がコシをフリフリするシーンのアップを見たら、きっとスクリーンを抱きしめたくなりますよ。