「「イーストウッドらしい映画」賞賛しつつディスってます」チェンジリング マツドンさんの映画レビュー(感想・評価)
「イーストウッドらしい映画」賞賛しつつディスってます
ロス市警の腐敗ぶりが、1928年の子どもの誘拐事件を通してあばき出される。禁酒法時代の真っ最中、シカゴではアルカポネが暗躍した頃の話、と聞けば納得できるストーリー。
クリント・イーストウッドらしく手堅いつくりの映画でした。
印象に残ったのは、いくつかの些末です。
絞首刑の一部始終を詳細に描いてあった事。首にかけられたロープの結び目が真後ろではなく、やや斜め後ろにあり、そのままつるされる場面を見ると、首の両方の頸動脈がしっかり締められ意識を失って死ぬのではなく、窒息で苦しみながら死ぬのか?などと、妙な心配をしてしまいました。衆人環視の中、つるされて足をばたつかせる死刑囚。「そのディテール、見せないかんのかな」そんな気持ちになりました。監督の意図はどこにあるのだろう?
警察署内を映すカメラワークも印象的でした。一人の人物が歩き去る姿を追いながら、別の人物がすれ違いざまにフレームインしてきた瞬間、そのままそちらの人物をカメラが追いかける。警察署管内に自分がいて、自分の目で追いかけているような感覚が面白く感じられました。2人の人物がすれちがうタイミングとカメラの動きを調整しながらの撮影が必要でしょう。いろんな場面で、撮影のテクニックが使われているのに、観客としては見逃してきただけなのでしょうか。
クリント・イーストウッドの映画は、安心して見られるのですが、本当に面白いとは感じられません。なぜでしょうか。社会的な問題も描きつつ、エンターテイメントとして巧妙に仕上げる力量には感服です。でも、わたしには何かがたりない気がする。例えば、弱者に対する理不尽をあつかったとして、でも、本当に弱者の側に立っていないような気がしてしまうのです。わたしがクリント・イーストウッドのことをよく理解していないだけでしょうか?