「2度楽しめる!ストーリーを追いかけるだけでは、もったいない!」シャッター アイランド YuuuuuTAさんの映画レビュー(感想・評価)
2度楽しめる!ストーリーを追いかけるだけでは、もったいない!
※ネタバレあり。1度見ていることを前提に書いています。
まず、映画の内容をざっとおさらいします。
この映画は小説「ミスティック・リバー」でアンソニー賞最優秀長編賞を
受賞したデニス・ルヘインの原作を
マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオがタッグを組み製作されました。
精神異常がみられる凶悪犯が収監されたボストンハーバーの
孤島(シャッターアイランド)にある、アッシュクリフ精神病院で失踪事件が起こりました。
捜査に訪れたのは保安官テディ・ダニエルズと相棒のチャック・オール。
失踪したレイチェル・ソランドの行方を探すべく、病院関係者・収監者の取り調べを行っていきます。
しだいに明らかになる病院の陰謀。病院は精神異常者の洗脳を企てていたのです。
全ての悪事を暴くため、テディはロボトミー手術が行われている灯台を目指します。
そこで待ち受けていたのは、デスクに向かう長官コーリー。混乱するテディ。
実はすべてがテディの妄想だったのです。
失踪事件は起きておらず、レイチェル・ソランドも、テディ・ダニエルズも、チャック・オールも
架空の人物でした。
テディの正体は2年間、ここで精神病の治療を受ける患者アンドリュー・レディス。
我が子を殺害した妻を殺害した事実を受け入れられず作り上げた妄想だったのです。
捜査に訪れた保安官が実は精神病院の患者だったという大どんでん返しが
この映画の最大の特徴です。
率直な感想は、ストーリーを追うだけの観方ではもったいない、2度楽しめる映画だと思いました。
1度目は保安官テディの目線で、失踪事件の捜査を追体験し、最後のどんでん返しに驚く観方。
2度目は捜査をするテディと更生プログラムを行っている病院側それぞれの立場を理解した上で
監督がちりばめた数々の演出を楽しむという観方です。
●ジョージ・ノイスとの会話
ジョージはテディにこう言います。
「あんたとレディス。それが核心さ」「お前のために仕組まれたゲーム」
「お前は迷路に放り込まれたネズミ」
「真実を暴き、レディスを殺す?無理だね。どちらか選ばないと」と。
これらのセリフは、1度目は病院側の悪事を暴こうとするテディに対して、
すでに病院側の策略にハマっていると忠告しているように聞こえます。
しかし、精神病患者アンドリューのために組まれた更生プログラムの
一環だと述べていることが2度目に分かるのです。
内情を知ることで、会話の真意が違って聞こえるという何とも言えない巧妙さを感じました。
●冒頭、テディとチャックが精神病院へ到着したシーン
病院の入り口で拳銃を警備副隊長へ預けます。
元保安官のテディはスムーズに拳銃を渡しますが、
実際は医師であるチャックは渡すのに手間取ります。
初見ではなぜ渡すのに時間がかかっているのか疑問に思いながらもスルーしましたが、
ちゃんと意味があったのです。
また、病院の庭を歩いていると患者がテディに手を振ります。
これはテディのことを元から知っているから。このシーンも初見では見過ごしがち。
見直すことでその意味に気が付けるのです。
●不意にシーアン医師へ向かう目線
看護師とミセスカーンズがテディから不意にシーアン医師について聞かれた際、
ふとチャックへ目線が動くのです。人間のリアルな反応が描かれていると思いました。
●食堂で始めた事情聴取
患者ブリーンの事情聴取では、鉛筆を紙にゴシゴシこすり、ブリーンが嫌がりました。
テディはここの患者なので、ブリーンが嫌がることを知っていたのです。
ミセスカーンズが水を飲む場面では、飲む”ふり”をしたシーンが映ります。
これはテディのトラウマにより水に関するものが映らないのです。
●不測の事態に一瞬、患者扱いをされる
C棟にいる患者ビリングスをテディが殴るシーンがあります。
ビリングスをチャックと副長官が運ぶ時、副長官に「お前は来なくていい!」と突き放されるんです。
緊急事態だけに、瞬間的に囚人扱いをされていたように思いました。
●テディとチャックの灯台でのやり取り
テディが灯台へ向かう途中、崖でチャックと揉めるシーンがあります。
チャックの胸ぐらを掴み「付いてくるな」と凄む時、臆することなく立っているテディに対して、
チャックはふらつきながら岩場の下の方を気にしているんです。
医師ですから、こんな危険な場所に立ったことないのでしょう。
1つ1つの所作に意味がある。本当に描写が細かいです。
内容理解をした上で見ると、なおさらそれが分かります。
だから2回見る価値があるんです!
ストーリーも演出も奥深い凝った映画だと思います。
やはりストーリーを追いかけるだけではもったいない映画です。