アバター(2009) : インタビュー
「ターミネーター」「タイタニック」の巨匠ジェームズ・キャメロンが、構想14年、製作4年という歳月を費やして完成させた3D超大作「アバター」が、この12月、いよいよベールを脱ぐ。22世紀、地球から遠く離れた未知の惑星パンドラへとやってきた元海兵隊員ジェイクが、ある資源をめぐって勃発する地球人と先住民ナヴィとの戦争に巻き込まれていく姿が壮大なスケールで描かれる本作。eiga.comでは、主人公ジェイク役に扮したサム・ワーシントン(「ターミネーター4」)と、キャメロンを陰で支えるプロデューサーのジョン・ランドーにインタビューを行った。(取材・文:編集部/撮影:斎藤憲)
サム・ワーシントン インタビュー
「ジムの操り人形のような気持ちになったことは一度もなかった」
――全世界が注目するジェームズ・キャメロン監督最新作の主役に決まったときの感想は?
「僕みたいな無名のオーストラリア人を雇うなんて、ジム(ジェームズ・キャメロン監督)は気が狂っているんじゃないかと思ったけど、彼は6カ月間、ずっと僕のことを推してくれて、スタジオを説得してくれたんだ。僕にとっては本当に人生が変わるような出来事だった。だけど、撮影中はジムがしっかりガードしてくれたので、外からの注目はほとんど感じなかった。それに、ジムは常に最高のものを要求するから、僕も14カ月間、毎日自分の持っているすべてを捧げて、彼の期待に応えようと必死だったよ。
今回の『アバター』製作に当たってのジムの目論見は、いま劇場から離れている人々を再び劇場に引き戻すことなんだ。今、映画は家でDVDで見たり、ダウンロードしてコンピュータのモニターで見る人も多いからね。だけど、この『アバター』はイベントで、劇場に行って体験しなければわからないものなんだ。ものすごく巨大な3Dの世界だからね。かつてジムは『タイタニック』で巨大客船の沈没を体験させてくれたけど、今度は宇宙の外に行く。つまるところ、僕はスターじゃないんだ。この映画の主役はあくまでパンドラという惑星で、僕はたまたまそこへの旅に参加することができたラッキーな1人だと思ってるんだよ」
――妥協しない、完全主義者として知られるジェームズ・キャメロン監督と仕事をしてみての感想と彼の素晴らしいところは?
「本当にジムはディテールの王者で、ディテールがあればあるほど、ストーリーが豊かになっていくし、キャラクターの感情的な部分や、テクノロジーの部分も膨らんでいくんだ。そして、彼がもっと素晴らしいところは、協力者として側にいてくれるところかな。今まで仕事をした監督の中で一番の演技指導者だったと思う。僕らは、もちろん彼の指揮下で映画を作ったんだけど、まるで戦友のような感じだった。あるいは、パンドラという惑星を一緒に冒険したような感じで、彼の操り人形のような気持ちになったことは一度もなかったんだ。彼は自分のやり方を押しつけることはなくて、常に同じ目線で、一緒に考えてくれるんだ。もしかしたら、彼も年をとって少し優しくなったのかもね(笑)」
――本作は最新の3D技術を駆使して製作されてますが、モーション・キャプチャーを使っての撮影の苦労は?
「モーション・キャプチャーの撮影は、約9カ月間という長期間だったけど、全然大変ではなくて、むしろ自由で開放的な感じで演技ができた。それは何もないグレーの空間で演技するのが、自分と相手の俳優だけという演技の基本、本質に立ち返ることが出来たからなんだ。なので、まるで5歳児になったようにイマジネーションを膨らませて演技をするイメージで、全く苦にならなかったよ。マジックテープが着いたウェットスーツみたいなものを着ているんだけど、ずっとそのままやっていてもよかったよ」
――そのモーション・キャプチャーでの演技が反映された、劇中の青い生物(=ナヴィ)を見たときの感想は?
「まったく自分そのものだったから驚いたよ。自分の表情や、自分の顔の微妙なニュアンスまでキャプチャーされてたからね。この撮影では、あたかもそこに何かがあるように想像して演技をするんだけど、例えば爆発があったときにどんな風に動くかっていうと、何かを投げられてそれを避けたり、巨大な棒で叩かれて爆風にさらされているリアクションでそれを表現するんだ。だけど、これがけっこう痛いんだよね(笑)。ファンタジーワールドをなるべくリアルに感じさせるっていう感じなんだけど、やっているとけっこう楽しいもんだよ。とにかく、自分の演技のすべてが反映されていたんだ。あのブルーのナヴィってけっこう可愛いんだよ、お尻がキュッとしてて(笑)」
――劇中で、ジェイクは自分の意識を送ってナヴィの身体を操作しますが、自分自身が何かに意識を送り込むことができたら、何に送りたいですか?(何をアバター化させて、何をしたいですか?)
「あははは(笑)。何でもリンクしてしまうだろうね。何でもいいなら、女性のバスルームの鏡だね。女のひとは鏡の前で、化粧をしたり、自由な会話をするだろ(笑)」
――今後も「CLASH OF THE TITANS タイタンの戦い」など出演作が続々とあるようですが意気込みは?
「僕がいまこのポジションにいるのは、ジムが大きなリスクをとって自分を起用してくれたから。それで、今の自分のペースが出来ているからこれをずっとキープしていけたらいいよね。こういう仕事をしているのは別に有名になりたいからではなくて、仕事をして自分のベストを尽くすためだと思っている。今回はジムからのOKをもらうためにベストを尽くしていたわけだけど、大きな視点で見ると、いちばん大事なことは自分を改善、向上し続けること。ジムからは『この映画は君の最後の映画ではないから、これがキャリアの最終目標になってはいけない。これは君のキャリアの始まりなんだ。だけど、これからどうやっていくかは、僕はずっとそばにいてあげられないから、自分で考えなさい』って言われたんだ。自分でいい選択をして向上し続けていければいいと思ってるよ」