「正義なぞ通用しない魔界に囚われた男たち」スーパー・チューズデー 正義を売った日 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
正義なぞ通用しない魔界に囚われた男たち
事実上の大統領選となる民主党予備選の舞台裏を描く。
世論調査で優位なモリス知事の広報官スティーヴン・マイヤーズが主人公だ。
冷静かつ策士であり、細かいところにまでよく気がつく。この若き選挙参謀をライアン・ゴズリングがクールに演じる。
候補者マイク・モリスをジョージ・クルーニー、選挙運動の責任者にあたる選挙マネージャーをフィリップ・シーモア・ホフマン、対抗候補の選挙マネージャーをポール・ジアマッティが演じるなど、顔ぶれは豪華だ。
登場人物がよく整理されているうえ、馴染みの顔が多いので、ストーリーに集中できるのがいい。
話の初期設定は、選挙参謀の二人が二人三脚でモリスを有利に導き、1週間後に迫る選挙(スーパー・チューズデー)に向けて最後の攻防に入ろうとしているところだ。
その大事な時期に広報官スティーヴンがやってはならないタブーを犯してしまう。
これを機に、モリス候補絶対有利の状況が怪しくなる。
選挙に勝つという行為がいかなるものか、その裏側の駆け引きが暴かれていく。そこにはキレイ事ではすまない世界がある。
その攻防は対立する候補者だけに留まらない。それぞれに就いた者のキャリアと将来の命運が懸かっている。
各々が信念に基づき行動しながらも、損得勘定が“モラル”という壁を壊し始めていく。結局、自分が一番可愛いのだ。
忠誠を重んじる味方の参謀責任者、勝つためならどんな手でも使う対抗候補の参謀、そして戦況の変化に心が揺らぎはじめる主人公スティーヴン。はたしてモリス候補に隠された弱点はないのか?
そこに、まとまった票を動かせる大物議員の動きも加わり、その二転三転する攻防が良質なサスペンスとなって、スクリーンから目が離せなくなってしまう。
戦局を大きく変える人物は意外なところに潜んでいるもので、大きな落とし穴の口をぽっかり開いている。
最後に笑うものは誰か?
スティーヴンは正義なぞ通用しない魔界に足を踏み入れていく。