「骨まで愛して。」ラブリーボーン ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
骨まで愛して。
そもそも題名からして「?」な印象だった。
ラブリーな骨って一体なに?不思議千万だ。
原作も知らなかったし(多分あっても読まないだろうな)
どんな話なんだ…?と怖いもの見たさは高まっていた。
だいたい予告からして衝撃的。
可愛い吹き替え声が「私は14歳で殺された」って言う。
映画批評に、やれ前向きだ。明るい。感動的だ。と
書かれていても私にはその衝撃の方が正に辛かった。
弱冠14歳で殺されてしまうのだ。親ならやりきれないx
P・ジャクソンの新作ということで、やはりその映像美が
メインに謳われていたが、壮大な天国の映像と殺人が
物語でどう絡むのか、観始めてからも想像がつかない。
大方のご意見通り、私もスッキリしない印象が残った。
それはこの物語が前半の殺人までの印象が素晴らしく、
対してそれ以降がどうにも纏まらない印象で残るからだ。
原作を知らないので何とも言えないが^^;
サスペンスドラマなのか、天国ワンダーランドなのか、
美しいのと残虐な場面が交互に描かれて居心地が悪い。
さらに遺された家族の苦悩と葛藤に対する答えがまた、
こちらの期待するものとは程遠いのも原因のひとつ。。
こんな風に何者かに家族を殺害されてしまったうえ、
未だ犯人が捕まらない現状を訴える遺族は多いだろうが、
それを乗り越えるのはこれだ…!と提示される答えが、
全編を通し、まったくもって映画向きではないのだ。
仕方ないのだろうが…なんだかとってもやりきれない。
ではどこで前向きな気持ちになろうかと考えると、
やはり主人公のスージーの視点に立ち返ることになる。
大好きだった初恋の彼と(しそこなったデートへの想い)
自分を愛してくれた家族への想い、憎き犯人への復讐。。
これらが全部出来ない。伝わらない。でも何とかしたい。
だから彼女は天国の一歩手前で立ち往生しているのだ。
自分の人生を奪われたうえ、家族や他人を見守り続ける
彼女の表情がさらに辛いが、周囲はなぜか明るい世界。
やがて彼女のある想いが遂げられるラストは、こちらから
すれば…あ、それだったのね。。的な状態にはなるが。
いかにも少女的で可愛らしくて前向きだった。確かに^^;
サスペンスの結末を期待すると肩透かしを食わされ、
感動ドラマを期待するとよく分からない展開に戸惑い、
映像美と天国のイメージがそれらを払拭するに至らず、
ただ、S・ローナンとS・トゥッチの素晴らしい演技力には
圧倒される作品だった。(母と祖母の行動はちょっとx)
犯人には法的に。被害者には骸をもって安らかに。
祈りの概念を覆すラストが映画で描かれたことが切ない。
(確かに天罰が下る。とはいいますね。下すんじゃなくて)