「人は強し。愛は強し。」チェンジリング nano-hanaさんの映画レビュー(感想・評価)
人は強し。愛は強し。
「女だな」
息子が帰ってきたという知らせに、汽車へ駆け出すクリスティン。その後ろでつぶやくジョーンズ警部の言葉。
あの頃のクリスティンは完全な母親であり、父親役という責任を背中に担いでいたと思う。
壮絶な140分。
クリスティンの行動によって動かされたドアの向こうの真実。
子供達は勇気を振り絞って事実を話し、本物の両親に会いたい気持ちに風を起こした。
「時には使うべき言葉を使わなくては。失うものがないときにね」と言うコード12によって精神病棟に監禁されたデクスターの言葉がスカッと響く。
「くそくらえ、くたばるがいい。」
怯えてばかりじゃ何も変わらない。
母親としての強さから、人間としての強さへ。
「喧嘩を売るな、最後にケリをつけなさい」
導入部でウォルターに言い聞かせたセリフがずっと彼女自身の根底にあるような気がした。
決して明るい光が差し込むエンディングではない。
この後も生涯にわたって彼女の戦いは続いていくのだけれど。
クリスティンの表情は何よりも逞しく美しかった。
確信した希望を見つけた事が嬉しかった。
街へ戻っていくクリスティンの背中にあったのは責任ではなく「希望」だった。
数年ぶり2回目の視聴でした。
1920年~30年代を見事なまでに再現し、美術や背景、何よりアンジーのファッションにいちいち見惚れること必至です。
演じているだけでも心が重くなるような役。
格好いい美しい、だけではない、アンジーの女優としての深みを発見です。