「安直な二項対立」アバター(2009) よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
安直な二項対立
未来を描くSF 映画だが、内容はこれまでの地球の人類史で繰り返されてきた侵略者と原住民の軋轢。
これは20世紀も終わりごろの映画でしばしば扱われたテーマである。新しい世紀に、新しい映像技術を駆使して、どれだけ新しい視点でコロニアリズムの問題を表現しているのかに興味があった。
原住民側の容姿は南北アメリカ大陸の先住民みたいで、自然環境や音楽もアフリカや南アジアを彷彿とさせる。白人から見た「未開」のイメージが実に素直に宇宙の彼方の空間にも再現されている。
映画を構成しているものも、「侵略者と原住民」、「鉱工業と大自然」、「肉体と精神」といった、前世紀に使い古された単純な二項対立である。
この対立軸を移動することによって、傷ついた弱い存在が英雄になる。
これもすでに指摘がなされているように、「ラスト・サムライ」や「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったハリウッド映画に見受けられるヒロイズムを受け継ぐものであり、異なることは物語の舞台が地球から遠く離れた星であるということ。
映画はこのような色褪せたシナリオを用いて、色鮮やかな視覚スペクタクルの洪水を観客に体験させる。
ある者は見たこともない素晴らしい映像と感嘆し、またある者は立体映像の技術によって新しい映画の時代の幕開けを予感した。
コンピューターテクノロジーが切り拓く映画の最前線。カメラと被写体の物理的制約から解放され、俳優の容姿はもはや何の問題にもならない。今や、映画製作者たちは完全な自由を手に入れたのである。
この完全なる自由を得て作った映画の結末が、勝者と敗者の二項対立でしかないことは、果たして映画の豊かな未来を示しているだろうか。