劇場公開日 2009年12月23日

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「絶景かな、衛星パンドラの大自然」アバター(2009) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5絶景かな、衛星パンドラの大自然

2013年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

興奮

総合:85点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 85
ビジュアル: 100
音楽: 75

 まず最初の数十分。映像が素晴らしい。このあたりは流石にハリウッドの一流の技術の粋が詰め込まれている。ただ美しいだけでなく、空を飛んだり色彩豊かな森を眺めたりと、映像の演出の仕方がまた良い。登場するメカの場面がちょっとおもちゃっぽいが、それでもかなり映像には期待が出来そうだ。
 だが金のかかった重要な計画のわりに、主人公は現地のことについて何も教育されずに送り込まれる。どんな動物がいて何が危険なのかすらわかっていなくて、現地に行ってからいちいち現れるものについて同行者に聞く始末。その危険な生き物は体が硬くて銃撃しても殺せない。有効な武器も携帯させずにこんな素人を送り込んで、上層部は本当に任務を果たす気があるのか。
 今時の国家の重要任務ならば、事前の教育なんて当たり前でしょう。現地の人と接触を持つ必要があるのに、現地の言葉も理解していない。現在のアメリカ軍だって派遣先の現地の言葉や文化や自然環境などを事前に習うし、これだけ科学技術が進んでいて自動翻訳機くらいないのか。あるいは別の見方をすれば、こんな金のかかった映画で、こんな素人丸出しな脚本を書いていいのか。この最初の時点では、ちょっと物語には期待はずれな予感がした。この映画で最もがっかりした部分である。

 中盤移行、映像の素晴らしさはさらに加速する。技術がいいだけでなく、登場する風景がとにかく絶景である。まるで世界自然遺産衛星パンドラ編の紹介ビデオでも見ているのかというような、とんでもない大自然が休むことなく次々に登場し、その世界を自分が探検しているかのような気分にさせてくれる。そしてそこに住む住民との交流も、主人公同様に自分がその大自然の一部になっていくかのような錯覚を覚える。高揚感溢れるこれらの場面だけでもこの映画は十分に素晴らしい。個人的にこの映画で最も好きな部分である。普段は映画は家でくつろいで見るのが好きなのであるが、この作品だけは大画面で堪能するために映画館まで見に行けばよかったと後悔。
 そのような体験を通して、主人公の心情の変化が非常によくわかってくる。その後の物語はお約束の展開であったが、緊迫感があるし迫力がある。なんとか事態を収めたい、みんなと土地を守りたいという思いがとてもよく伝わる演出であったように思う。戦闘場面も迫力の凄さだけでなく数々の悲惨さも含まれていて、戦闘というものがいかに厳しいものかというのが描かれていて良かったし、飽きさせないものであった。

 この映画は欧州から来た白人に侵略されたネイティブ・アメリカンの悲惨な歴史を踏まえているのはほぼ間違いないだろう。現実の歴史がそうであるように、魅力的な資源がある限りその後も地球人との争いは何度も続くだろうし、一度の戦闘でこの問題が解決したとは思えないし、その他にも物語は少しご都合主義的な部分もある。だがそれ以上に迫力と映像と緊迫感とで楽しませてくれる映画だった。

 動物と有線で繋がったり森の木々がネットワークでつながったりするところ、「攻殻機動隊」を思わせる。美しい森と動物たちの攻撃などは、王蟲が集団でやってきた「風の谷のナウシカ」のよう。物語の本筋はやはり「ダンス・ウィズ・ウルブス」だろう。何か色々な映画の影響を受けているのかなと見ていて思った。

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Cape God